ブーツの国の街角で

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#33

番外編 : パスクア(復活祭)の食卓を彩る伝統料理8品

文と写真・田島麻美

 

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  イタリアでクリスマスと同じくらい重要な祝日とされている「パスクア(復活祭)」は、十字架に架けられたキリストが復活したことを祝うお祭り。春分後の最初の満月の後の日曜日がパスクアのため、日にちは毎年変わる。今年のカレンダーでは4月1日がパスクアに当たり、その前の一週間(聖週間)と翌日の「パスクエッタ」は学校も休暇になる。イタリアには「Natale con i tuoi Pasqua con chi vuoi」(クリスマスは家族と、パスクアは好きな人と)という諺があり、パスクアの期間は友達と一緒にテーブルを囲んだり、ピクニックに出かけたりするのが習慣となっている。
どことなく厳粛な雰囲気がするクリスマスと違い、パスクアは軽やかで楽しい雰囲気に満ちている。春の訪れを肌で感じるこの季節、仲良しの友達とわいわい囲む食卓には色とりどりの料理やお菓子が並ぶ。パスクアの伝統料理のキーワードは「パン、卵、仔羊、チョコレート」。素朴な家庭料理がメインなので、レストランではお目にかかれない皿が多い。この時期ならではの季節感あふれるパスクア伝統の料理8品をご紹介しよう。

 

 

 

 

 

1. パスクアのコロンバ(Colomba Pasquale)

 

 

 

  クリスマスのパネットーネ同様、イタリアのパスクアには欠かせない菓子パン。「コロンバ(白鳩)」という名前のとおり鳩の形をした甘いパンは、1930年代にロンバルディア州の菓子メーカーMotta社が開発した。発売以降、瞬く間にイタリア全土に普及し、今ではパスクアのシンボルにもなっている。
 

 

 

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スーパー、食材店、お菓子やさんもバールも、この時期は店内にコロンバが山のように積まれている(上)。甘くてふわふわの菓子パンをメレンゲでコーティングし、アーモンドで飾った伝統的なコロンバ(下)。チョコレート入りやクリーム入りなどバリエーションも豊富にある。
 

 

 

 

 

2. ウォーヴォ・ディ・パスクア(L’Uovo di Pasqua)

 

 

  コロンバと共にイタリアのパスクアに不可欠なイースター・エッグ。卵はキリストの復活のシンボルとされていて、色とりどりの飾りを卵に施す習慣は中世時代からあったそうだが、現代イタリアでパスクアの卵といえば、「卵型チョコレート」。大小さまざまな卵型チョコレートは中にサプライズが入っていて、子どもはもちろん大人も夢中になる。
 

 

 

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 大きさもデザインも様々な卵型チョコレート「ウォーヴォ・ディ・パスクア」。お値段はピン・キリで、スーパーの市販品なら5ユーロぐらいから、職人が作る芸術作品のような卵は100ユーロ以上するものもある(上)。卵を割ると中にサプライズのプレゼントが入っている。子ども向けにはおもちゃが、大人用にはジュエリーや旅行券などが入っているものもあり、プレゼントの品によってお値段も変わってくる(下)
 

 

 

 

 

3. ピッツァ・ディ・パスクア(Pizza di Pasqua)

 

 

    トスカーナ、ウンブリア、ラツィオ、マルケなど、主に中央イタリアでパスクアの朝食に出される「パスクアのピッツァ」。ピッツァと言ってもお馴染みのそれとは違い、ケーキの形をしている。甘いピッツァと塩味ピッツァの二種類があり、塩味のものは小麦粉、ペコリーノ、パルミジャーノ・チーズが入っている。赤ワインと合わせ、サラミやチーズと一緒に食べる伝統があり、翌日のパスクエッタのピクニックの定番メニューでもある。 
 

 

 

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「ピッツァ・ディ・パスクア」は地域ごとに名前もレシピも少しづつ異なるが、ベースとなる材料は小麦粉とペコリーノ、パルミジャーノのチーズ。甘いタイプはマルサラ酒、アニス酒、ラム酒などが入っている。見た目よりもどっしりと重く、サラミやチーズ、赤ワインによく合う。
 

 

 

 

 

4. 仔羊のローストとアーティチョークのフライ(L’abbacchio scottadito e carciofi alla giudia)

 

 

  パスクアの食卓のメインディッシュは仔羊料理。仔羊はキリスト教の起源以来、自己犠牲とイエス・キリストを象徴する動物とされていて、そのシンボルを食べることでキリストと一体となることを示唆しているそうだ。仔羊はローストや煮込みなど地方ごとにレシピがあるが、ローマを中心とするラツィオ州の伝統料理は「アバッキオ・スコッタディート」という網焼き。これにユダヤ風アーティ・チョークのフライやロースト・ポテトを合わせるのが主流。
 

 

 

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柔らかい仔羊の網焼き「アバッキオ・スコッタディート」はローマの伝統料理の代表格(上)。カルチョーフィ(アーティチョーク)は、ユダヤ風ならフライ、ローマ風なら蒸し焼きと調理法が異なる。カリッとした食感と噛むほどに味が出るユダヤ風のフライは旬ならではの一皿(下)
 

 

 

 

 

5. トルタ・パスクアリーナ(Torta Pasqualina)

 

  リグーリア州発祥の「パスクアのパイ」は、北イタリアから中央イタリアまで広く普及しているパスクアの定番料理。ビートやホウレンソウとリコッタチーズ、卵を加えて焼いた塩味の効いたパイは冷めても美味しく、ピクニックのランチとしても人気。ビートやホウレンソウの代わりにカルチョーフィやブロッコリー、ペコリーノチーズ、パンチェッタを入れるなど、好みでアレンジする人も多い。
 

 

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リグーリア地方伝統の「トルタ・パスクアリーナ」は手軽に作れる家庭料理。ビートとペコリーノ、パルミジャーノ、リコッタ・チーズの具に卵を入れて焼く。切り口に見える卵が「パスクアのパイ」と呼ばれるゆえんとなっている。
 

 

 

 

6. カザティエッロ(Casatiello)

 

 

 ナポリの伝統的なパスクアのパンといえば「カザティエッロ」。小麦粉にチーズ、サラミ、卵を加えて焼いた塩気の強いパンで、飾り付けにゆで卵が付いているのが特徴。名前は異なるが、同様にゆで卵を飾ったパンはプーリア州やシチリア島など南イタリア全域にあり、パスクアの時期にだけ作られる。南イタリアでは家庭ごとに伝統のレシピを受け継いでいく習慣も残っている。
 

 

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チーズとサラミの塩味が効いたカザティエッロはナポリのパスクア伝統料理。類似の塩味のパンやパイはシチリア島やプーリア州、カラブリア州など南イタリアの各地にあり、いずれもパスクアの時期だけ食べることができる。
 

 

 

 

 

7. アーモンド・ペーストの仔羊(Agnello di pasta di mandorle)

 

 

  プーリア州の代表的なパスクアのお菓子はアーモンド・ペーストで仔羊を象ったお菓子「アニエッロ・ディ・パスタ・ディ・マンドルレ」。一つ一つ手作りで作られるのでデザインや表情、デコレーションも職人のオリジナリティに溢れている。このアーモンド・ペーストのお菓子はナポリやシチリア島でもパスクアの定番として知られている。
 

 

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粉末アーモンドに砂糖をたっぷり加えて作ったペーストで仔羊を象ったお菓子。強烈な甘さなので、甘党でない人は注意が必要。根気のいる手作業なので、家で作るよりはお店で買う人がほとんどだ。
 

 

 

 

 

8. パスティエラ・ナポレターナ(Pastiera Napoletana)

 

  発祥の地はカンパーニャ州だが、今ではイタリア全土でパスクアのデザートして愛されるようになったタルト。羊のリコッタチーズのクリームに茹でた麦(グラーノコット)やオレンジピールなどを入れたタルトは、しっとりした口あたりとほんのり甘いデリケートな味が特徴。数あるナポリの伝統菓子の中でも特にイタリア各地に普及している人気のお菓子で、パスクアの時期だけでなく一年中食べられるようになった。        
 

 

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*この連載は毎月第2・第4木曜日(月2回)の連載となります。次回は4月10日(木)掲載予定です。お楽しみに! 

 

 

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田島麻美 (たじま・あさみ)

千葉県生まれ。大学卒業後、出版社、広告代理店勤務を経て旅をメインとするフリーランスのライター&編集者として独立。2000年9月、単身渡伊。言葉もわからず知り合いもいないローマでのサバイバル生活が始まる。半年だけのつもりで暮らし始めたローマにそのまま居座ること17年、イタリアの生活・食文化、歴史と人に魅せられ今日に至る。国立ローマ・トレ大学マスターコース宗教社会学のディプロマ取得。旅、暮らし、料理をメインテーマに執筆活動を続ける一方、撮影コーディネイター、通訳・翻訳者としても活躍中。著書に『南イタリアに行こう』『ミラノから行く北イタリアの街』『ローマから行くトスカーナと周辺の街』『イタリア中毒』『イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる』他。

 

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