料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#32

ロンドン2018 「ザ・ファットダック」と「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」

文と写真・山本益博

 

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卓上で3つの旅をするレストラン「ザ・ファットダック」へ

 

 

  

 ロンドンの「ザ・ファットダック」は私の大のお気に入りのレストランです。世界で一番好きなレストランかもしれません。食卓に必要なノスタルジーとファンタジーがあふれたレストランだからです。
 2007年からかれこれ10回は通っていますが、テイスティングメニューは10年経過してもほとんど変わっていません。それでも飽きずに出かけるのは、メニュー名は同じでも料理の内容やプレゼンテーションが出かけるたびにヴァージョンアップしているからです。
「不思議の国のアリス」からヒントを得た「マッドハターズティ(狂った帽子屋さんの紅茶)」などは、今度はどんな進化を見せてくれるのだろうかと、いつもワクワクします。
  昨年からは、テーブルに着くと「宝島」の地図と虫眼鏡を渡されます。その地図には1回の食卓で1日の食事を楽しむコースが描かれています。
前の晩のナイトキャップをいただきながら、明日の朝食のオーダーをドアノブにフックする厚紙に書き込んで、いよいよ料理が始まります。どの料理もウィットに富み、思わず笑みがこぼれますが、味わいも秀逸です。
 今年は、2週間前にメールが届き、「子供の時に一番ときめいた食べ物やお菓子は何ですか?」と書いてありました。
私は「4月の自分の誕生日に食べたイチゴのショートケーキ」と返信したのですが、当日、デザートの段になって、「イチゴのケーキ」が運ばれてきて、胸に響きました。
このように料理人ヘストン・ブルメンタールは、常に子供心を忘れずに料理を生みだします。その料理は、いつもノスタルジックでファンタジーに包まれています。
「ザ・ファットダック」のコンセプトは「ノスタルジー」と「ファンタジー」なのに、料理は未来志向で、12時から食事が始まり夕方4時までかかる「卓上で3つの旅」をするレストランです。

 

 

 

 

 

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朝食用のルームサービス表

 

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マッドハターズティ(狂った帽子屋さんの紅茶)
 

 

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 その一方で、ヘストンはロンドン市内のホテル「マンダリンオリエンタル」にもう一つのレストランを持っています。その名を「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」。16世紀からのイギリスの料理書を紐解き、当時の料理のレシピを現在の食材で調理したら、おいしい料理に仕上がることを証明して見せるレストランです。「ファットダック」が現在から未来へ、とすれば「ディナーバイヘストン」は過去から現在への「温故知新」。
 1軒のレストランをパターン化して全国各地に支店を作るのではなく、発想の違うユニークなレストランを2軒持ってみせる。こういうシェフこそ、真の天才というのですね。
 5月に出かけたヨーロッパは、パリを拠点に、コペンハーゲン、ロンドン、モデナと廻ったため、ロンドンへ午前中に着き、そのまま「ザ・ファットダック」へ、そして翌日の昼に「ディナー・バイ・ヘストンブルメンタール」で食事をしてパリに戻るという強行軍でした。ホテルは「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」のある「マンダリンオリエンタル」の近く「Levin」というクラシックな小さな宿に泊まりました。有名な百貨店「ハロッズ」のすぐ近くで、店内の広大な食料品売り場だけは丁寧に見てまいりました。
 私の娘の絵理がロンドン在住で、王立音楽院でピアノを学んでいるため、今回は短時間でしたが娘のアテンドで快適なロンドン滞在となりました。娘がお土産に用意していたのは、「Whittard」の『MANGO&PASSIONFRUITフレーバーインスタントティ』でした。
 次回は「京都」です。

 

 

 

 

 

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「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」のフォアグラ料理

 

 

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「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」の初夏の苺のデザート

 

 

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娘の絵理はこの7月にロンドンロイヤルアカデミーを卒業しました
 

 

追加

「Whittard」の『MANGO&PASSIONFRUITフレーバーインスタントティ』

 

 

 

 

 

■「The Fat Duck」ザ・ファットダック

 

住所/High Street, Bray, Berkshire, SL6 2AQ
問い合わせ/+44-1628-580-333

 

http://www.thefatduck.co.uk

 

■「ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール」

 

住所/66 Knightsbridge | Mandarin Oriental Hyde Park, London SW1X 7LA, England 
問い合わせ/+44-20-7201-3833


https://www.dinnerbyheston.co.uk

 

*この連載は毎月25日に更新です。

 

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。

 

 

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