京都で町家旅館はじめました

京都で町家旅館はじめました

#26

生まれてはじめて地鎮祭

文・山田静

 いよいよわが『楽遊』の増築工事がはじまった!

 

 詳しくは拙著『京都で町家旅館はじめました』(10月18日発売)をお読みいただけると幸いなのだが(宣伝)、楽遊はお隣の土地をお預かりし、このたび増築することになったのである。増築といっても数部屋増やすくらいで、規模としてはそんなに大きくならないのだが、お隣の土地は現在の楽遊より面積が広い=場所が余る=そのぶん庭やらなんやらをつくる、ことになっている。

 詳細はじょじょにご紹介していければと思うが、とにもかくにも、もろもろの手続きが終わって10月頭に工事がスタートすることになった。

 

「じゃあ、1日からはじめますね。まずは土地の調査なので、そんなに大きな工事はしないですが」

 はい、お願いします。

「で、地鎮祭はどうします?」

 

 出た。

 またやったことがないやつだ。

「そういえば楽遊を最初に建てたときもやったような」

 オーナーと工務店の社長の記憶によれば、前回は御神職にお願いしたらしいが、

「あれは自分たちでもできますよ、城南宮に行って、必要なものをいただいてくればいいんです」

 え、そうなんだ。

 恥ずかしながら城南宮がそういうところだとも知らなかったが、地鎮祭セットなんて売ってるのか。いや、そういう言い方はいかんか。

 

「あ、じゃあ僕、バスに乗って行ってきますよ」

「そうですね。今日やっちゃうといいですよ。じゃあ」

  工務店の社長は軽やかに立ち去り、オーナーはバスの時刻を調べて城南宮に出かけ、数時間後に地鎮祭セットを手に戻ってきた。

 

「えーとね、塩、お米、お酒がいります。清めのお砂はいただいてきました」

 土地を清めるためにいくつかアイテムが必要なんだそう。あと、四隅と真ん中を回って清めるので、人手も必要だ。いま館内にいるのは、オーナー、私、サブマネージャー、あとバイト男子1名。ちょうどいい。

 お米は朝食用のがある。お酒は、正月にゲストのお土産にした小瓶が残っている。塩は、クッキングソルトがある。

 ばっちりじゃないか楽遊。

「あ、これ注ぎ口がついてるし、便利でいいや」

 クッキングソルトの大箱をそのまま持ち出そうとしたら、

「さすがにそれは神様に失礼なんでは」

 とバイト男子に止められて、小皿に入れて持ち出した。マネージャー、何かと雑すぎる。

「僕が先頭で砂をまいて、順番にまわりましょうね」

 オーナーを先頭に4人で列をつくってまわっていく。

「これ、どれくらい撒くんですか」

「撒く、って言うんじゃないんじゃないかな」

「残ったぶんはどうすれば……?」

 なにしろ全員未経験、あいまいな気持ちのまま土地を清めていく。と、途中で、

 ガラガラガラー。

 スーツケースのキャスターの音がして、楽遊の暖簾をくぐる外国人が見えた。

「あっ、チェックインの人だ」

「とりあえずひとりだけ対応に行って!」

   お清めの動作を半端にやめるわけにもいかないし、とりあえず1人が応対に走り、残ったメンバーで急ぎ足で敷地を回る。最後までやりきったあと、館内に走り、ゲストに待たせたお詫びを言う。

「すいません、今日、土地のためのセレモニーがありましてごめんなさい……いま終わりました」

「?」

 イギリス人のカップルは、けげんな顔をしている。

 そりゃそうだ。

 そりゃそうだが、下手に英語で説明するとなんだか怪しくないだろうか。そもそも地鎮祭を英語でどうやって説明するのか。

「ではチェックインの手続きをさせていただきますね」

 強引に話を切り替えて、この件落着である。

 

  むむむ、まだまだ全然、知らないことやどうしていいかわからないことばっかりだ。これ、3年前と同じく、大変な日々が待っていそうだ。

 そしていま、私が設計図を前に緊張感を持って眺めている文字がある。

「書院」だ。

 設計図上の、ある部屋の隅っこに「書院」と書いてある。

「書院ごしに庭を眺めたらいいかな、なんて思って」

 設計士さんはいつもの通りさらりと言うが、こちとら「床の間」に何を置けばいいのか、そもそも床の間ってなんなのかと悩みまくって知恵熱を出した経験がある素人である。その素人ぶりをなめてもらっちゃ困る。

 この書院とやらに何を置くのかどうするのか、そもそも書院てなんなのか。またうーんうーんと考え込む日が続きそうである。

 

 

*城南宮

 ホームページより>城南宮は、引越・工事・家相の心配を除く「方除(ほうよけ)の大社」と仰がれています。家庭円満や厄除や安全祈願、また車のお祓いに全国からお見えです。また古くより、住まいを清める御砂や方角の災いを除く方除御札を城南宮で授かる習慣があります。

 

 

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 本連載#01~#25を収録した単行本『京都で町家旅館はじめました』が、双葉社より2019年10月18日に刊行されます。京都暮らしや町家旅館のエピソードがいっぱいつまったエッセイ&ガイド。ぜひお近くの書店&インターネット書店でお買い求めください!!

 

『京都で町家旅館はじめました』

著:山田静 定価:本体1400円+税

 

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*町家旅館「京町家 楽遊 堀川五条」ホームページ→http://luckyou-kyoto.com/

*宿の最新情報はこちら→https://www.facebook.com/luck.you.kyoto/

 

 

*本連載は不定期配信です。次回もお楽しみに!

 

 

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山田 静(やまだ しずか)

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』など企画・編著書多数。京都の町家旅館『京町家 楽遊 堀川五条』および『京町家 楽遊 仏光寺東町』の運営を担当しつつ、半年に一度1ヵ月の休暇をとって世界じゅうを旅している。

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