韓国の旅と酒場とグルメ横丁
#30
名古屋での韓国旅行講座をダイジェストで!
2月9日、名古屋の栄中日文化センターで行われた筆者の韓国旅行講座は、中京圏をはじめ関東、関西、九州などから90名様以上にご参加いただき、無事終了。講座ではソウルや釜山の穴場情報や、飲食店で楽しく過ごすための韓国語フレーズなどをお伝えした。
今回は参加できなかった方のためにダイジェストとして、ソウル、釜山他の強力推薦店を披露しよう。
名古屋で行われた韓国旅行講座には、流ちょうに韓国語を話す方や地方旅行経験の豊富な方が集まった
魅力的な店の3条件とは?
1、味(美味しいに越したことはないが、2と3が満たされていれば“普通に美味しい”レベルでも十分)
2、人(主人がやさしい。韓国人でも外国人でも分け隔てなく接してくれる。苦労人で、人の心の痛みがわかる)
3、場の力(主人と客が作り出す空気。店のたたずまいと、その街の歴史背景)
上記は20年間、韓国全土を食べ歩きして得た魅力的な飲食店の3条件だ。
それを満たしている店は数少ないが、その一部を挙げてみた。
【ソウル】
・本連載#26で詳述した鍾路3街の「味カルメギサル専門」(미갈매기살전문)
・乙支路3街の「ウファ食堂」(우화식당)
条件1~3のなかでも2(母性)と3(干し鱈や大根の葉がぶら下がった店頭)が突出した店。土日が休みなので幻の店化しつつある。今回の講座には地方の穴場をくまなく歩きまわる達人が集結したが、この店に行った人はいなかった。
幻の酒場「ウファ食堂」の女将
冬場は軒先に鱈の干物がぶら下がっているウファ食堂
ウファ食堂の看板メニュー、コタリチム(干し鱈と豆モヤシの辛煮)20000ウォン
【釜山】
・NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』で密着取材した「コチャンチッ」(거창집)
筆者の3条件だけでなく、同番組の3条件である
1、地元民ばかりでディープ
2、地元の酒と料理がある
3、愛すべき“へべれけ”と店主
も満たしている店。日本でもヒットした映画『国際市場で逢いましょう』に登場したコップンの店の脇道を進んだところにある。
拙著『釜山の人情食堂』でも取り上げた釜山の「コチャンチッ」。3万ウォンで酒3本+つまみがテーブルいっぱいに
【江原道】
・本連載#27で紹介した江陵の「トゥンイネ」(뚱이네)
・平昌の「故郷チッ」(고향집)
「トゥンイネ」(뚱이네)
「故郷チッ」女将のおすすめは、豆腐の山椒油焼き
木のテーブルとタイル貼りのカウンターは、味のある大衆酒場の必須条件
【その他の地方】
・忠清道と全羅北道の境界に位置する江景(カンギョン)の「ソチャンチッ」(서창집)
かつて日本人が多く住んだ街の日本式三軒長屋にある店。女将の住居兼酒場だ。女将は最近膝を痛め休みがちだが、事前に電話を入れれば開けてくれる。手づくりのフルーティなトンドン酒が自慢。
・全羅北道、群山のホンチッ(홍집)
3条件を満たしているうえに、やかんマッコリ1本(12000ウォン)を頼んだだけで、多彩な魚介のつまみが添えられる良心酒場。ソウルから鉄道やバスを乗り継いで、ようやくたどりつき、ああこれが本当のオアシスだと思える店。
上記は60~80代の女将が一人で切り盛りしている店が多いので、そのうち行こうなどと思っているうちに廃業の可能性もある。今年の春休みか夏休みにぜひたずねてもらいたい。
江原道の2軒は来年2月の冬季五輪開催地なので現実味があるだろう。平昌の故郷チッの女将は90歳近いのだが、先日電話で「あたしゃもっともっとがんばるよ!」と元気な声を聞かせてくれた。頼もしい。実は大阪生まれで日本語も少し話せる。
2条件を満たし、案内された日本の人がみな喜んだ店
講座では、3条件のうちの2条件をクリアしているソウルの店も紹介した。日本からの旅行者を案内した経験上、ほとんどの人に満足してもらえた店だ。
・武橋洞プゴクッチッ
ソウルリピーターにもよく知られた干し鱈スープの有名店だが、地元人気がすごく、ランチタイムは行列必至。
・北朝鮮系の冷麺店
朝鮮戦争で北から避難してきた人が始めた店なので、韓国の飲食店としては歴史の重みを感じさせる。行きやすいのはソウル中心部の「乙支麺屋」「平来屋」(ともに乙支路3街)、「平壌麺屋」(奨忠洞)、「ブウォン麺屋」(南大門市場)など。冷麺店ではまず茹で肉をつまみに一杯やって、最後は麺で〆る「先酒後麺」スタイルが通。
「乙支麺屋」のムルネンミョン。スープは淡白で全部飲み干せる。店は乙支路3街駅5番出口のすぐ近く
精肉店がやっている焼肉屋さん、東大門のとなりで発見
安くて旨い精肉店系の焼肉店は、本連載#13で詳解している。精肉店系の店は郊外に多く、観光客には利用しにくかったが、最近、1号線東大門駅のひとつとなりの東廟アッ駅近くに人気店を見つけたのでお伝えしよう。韓国産牛肉の盛り合わせが600グラムで45000ウォンはお得感がある。
・「土種韓牛マウル精肉店食堂」(トチョンハヌマウル・チョンユクジョム・シクタン)。鍾路区崇仁洞207-4
今回の講座では、最近の韓国で見られる一人メシや一人酒現象を実例とともに伝えたり、韓国の飲食業を支えてきた全羅道出身者と朝鮮戦争避難民のエピソードも話したりした。それらについては、また次の機会で取り上げたい。
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定価:本体1200円+税
*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!
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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/ |
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