韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#25

早くて安くて旨い韓国版かけそば

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 私が東京に語学留学していた1990年代後半、知人の日本人男性が「これぞ、日本のサラリーマンの(おやじの)食べもの」と教えてくれたのが、立ち食いそばだった。

 その日本人男性がお店で注文したのが、かけそばだ。小さめの丼に入ったどす黒いスープと灰色のそば。具はネギだけが申しわけ程度にのっていて、正直「しみったれている」と思ってしまった。韓国ではどんな料理を頼んでも、キムチやナムルが1~2皿は添えられるからだ。

 しかし、おしゃれなどにまったく関心のなさそうなサラリーマンが、するずるとそばをすすり、空いたどんぶりをサッと返して店を出て行く姿は頼もしく、どこかかっこよくも見えたのも事実。「日本人は本当に働き者だなあ」と、つくづく思ったものだ。

 韓国では少々忙しいときでも、昼ご飯を抜いたり、簡単に済ませようとしたりはしない。それは健康的ともいえるが、悠長ともいえる。韓国人といっしょに仕事をする日本人がイライラするのはこんなときだ。私も取材コーディネートの仕事でそんな場面に居合わせて気をもんだことが何度もある。

 

 

日本のかけそば、韓国のチャンチククス

 では、食べることをおろそかにしない韓国には、かけそばのような簡便な食べものはないのだろうか? それがあるのだ。同じ麺類のチャンチククス(スープの入った温麺)である。

 

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ソウルの市場の屋台で出てきたシンプルなチャンチククス4000ウォン

 

 チャンチは宴会、ククスは麺という意味で、もともとは結婚式などの祝いごとで食べるものなのだが、今では軽食店やバスターミナルの前などにある屋台の定番メニュー。麺は日本のそうめんやにゅうめんに近いもの。スープはイワシや牛肉などでダシをとった関西風のあっさり味。麺がのびやすいので、スープの温度は日本のそばと比べるとぬるめだ。

 具は刻みネギやニンジン、海苔が基本。日本のかけそばよりカラフルだ。たいていハクサイかダイコンのキムチとタクワンが添えられる。ボリュームは日本のかけそばの大盛りくらいはあるので、日本の人にはじゅうぶんな量だろう。

 

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仁寺洞の東側にある楽園商街地下市場のチャンチククス2000ウォン

 

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楽園商街の地下市場は仁寺洞のフレーザースーツ(ホテル)側やタブコル公園側に入口がある

 

 

韓国版ドラマ『深夜食堂』にも登場

 最近日本でも放送された韓国ドラマ『深夜食堂fromソウル』には、婚期を逃した女性3人組が“麺食いシスターズ”(ククス・シスターズ)として登場した。これはもちろん日本版オリジナルの“お茶漬けシスターズ”の韓国版だ。日本でも主食とはいえないお茶漬けを、ククスに例えたのはなかなかセンスがいいと思う。

 お茶漬け3人組のそれぞれのキャラは「梅」「タラコ」「シャケ」だったが、ククスはチャンチククス、ピビムククス(スープの代わりに激辛ダレの入った混ぜ冷麺)、ヨルムククス(大根の葉のキムチの漬け汁が入った冷麺)に例えられた。

 もちろん、3人のなかでいちばん気性の激しい女性が激辛のピビムククス役だった。ピビムククスはチャンチククスを出す店にはたいていサイドメニューとしてあるので、2人以上で食べるときは両方頼んで、味の違いを楽しむといいだろう。

 

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釜山の「亀浦ククス」のチャンチククス2000ウォン

 

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「亀浦ククス」のピビムククス2500ウォン。野菜もたっぷり

 

 

2000ウォンで食べられるソウルや釜山の店

 長引く不況で、みなさんが韓国を旅行するときも「節約」が重要なテーマになっているはず。そんなとき、チャンチククスは強い味方だ。値段は街や店によって2000ウォン(200円弱)~5000ウォン(500円弱)と幅がある。屋台だからといって安いとは限らない。

 ソウルなら、仁寺洞にある楽園商街ビルの地下にある市場なら2000ウォンで食べられる。麺の量もたっぷりで日本のかけそばよりも腹持ちがいい。ちゃんとキムチも添えられる。

 また、釜山なら地下鉄のチャガルチ駅と南浦駅の中間にある釜山銀行斜め前の「亀浦(クポ)ククス」でも2000ウォンで食べられる。

 

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「亀浦ククス」はチャガルチ駅と南浦駅の中間にある。どちらからも徒歩3分ほど

 

 旅先で少し忙しいとき、韓国版「早い・旨い・安い」のチャンチククスをぜひ一度試してみてほしい。

 

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チャンチククスには土地柄も表れる。これは黄海側の漁村で出てきたもので、アサリや牡蠣がのっている

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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