究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#29

アジアで大流行しているデング熱とは

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 世界中で年間1億人が感染するといわれるデング熱。近年はアジアで感染数が爆発的に増えている。とくに発生が集中するのは、いまだ。アジア諸国は雨季真っ盛り、感染症が流行しやすくなっている。バックパッカーはデング熱を避けるために、どんな対策を取ればいいのだろうか。
 

 

フィリピンではデング熱がパンデミック状態に 

 アジア各地でデング熱が猛威を振るっている。蚊が媒介する感染症だ。全世界的に広がっている病気だが、とくにアジアでは雨季に大流行し、8月前後にピークを迎える。いまが最も気をつけなくてはならないシーズンなのだ。
 バックパッカーに人気のタイでは今年に入ってからおよそ6万人が感染し、67人が死亡。この数字は過去5年間で最も多いものだという。
 またミャンマーではやはり今年だけで1万人の患者を出し、48人が死亡。バングラデシュでも1万3000人が感染、8人が亡くなっている。ベトナムやマレーシアでも感染は拡大している。
 最も深刻なのがフィリピンだ。今年に入り7月末までの間に約17万人が感染。これは前年同月比の倍に上る。うち720人が死亡し、政府は全国的な流行宣言を出した。蚊の繁殖地の駆除など対策を強めている。
 フィリピンは治安の改善から訪れる日本人バックパッカーが増えている。また近年はリーズナブルで手軽な英語留学先として評判になってきた。日本人を受け入れている語学学校がとくに集中しているのは中部のリゾート地セブ島だが、ここも感染者が多い地域のひとつ。現地では感染する日本人も出てきている可能性が高い。

 

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デング熱が大流行しているフィリピン。在フィリピン日本大使館も注意勧告を出している

 

特効薬はなく、ひたすらに耐えるしかない 

 デング熱はネッタイシマカやヒトスジシマカがウイルスを媒介する。ウイルスを持った蚊に刺されることで感染する。3日から1週間ほどの潜伏期間のあとに、およそ3割の確率で発病するといわれる。
 症状は40度にもなる高熱と激しい頭痛が特徴的。関節痛や筋肉痛なども現れる。
 特効薬はなく、症状が治まるまで安静にしているほかない。アスピリンやロキソニンなど一部の解熱鎮痛剤はむしろ病状が悪化することもあるので控えるべきだといわれる。比較的効果があるのはアセトアミノフェンで、これはアジア各地で「パラセタモール」の名前でも知られている。小さな村の薬局でもたいてい置いてあるし、コンビニで売られていることもあり、安い。風邪にも効くので現地で買って旅の常備薬としておくといいかもしれない。
 デング熱は1週間ほど体内で暴れた後に、自然に治癒する。赤い発疹がその合図で、熱が下がり痛みも引いていく。通常は、命を落とすような病気ではない。ただし、旅の時間は大きく削られてしまうだろう。
 まれに重症化すると、デング出血熱へと進行する。2度目以降の感染でこの可能性が出てくる。血小板が減少、粘膜や血管から血液が漏れ出し、10~20%の確率で死亡するといわれる。
 なおデング熱もデング出血熱も、人から人への直接感染はしない。

 

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やはりアジアの都市部でも、衛生的に問題のある場所での発生が多い

 

 

シンプルだが効果のある対策とは 

 対策としては、「蚊に刺されないようにする」ことしかない。効果的なワクチンはいまのところ存在しないのである。
 例えばタイ在住の日本人はこんなデング熱対策を取っている。

・暑くても長袖、長ズボン、靴を着用。
 皮膚が出ている範囲を減らす。これは日焼け対策でもある。それに歩道もガタガタなことがありサンダルだと足元を怪我する可能性もあるので、とくに移動時は靴のほうがいい。
・虫除け、蚊取り線香を使う。
 現地でもドラッグストアやコンビニで多種多様な虫除けが手に入る。香りの強いハーブを使ったものもあって、おみやげにもいいかもしれない。また蚊取り線香は日本製の評判が高い。
・明るい色の服を着る。
 蚊は黒など濃度の高い色を好むらしい。そこで白など明るい色の服を着ると刺されにくいといわれる。

 

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アジアの都市ではスコールのあとによく見る光景だが、これがデング熱の温床

 

 

宿の選び方には注意をしたい 

 蚊が媒介する感染症というと、マラリアを思い浮かべるかもしれない。デング熱よりもさらに症状が激しく、死亡率も高い危険な病気だ。ただ、マラリアを媒介するハマダラカは、沼や水田、湿地、川などに生息する。都市部を旅しているぶんには、それほど心配する必要はないのだ。山間部でのトレッキングや、エレファントライド、カヤッキングなど自然と触れ合うアクティビティに挑戦するときはしっかり対策をしておいたほうがいいが、街にいるならマラリアの危険は少ない。
 しかし、デング熱を媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカは、都市部でも広く繁殖している。むしろ都市を中心に生息域を拡大させているといえるのだ。
 都市には、蚊の好むさまざまな水場がある。下水や、雨のあとの水たまり、エアコンの排水、空き缶やペットボトルにたまった水、植え込み、街路樹……わずかな水源でも蚊は繁殖し、デング熱を広めていく。デング熱が世界的に流行しているのは、途上国でもどんどん都市化が進んでいるからだともいわれている。
 だから前述の対策に加えてバックパッカーがアジアの都市部に滞在するときに打てる手としては、

・宿のロビーやベランダをチェックする。空き缶など水のたまりそうなゴミがあるところ、不衛生そうな宿は避ける(こうした情報は予約サイトをチェックするだけでは難しい。現地で実際に見てから決めるしかないかもしれない)。
・川や運河、用水路、公園のそばの宿も避ける。
・スコールの後の水たまりには近づかない。
・蚊帳(モスキート・ネット)を常備している宿もあるので借りる。

 といったところだろうか。取れる対策は多くはないが、いくらか気を使うだけでも感染率は大きく下がるものだ。
 旅行中は元気に過ごしていても、潜伏期間は1週間ほどあるのだ。もし帰国後に発熱や関節の痛みが出たら、すぐに病院へ行き、海外から帰ったばかりだということを告げよう。
 バックパッカーにとっては身近なリスクであるデング熱。蚊には十分に気をつけて旅したい。

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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