韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#29

ビビンパの世界、極彩色から素朴系まで

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カラフルな贅沢ビビンパ

 日本の人たちはビビンパ(ピビムパッ)と聞くと、本場全州(チョンジュ)やソウルの有名店で見られる、器の中に花が咲いたようなカラフルなものを思い出すかもしれない。

 

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全州の人気店「家族会館」のビビンパ

 

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「家族会館」ではビビンパだけでも野菜がたっぷり摂れるのに、つきだしも豪華

 

 しかし、あれは観光客向けのちょっと贅沢な料理なので、全州でも地元の人が積極的に食べているとはいえない。20種もの材料をひとつひとつ調理して美しく盛り付けるので、けっして安くないからだ。

 

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ビビンパづくりにどれだけ手間がかかるかは全州韓屋マウルの各所で行われている調理実習で実感できる。写真は先生が作ったもの

 

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全州の全羅北道庁の近くにある「古宮談1973」のビビンパは、あらかじめごはんとおかずが混ぜられている

 

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スタイリッシュな店内でビビンパを提供している「古宮談1973」

全州市完山区孝子洞1627-1 11:30~20:00 月曜休

 

 

豆モヤシをのせただけのものも旨い

 ピビムパッのピビムは「混ぜる」、パッは「ごはん」のことなので、言葉の意味としては「混ぜごはん」だが、全州式だけではなく、韓国にはさまざまなビビンパがある。

 たとえば、家でおなかが空いたが、ちゃんと調理する時間も食材もないとき、私は韓国家庭の冷蔵庫の中にたいていあるナムルやキムチなどのミッパンチャン(常備菜)をごはんにのせ、コチュジャンやチャムギルム(ゴマ油)をかけて、かき混ぜて食べている。これも立派なビビンパだ。

 

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慶尚北道、蔚珍(ウルジン)の市場で見かけた豪快ポリパッ。ポリは「麦」を指すので、ポリパッは麦ごはんのこと

 

 上の写真を見てほしい。

 これは地方の市場で働く70代女性が食べていたビビンパだ。行きつけの食堂でありあわせのおかずをごはんにのせ、テンジャン(味噌)をたっぷりかけている。

 韓国女性は日本男性並みに食べるという俗説を裏付けるボリュームだが、豆モヤシや切干しダイコン、葉トウガラシ、ネギなどが山盛りで、ごはんには麦も混ざっているので、見た目よりずっとヘルシーだ。

 ソウルなら仁寺洞あたりの飲み屋の〆の食事としてたまに見かける、コンナムルパッもビビンパのひとつだ。ごはんに豆モヤシ(コンナムル)とゴマ油と塩をふりかけただけのものだが、酒好きな人にはおおむね好評。

 一方、観光客向けのビビンパはごはんにのっているおかずの種類が多いうえに、味のはっきりしたコチュジャンを加えてかき混ぜるため、何を食べているかわからなくなってしまうという人が少なくない。そのため、シンプルなコンナムルパッのほうが好みという日本人もけっこういる。

 

 

麦ごはんのビビンパにも要注目

 カジュアルなビビンパを味わえるところとしては、ソウルの広蔵市場(クァンジャンシジャン)の屋台や、全羅北道・馬耳山(マイサン)のふもと、全羅南道・光州(クァンジュ)郊外の無等パークホテル周辺などが挙げられる。

 広蔵市場や光州ではポリパッと呼ばれる麦ごはんのビビンパが、馬耳山のふもとでは定食のメインとして山菜ビビンパが食べられる。

 

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広蔵市場のポリパッ。麦ごはんは粘りが少ないのでかき混ぜやすい

 

 広蔵市場のポリパッは屋台の女将さんが麦ごはんの上におかずのせてくれるタイプで5000ウォン程度。

 光州はホテル周辺がポリパッ専門店街になっている。麦ごはんとおかずが別々に出てくるので、自分の好きなものをのせ、コチュジャンの量も加減できる。価格は7000ウォン程度。

 馬耳山ではパワースポットとして有名な塔寺(タプサ)までの散歩コースに山菜専門店があり、8000ウォン程度で山菜ビビンパが食べられる。

 

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馬耳山のふもとにある食堂「ポッコッマウル」の山菜ビビンパ。の左手前の器に麦ごはんを入れる

 

 もちろん、コチュジャンを加えて混ぜるのが好きではない人は、おかずと麦ごはんを別々に食べてもいい。ただし、案内してくれる人が韓国人だったら、「混ぜて食べなきゃダメ!」と言われるはず。そんなときは半分だけ混ぜて、残り半分はあっさり味で食べるとよいだろう。

 

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ごはん半分とコチュジャンを少な目に加えて混ぜた山菜ビビンパ。「ポッコッマウル」で

全羅北道鎮安郡馬耳山南路209 平日08:00~21:00 土日08:00~22:00 無休

 

 ビビンパはとにかく野菜がたっぷり摂れるので、便秘気味の人はおなかの調子がよくなり、肌つやもなくなる。

 豆モヤシのコンナムルパッや麦ごはんのポリパッだけでなく、韓国にはさまざまな混ぜご飯があるので、各地でいろいろ試してみてもらいたい。

 

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全羅北道・益山(イクサン)市の黄登(ファンドゥン)ビビンパ。やわらかい韓牛ユッケを使うのが特徴で、黄登面の「真味食堂」で食べられる

 

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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