究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#32

「北のカオサンロード」パーイを旅する

文と写真・菅原大成/編集・『バックパッカーズ読本』編集部

 タイ・バンコク西部に位置するカオサンロードは旅人の聖地。東南アジアを旅するバックパッカーがまず、最初に目指す場所だ。安宿や旅行代理店、飲み屋が連なり、はじめて訪れた旅人にワクワクを与えてくれる。
 そんなカオサンロードのミニチュアのような場所が、実はタイ北部にもある。タイ第2の都市チェンマイからバスでおよそ3時間。『地球の歩き方』には1ページしか載っていないが、アジアをめぐる旅人には知られた町、パーイだ。

 

 

北タイの古都チェンマイから、深い山中へ 

 出発地点はこちらもバックパッカーに大人気の街チェンマイだ。堀に囲まれ歴史的な寺院が密集する旧市街などにたくさんのゲストハウスがあるが、目指すは市内東部のアーケード・バスターミナル。ここからパーイ行きのロットゥー(ミニバン)が出発するのだ。料金は150バーツ(約540円)。 3時間ほどで着く。6時30分から17時30分までの間、1時間に1本ほどの間隔で出ている。
 そのほかにもミャンマーと国境を接するメーホンソーン県の県都メーホンソーンからロットゥーに乗って行く方法もある。ちなみにチェンマイ空港からセスナを使い片道30分ほどで行く方法もあるが、料金は3000バーツ(約1万1000円)ほど。お金に余裕のある方は挑戦してみてはどうだろう。
 陸路の場合、道中は深い山道だ。道はくねくねと蛇行する上に、ロットゥーはたいてい運転が荒い。心配な人は酔い止めの薬を買っておこう。現地のセブンイレブンで5バーツ(約18円)で売っている。
 個人的にオススメなのは長袖の服と清涼菓子、それに音楽プレーヤーだ。東南アジアの旅ではよくあることだが、ロットゥーも冷房がきつすぎることがある。一枚、羽織るものがあれば道中は快適だ。清涼菓子は酔った際の気分転換に。音楽プレーヤーは周囲の話し声が気になって眠れないとき、耳栓代わりにも使える。

 

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ホワイトブッダの丘からはパーイの街だけでなく北タイの絶景を見渡せる

 

北タイの古都チェンマイから、深い山中へ 

 3時間のドライブで到着したパーイは、町は小さいながらも中心部にはゲストハウスやバーやレストラン、土産物屋などが並び、欧米人バックパッカーが歩く、なるほど北のカオサンだ。とはいえ騒々しい感じではなく、のどかで、空気もさわやかだ。山の緑もよく見える。
 荷物を降ろしたのは中心部から南に10分ほど歩いた『Sunny Hostel Pai』。ドミトリーでなんと80バーツ(約280円)という安さなのだ。チェンマイでは150バーツ(約540円)、バンコクだと200バーツ(約720円)くらいが最安値なので、いかにパーイが安いかがわかるだろう。
 設備はホットシャワー、WiFi完備、トイレ、シャワー共有。枕元にコンセントがない、シャワーとトイレが同じ箇所など不満ポイントはあったが、それをカバーするように、女性オーナーが延長コードを貸してくれたり、チェックアウト後もシャワーを使わせてくれたりと親切に接してくれた。共有スペースもあり、旅人同士での交流もできる。
 こうした宿が市内中心部に固まっている。泊まったところはパーイでも安めで、相場はドミトリー100バーツ(約360円)くらいだろう。郊外には山の自然に包まれたコテージやリゾートホテルも点在している。
 食事は意外だがチェンマイよりも少し高めだ。例えばチェンマイで40バーツ(約140円)のカオマンガイが、パーイでは45バーツ(約160円)といった感じ。食材によってはチェンマイから輸送する必要があるので、やや上乗せされるのだそうだ。とはいえバンコクに比べればだいぶ安く抑えられるだろう。
 カオソーイ(カレーラーメン)やゲーンハンレー(豚ばら肉とハーブのカレー)などタイ北部名物のメニューもよく見かける。またメーホーンソーン県では、もち米とゴマを混ぜて薄く伸ばした生地に練乳をかけてクレープ状にした料理も多い。こちらもぜひ。

 

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やや手狭なベッドまわりだけど、80バーツという価格はタイでも底値

 

巨大洞窟をボートで探検 

 パーイの見どころは郊外に広がっている。そこでバイクを借りて観光するのがバックパッカーには一般的だ。
 排気量や店によって料金は異なるが、24時間100~140バーツ(約360~500円)ほど。これに80バーツ(約290円)ほど加算すると、保険に加入できる。市内は舗装されており運転しやすいが、少し外れに出るとガタガタ道が続き横転の恐れもある。自分自身のケガ、バイクを破損するリスクも考え、加入しておいたほうがいいだろう。
 ちなみにバスターミナルから徒歩2分ほどのツアー会社「Aya service」は、はじめてバイクに乗る人向の練習場所を設けてあり、スタッフがレクチャーしてくれる。
 バイクに乗ってパーイを走るのは最高に気分がいい。まず向かったのはタムロッド洞窟だ。パーイから2時間30分くらい、しかも峠を越えるので、バイク旅の初心者にはかなり集中力も体力も使う。峠では標高がやや高いため長袖の上着は持っていこう。そして日差しが強いのと、砂埃や虫が目に入るのでサングラスは必須アイテムだ。
 峠の頂上のビューポイントからは雲海が見晴らせ、まさしく絶景だ。バイク旅の疲れも吹っ飛ぶ。それに民族衣装を着たリス族の子供たちもいる。
 タムロッド洞窟はタイでもとくに美しい洞窟といわれるが、危険な箇所も多いので、必ずガイドを雇わなければならない。180バーツ(約650円)ほど。また内部は水が満ちており小舟で進んでいくのだが、雨季は水位が上がるので入れない場所も出てくる。
 ガイドが持つランタンの灯りを頼りに、船に揺られて奥に進んでいく。遠く外から入ってくる光と、先行する船が灯すランタンの小粒ほどの光だけが洞窟内を照らし、幻想的な雰囲気を作り出す。複雑な形状の鍾乳洞も印象的だ。まるで地球の胎内に入ったような気分にさせられる。

 

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リス族(?)の子供たちと。パーイは少数民族の里でもある

 

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ボートが木の葉のように見えるほど巨大なタムロッド洞窟

 

温泉に浸かり、地ビールに酔う 

 帰路はサイガム温泉に寄った。パーイの周辺には温泉も点在しているのだ。こちらは国立公園の中にあり、公園入場料、バイク駐車場、温泉入浴料込みで240バーツ(約860円、外国人料金)ほど。日本の温泉というより、温水プールに近い。水着を着て入浴する。ぬるま湯程度で長風呂でき、バイクの運転で疲れた身体には最高のリフレッシュだ。

 そして市内に戻り、夕陽で有名なパイ・キャニオン(アメリカのグランドキャニオンを小さくしたような感じ)で一日を終えた。
 

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タイ式露天風呂は服を着て入る。タイ北部にはたくさんの温泉がある

 

 夜は市内の『Jikko Beer』という店で、欧米人バックパッカーに混じってパーイの地ビールを飲んだ。普通のビールより少し高めで150~180バーツほど。バーはバスターミナル周辺に固まっていて、夜は旅人たちが集まってくる。山の中のカオサンは本家ほど賑やかではなく、雰囲気もいい。
 ほかにも国共内戦から逃れてきた中国・国民党軍の末裔が暮らす村、旧日本軍が第2次大戦時に輸送路として使った鉄道橋などもあるが、有名どころは2日あれば回れるだろう。
 これらを回るツアーもあって、実はこちらのほうが安上がりだったりする。しかしバイクを駆って自由に旅する魅力はなにものにも代えがたい。

 

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バックパッカーたちが集まってくるJikko Beer

 

あの伝説の村がいまも残る 

 ところでパーイにはムーンビレッジという場所がある。市内からバイクで30分ほど走った山間部の村で、ひとりの日本人が住みついている。
 もともと2001年頃から、ヒッピー文化を愛する日本人が仲間たちとともに移住しつくりあげた村なのだという。自給自足の生活を送り、電気はなく、太陽の光で目覚め、太陽が沈むと眠る生活。2000年代前半にアジアを旅した日本人バックパッカーの間では、伝説的な存在でもあったのだ。
 しかしいま、ムーンビレッジに住む日本人はひとりきり。年齢もあって今後はどうなるのかわからないが、いまでもときどきウワサを聞きつけた日本人が訪ねてくるようだ。

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

菅原大成

1991年、北海道出身。タイ北部チェンマイにあるゲストハウス「EZ STAYチェンマイ」にて日本人スタッフとして常駐。タイ人オーナーとともに日々ゲストハウスの在り方を模索中。Jリーグ北海道コンサドーレ札幌のサポーターでもある。

 

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