ステファン・ダントンの茶国漫遊記

ステファン・ダントンの茶国漫遊記

#28

私の想いと言葉は伝わるか 2

ステファン・ダントン

 

 

 

 「おひらきにする」っていうステファン語。それは「オープンにする」っていうこと。
 私の店「おちゃらか」が今年で「おひらき」してから13年。「日本茶の世界を広げるための新しい日本茶の入り口を」という想いでフレーバー茶をつくり、オーソドックスな日本全国のお茶を紹介してきた。
 

 

 

 

「日本茶ブームをひらく」

 


 

「日本茶にフレーバーをつける」という手法も、「ワイングラスで日本茶を」というスタイルも、「日本各地のお茶のセレクトショップ」という店づくりも、私が開拓してきたという自負がある。新たな着眼点と手法をもって日本茶を本当の意味で広めるための土台づくりをしてきたつもりだ。だから、すべてのアイディアを抱え込まずに、みんなにオープンにしてきたんだ。
 2005年当時は、それまでのお茶業界の考え方からすると革命的すぎて眉をひそめられることもあったことが、今では当たり前に受け入れられている私のアイディア。今はちょっとした「日本茶ブーム」のようで「新しいスタイル」の店がどんどん出てきている。うれしいことだ。みんなついてくればいい。そして私を追い越していけばいい。
 でも、「本当の意味で日本茶を日本中あるいは世界中の食卓へ」という遠く広い目標を共有できるのかは疑問に思っている。うまい言い方ではないけど、「商売の種としていけそうな日本茶」という視点でいては、一時のブームで消費されて終わってしまう。

 

 

 

 

 

insoumis≒やんちゃ

 

   

 大好きな言葉がある。
insoumis
  フランス語だ。日本語にするなら賊軍とか革命軍とかそんな意味だ。既存の権力の不正義に命を賭しても反旗をひるがえすイメージ。負ける可能性が高くても、立ち向かうその感じが好きだ。私そのもののような言葉だ。
 この前、「好きな日本語は?」と聞かれたときにinsoumisの訳語を調べた。グーグル翻訳で検索したら「やんちゃ」と出てきた。正確な訳語ではないけど、私が大好きな矢沢栄吉とか長渕剛とかにつながるような反体制の匂いのする言葉。「やんちゃ」という言葉も私にぴったりだ。
 ときに乱暴に見えるやり方でも、芯が通った主張があれば共感が得られるはず。そんな気持ちで日本茶に向き合ってきた。
 

 

 

 

 

求められることと与えたいこと

 

 

私のフレーバー茶が広まるにつれて、全国各地から地方活性のアイテムとしてオリジナルフレーバー茶の開発依頼が増えてきた。
 地元の茶葉にフレーバーをつけて目新しい商品をつくる。依頼者のアイディアはたいていそこまでだ。オーダーどおりの商品を開発するのは難しくない。開発費用を受け取って、商品を納品すれば仕事としては成立する。
 でも、せっかく開発した商品が売れなければ意味がない。売れるための商品をつくるためには、その土地の特徴(風土や名産品)、茶葉の性質についての知識を総動員し、生産者の特性を観察しながら話し合って「その土地だけの」フレーバー茶をつくる。
 「フレーバー茶というちょっと目新しい表層の部分だけを利用しても、うすっぺらい開発意図はお客さまに伝わってしまうんだよ。本当に“ここだけ”のお茶をつくろう! そのためには……」
 もしかしたら、「予算どおりの新商品さえつくれればいい」と考えていた依頼者に、「本当に売れる商品をつくるため」のアイディアをどんどん出していく。ときには、パッケージデザインや販売方法のアドバイスもする。販路の開拓まで口を出す。

 求められた以上の仕事をしてしまっているのかもしれない。ビジネスの点では失敗かもしれない。でも、どうしても、お客さまの手に届く商品をつくりたい一心で考え得る限りのアイディアを「おひらき」してしまうのが、私のやり方だから仕方ない。
 

 

 

商売と教育


 

   私のこんなやり方を「先生みたい」といった人がいる。
   そのとおりだと思う。
 私はあくまでも茶商だ。お茶を売ることを商売にしている。利益を考えて仕事をしなきゃならないのは百も承知だ。いただく報酬額によってその仕事に割く労力を加減しないといけないのはわかっている。
 でも、私は1を聞かれたら1を答えるのでは満足できない。1を提示されたら、その先の10の可能性について提示したい。
「私は、私と関わったすべての人に、私の持っているアイディアを隠さず与えて相手が向上することが喜びなんだ。私を超えてくれたらもっとうれしい」
というと
「そのアイディアをお金にかえるのが商売なんだよ。ステファンのやり方は先生のやり方だよ」
という人もいる。
 
 私は花屋の息子のくせに、どうやら商売が苦手らしい。そもそもお金のことが、お金の意味がよくわかっていないのかもしれない。
 13年間商売をしてきたはずなのに、成功の兆しが見えないのはそのせいかもしれない。日本茶の魅力を伝えることには成功しつつあるんだけど。 
 
 でも、私はinsumisだから、自分の信念に従って日本茶を世界に広めるし、日本茶を通じて世界を広げる。

 最近は、とある温泉街のオリジナル茶を地元の人と一緒に開発している。今回のお茶づくりのストーリーはすごくおもしろいから、次の機会にお話しします。
 

 

 

商人なのか先生なのか

 

先生なのか商人なのか2

「おちゃらか」でお客さんにフレーバー茶の説明をしたり、講演会で日本茶について語ったり、自身の知識やアイデアは惜しげもなくさらけ出す。
 

 

 

 

 

 

*この連載は毎月第1・第3月曜日(月2回)の更新連載となります。次回の更新は7月2日となります。お楽しみに! 

 

 

写真/ステファン・ダントン    編集協力/田村広子、スタジオポルト

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ステファン・ダントン

1964年フランス・リヨン生まれ。リセ・テクニック・ホテリア・グルノーブル卒業。ソムリエ。1992年来日。日本茶に魅せられ、全国各地の茶産地を巡る。2005年日本茶専門店「おちゃらか」開業。目・鼻・口で愉しめるフレーバー茶を提案し、日本茶を世界のソフトドリンクにすべく奮闘中。2014年日本橋コレド室町店オープン。2015年シンガポールに「ocharaka international」設立。著書に『フレーバー茶で暮らしを変える』(文化出版局)。「おちゃらか」http://www.ocharaka.co.jp/

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