台湾の人情食堂

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#31

台南食べ歩きは、國華街×保安路に的を絞る!

文・光瀬憲子      

台南は食に対する気合が違う!  

 台北を何度かリピートした人のなかには、次は食の都、台南へ……と思う人も多いだろう。台北の屋台や食堂の安旨メシが気に入ったら、次に足を伸ばすべきは台南だ。多くの台湾小吃(軽食・屋台料理)の発祥地ともいわれており、質の高い、独特な屋台料理がぎゅっと凝縮されている。台湾国内でも、美食を求めて台南へ行く人が多い。

 台南グルメは台北やその他の都市と一線を画している。これは、実際に台南へ降り立ってみるとよくわかる。台南の人たちは地元の小吃を誇りに思っており、自分が食べるものに対するこだわりも強い。美味しいものを食べるためなら、朝5時に列に並ぶことも、朝食に200元使うこともいとわない。豆乳と肉まんの朝食なら50元で済むことを考えると、200元の朝食はぜいたくそのもの。

本当に美味しい店だけが生き残る街  

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民族路三段方向から見た國華街。右手が永楽市場

 

 食へのこだわりが強い台南では、本当に美味しいものだけが生き残る。そんな最強グルメが集中するのが國華街と保安路という2本の通り。台北を基点とした旅行で、半日~1日台南を訪れるなら、まずは國華街を歩き、気に入ったものを少しずつ、ひと通り食べ、さらに時間があれば保安路を歩くことをおすすめする。

 國華街はどちらかというと台南初心者向け。1~2種類の食べ物に特化した屋台が多いので、友達数人で訪れたら1店で1品を注文し、みんなでシェアする。こうして少しずつ味見をしながら何軒もはしごするのが台南グルメの楽しみ方だ。

 一方の保安路は屋台よりも店舗型の店が多く、注文の仕方や席の確保という点で少しだけハードルが高い。でも、台南の飲食店の人々はみんな大らかで外国人慣れしているので、嫌な思いをすることはないだろう。

國華街では「水仙宮市場」と「永樂市場」に注目  

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平日でも賑わう水仙宮市場

 

 國華街を訪れたらチェックすべきは「水仙宮市場」と「永樂市場」。水仙宮という廟の周りにできた市場と、永樂市場がほぼ合体した形になっている。平日の午前中から大変なにぎわいを見せる市場だ。

 

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「水仙宮永樂市場米糕・四神湯」の四神湯25元。店は國華街と民権路二段の交差点の角にある

 

 この市場のすぐそばに「水仙宮永樂市場米糕・四神湯」という店がある。米糕(ミーガオ)というもち米の味付けご飯と四神湯(スーセンタン)という漢方スープの専門店だ。米糕は台北など他の都市でもよく見かけるが、プリンのような型に入っていることが多い。この店の米糕は普通にお椀に盛られて出てくる。肉そぼろとキュウリがトッピングされているので味に奥行きがある。

 米糕と合わせて頼みたいのが四神湯。これはハトムギなど4種の漢方食材が入った豚の小腸のスープ。なかでもハトムギは胃腸を整え美肌効果が期待できる。食べ歩きの途中に取り入れて胃腸をケアするのに最適なのだ。四神湯はちょっと漢方系の風味のあるスープだが、案外、病みつきになる日本人旅行者も多い。

 

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「川記」の上品な芋粿とエビ入りの肉圓はともに40元

 

 もう一軒、國華街で私が特に気に入っている小吃がある。「川記」の芋粿(ユーゴエ)だ。芋粿とは、タロイモを小麦粉や米粉などと混ぜて粘り気を出した餅のような塊を蒸したおやつ。おやつと言っても甘くはなく、タロイモの自然の甘さのみで、砂糖は足さない。台北のような都会ではあまり見られなくなったが、中南部の地方都市ではまだ市場などでよく売られている。芋粿は至って庶民的な家庭のおやつなのだが、川記のそれはとても高貴な見た目をしている。

 父親と娘だけで切り盛りする半屋台風のこの店が扱うのは、芋粿とエビ入りの肉圓(肉やタケノコの餡を片栗粉の皮で包んで蒸したもの)の2品のみ。シンプルだが、80年の歴史をもつ2品にこだわり、黙々と仕込みをする父娘の姿には後光が差している。

 手で均等に整えた芋粿の上には、ひき肉のそぼろ煮が載っている。これを一人分3切れになるよう丁寧にカットして皿に乗せ、薄茶色の透明がかったタレをかける。彼らのものづくりの姿勢といい、きちんとカットされた芋粿といい、そして上品な宮廷料理のような味わいといい、台南の食文化を象徴するような店だと思う。

 

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南廠保安宮の廟に向かって右手に保安路の飲食店街が続く

保安路の店ではイートインの列に並ぶ  

 國華街を体験したら、次は保安路だ。國華街と垂直に交わる保安路はちょっと大人向けのグルメが詰まっている。屋台というよりは食堂タイプの店が多く、入り口はオープンで気軽に入れる。まずは席を確保してからテーブルの上にある注文票の料理名に1、2など数を書き込むか、または店員に直接注文する。

 店頭にはテイクアウトを待つ客も待機しているので、「外帯」(ワイダイ)か「内用」(ネイヨン)かを聞かれたら、内用(=イートイン)と答えよう。

 

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「阿龍香腸熟肉」の黒白切(豚モツのスライス)はビールとともに

 

 保安路の大人料理代表が「阿龍香腸熟肉」だ。黒白切(ヘイバイチエ)と呼ばれる豚モツのスライスを出す店なのだが、さらに腸詰めや手の込んだ揚げ物なども取り揃えていて、これらをスライスしてミックスし、ワンプレートで出してくれる。

 うれしいのは、この店ではお酒が飲めること。黒白切は日本人にしてみれば最高の酒のツマミなのだが、台湾ではお酒を置いていない店が多い。「阿龍」はちゃんとビールが飲めるところも大人向けなのだ。

 

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「阿娟咖飯鴨肉焿」のカレーライス65元。肉や野菜やゴロゴロ入っていてボリュームたっぷり

 

「阿龍」のすぐとなりにはカレーライスと鴨肉メシの専門店「阿娟咖飯鴨肉焿」がある。ここではあえてカレーをおすすめしたい。台湾に行くと、なぜかカレーが食べたくなる。日本の食堂ではなかなか見られなくなった昭和風の懐かしいカレーがまだ生きているからだ。「阿娟」のカレーは大きめの野菜がゴロゴロ入っていて、味は甘め。ひっきりなしに訪れる家族連れやテイクアウトの客から、その人気ぶりがうかがえる。

 保安路でもっとも難易度が高いが、絶品の料理がある。「阿明豬心冬粉」という豚モツ専門店だ。行列の長さから超人気店であることは明らか。夜のピークの時間帯など、平日休日を問わず30分以上は待たされる長蛇の列ができ、整理番号を取って並ぶ。看板メニューは豚ハツの春雨スープ。ハツはまったく臭みがなく、あっさりとしたスープとよく合う。レバーやマメなど、ほかの豚モツも食べやすい。

 台南は新幹線だと台北から1時間半程度なので、日帰りも十分可能だ。台湾旅行の日程に1日だけ台南日帰りデーを設け、少しずつ時間をかけて食べ歩き、台北とは一味違った台南文化に触れてみるのもいいだろう。

 

 

*台南の旅については、双葉文庫『台湾一周! 安旨食堂の旅』第4章『台南 出陣は夜明け前、台湾の「食都」を巡る」や、最新刊『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』4章『台南』でも紹介しています。ぜひそれらもお読みください!

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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