韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#28

たまには休肝、あつあつキムチチゲの話

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家庭でも食堂でも愛されるキムチチゲ

 本稿ではいつも酒のことばかり話題にしているので、今回は韓国を代表する食材、キムチを使ったキムチチゲについて書くことにする。

 

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家庭で漬けられ、タッパに詰められた白菜キムチ

 

「韓国人の好きな食べもの」のようなアンケートをとったら、常に1位、悪くてもベスト3に入るのがキムチチゲ。

 国民食といえるキムチは家でお母さんが漬けたものであれ、スーパーで買ってきたものであれ、どこの家の冷蔵庫にもあるので、私たちはそのまま食べたり、ラーメンに加えたり、煮込んだり、さまざまな方法で楽しんでいる。日本のお新香はいまや常に日本人とともにあるとは言えないと聞いたが、韓国人にとってキムチは今も空気のように欠かせない存在だ。

 

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仁寺洞の「ミュージアムキムチ間(カン)」(旧キムチ博物館)では、キムチづくり体験ができる→kimchikan.com

 

 新陳代謝を高め、脂肪の蓄積を防いでくれるキムチは、老若男女に愛されている健康食だ。なかでもキムチを汁ごと煮るキムチチゲは、ありあわせの材料でさまざまなバリエーションが楽しめる。家でも簡単にできるし、大衆食堂の代表的なメニューでもある。キムチチゲの専門店も存在する。

 

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拙著『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』で紹介した仁川のキムチチゲ定食専門店「ミョンウォルチプ」。店の中央にある鍋から好きなだけよそうシステム

 

 

ものぐさキムチチゲのつくり方

 もちろん日本の家庭でも簡単につくることができる。必要なのは発酵が進んだキムチ。日本の人の口にはかなり酸っぱく感じられるくらい発酵したものがいい。浅漬けのキムチを使ってもいいが、それは本格派とはいえない。韓国のキムチを食べ慣れると、酸味や辛味の中に独特の旨味や清涼感を感じられるようになり、そのうち辛酸っぱくないと満足できないようになるだろう。

 仁川や金浦などの空港で売っている韓国産のキムチなら、賞味期限を2~3週間過ぎたものこそキムチチゲ向き。まぁ、韓国人と日本人の嗜好の違いもあるので、いろいろ試してみて好みの時期を見つけるといいだろう。

 キムチは辛味や酸味、甘味などをあわせもった発酵食品で、栄養価も高いので、それ自体が完成された食べものだが、他の食材とも融和しやすい。日本の家庭なら、豆腐、ハム、ツナ缶、ベーコン、ポークランチョンミート(SPAMなど)のうちのどれかは買い置きがあるだろう。あとはネギか豆モヤシがあれば上等だが、キムチの白菜だけでもじゅうぶんだ。

 

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手づくりの豆腐をたっぷり入れたトゥブキムチチゲ。江原道、原州(ウォンジュ)の山奥の食堂で

 

 材料を鍋に入れ、好みの量の水を加え、ひと煮立ちしたら、塩コショウで味付けをと言いたいところだが、ハムやベーコンにも塩分は含まれているし、健康と美容のためには塩は加えず、キムチの塩分だけで食べることに慣れたほうがいい。塩分が体内にとどまると顔のむくみの原因にもなるからだ。

 もうひと味ほしければ、ビーフブイヨンなどを少しだけ加えてもいいだろう。魚介系ならイリコダシもいい。裏ワザというほどではないが、手っ取り早く味をまとめたいというものぐさな人は、辛ラーメンなど韓国のインスタントラーメンの粉末スープを加えてもいいだろう。

 

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筆者の仕事場があるソウルのアパートの地下にある大衆食堂から出前したキムチチゲ。塩分は多め

 

 

キムチチゲの隠し味に

 筆者は日本の友人からもらった沖縄みやげ、瓶詰のスクガラス(2センチほどの小魚の塩辛)を隠し味にするのが好きだ。沖縄では小さく角切りにした豆腐にのせて食べるもので、東京は高円寺の沖縄料理店で初めていただいたとき、日本にもこんなすばらしい発酵食品があるのだなと感動した。これをキムチチゲといっしょに煮ると、いいダシになる。仕上げには好みでゴマ油をひとたらししてもいい。

 辛いものが好きな人は唐辛子粉をたっぷり加えよう。日本の一味唐辛子でもいいが、辛さの中に甘味がある韓国産唐辛子も試してほしい。ソウルや釜山のEマートやロッテマートで安く買うことができる。辛さと酸っぱさと甘さが調和したキムチチゲの汁の旨味がわかるようになれば、辛いものを食べると「すっきりする」(시원하다=シウォナダ)」という韓国人の味覚に近づけるだろう。

 

 キムチチゲは前述したように、どんな食材をプラスしても味がまとまりやすい簡便な食べものだ。私の知り合いの日本人には、バターをひとかけ入れたり、できあがりにスライスチーズをのせたり、卵や納豆、お麩などをいっしょに煮たり、刺身で食べた甘えびの殻をダシとして入れたりする人もいる。みなさんも自分だけのキムチチゲを開発してみてほしい。

 キムチチゲは焼肉店で肉を食べた後の〆にもよく登場する。これがいい口直しになるのだが、辛くて酸っぱいキムチチゲとソジュ(韓国焼酎)はとても相性がよいので、さらに深酒してしまうことも少なくない。また、キムチに合う酒といえば、マッコリは外せない。美味しいキムチさえあれば、それだけでマッコリが3本も4本も……。いや失礼、酒の話はまたの機会に。

 

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慶尚南道、蔚山(ウルサン)の焼肉店で〆に出てきたキムチチゲ

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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