究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#25

バックパッカー大歓迎!? 台湾の「秘島」馬祖諸島〈後編〉

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 日本人バックパッカー向けのパンフレットまで完備している台湾・馬祖諸島とは、いったいどんな場所なのか。台湾でも訪れる人の少ない「秘島」を旅する方法を紹介する。


 

ホテルは事前予約が無難 

 宿はけっこうあると聞いていたのだ。だから油断して予約しておかなかったのだが、これが誤算であった。港のまわりに広がる小さな集落にもいくつかゲストハウスや民宿があったのだが、どこも満室。飛行機の欠航が重なっており、延泊せざるを得ない人がいたのも不運だった。
 小雨の降る中リュックを背負って途方に暮れていると、いったんは断られたゲストハウスの主人が翻訳アプリを使って話しかけてきた。「ほかの宿に聞いてみるから、ちょっと待ってろ」ということらしい。助かる。
 何軒か電話をかけてくれた。近くに空きがあるという。小さな食堂で、上階を民宿として貸し出すこともあるのだそうだ。こんな感じで一見するとフツウの民家や食堂でも、宿の営業許可を持っているところがちらほらあるのだという。
「最近、馬祖は台湾人の若者に人気で、週末は埋まることも多いんだ」と主人。
 南竿島では、港のほか、最も大きな集落である介寿、馬港、古い石づくりの家が立ち並ぶ村・津沙にいくつか民宿やゲストハウスがあるが少数だ。やはり予約したほうが無難だろう。
 バックパッカー・ウェルカムの島ではあるのだが宿泊代はなかなか高く、シングル1400元(約4800円)~。部屋はどこも清潔で、ホットシャワーやテレビなどはあり、Wifiは強力。朝食もついていて台湾の伝統通りに充実している。宿によっては4人部屋をドミトリーとして使っていることも。津沙の馬祖青年民宿はシングル660元(約2200円)、ドミトリー500元(約1700円)とリーズナブルだが朝食はない。それと港以外に泊まる場合は送迎を頼むべし。港から各集落の間は距離が離れている。バスは本数がわずかだし、タクシーも少ないのだ。

 

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北竿島の白沙港。媽祖を祀る廟を中心に小さな村がある

 

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伝統的な石づくり家屋を利用した津沙の馬祖青年民宿

 

レンタルバイクで島を駆け巡る! 

 アクセスの悪い馬祖でおすすめしたいのはレンタルバイクだ。台湾人の観光客もみんなバイクを借りて走り回っている。泊まっている宿でも手配してくれるだろうし、港にもレンタル屋&土産物屋がある。1日500元(約1700円)が相場だ。半日ならもう少し安くなる。
 東南アジアあたりだと免許がなくても平気で貸してくれるものだが、さすがに台湾はそういうわけにもいかない。免許の提示が必要なのだが、台湾は中国との微妙な関係の影響で、国際免許が通用しないのだ。そこで、旅行前には最寄のJAF(日本自動車連盟)に行こう。ここで手持ちの日本の運転免許証の台湾語翻訳文を用意してもらえるのだ。これがあれば台湾でも日本の免許が使える。普通免許なら自動車のほか一定のスクーターの運転が可能だ。手続きはJAF東京支部を例に取ると(混雑具合にもよるが)午前申請の午後受領、手数料は3394円。日本の免許証が必要だ。申請書類はJAFにある。
 で、こうして借りたバイクで島をかっ飛ばすのはなかなか楽しいのだ。起伏のある山中を巡り、台湾海峡を眺め、ところどころで軍の施設やら防空壕を見つけては歴史を思う。いまでもバリケードや監視所があり、軍が駐屯して、ガタイのいい兵士が訓練している姿を見たりもする。岩盤を掘り抜いて軍事拠点とした坑道も無数にある。
 トーチカや塹壕は観光スポットになっているところもけっこうあって南竿の見どころだが、大陸を見据えて機能している立ち入り絶対禁止、撮影厳禁の施設もまた多い。装甲車や、軍用のいかついボートが出入りしてもいる。ここはまだ「最前線」としての顔を持っているのだ。
 そんな防空壕を利用した老酒の醸造所を通り過ぎ、小さな村を訪れてみると、茶色い石を積み上げた伝統的な建築様式の家が立ち並ぶ。花崗岩を利用しているのだそうだ。台湾ではなく大陸、福建のスタイルなのだという。見るからに堅牢で、台湾海峡から吹きつけてくる風も寄せつけない。
 そんな家が、湾ごとに肩寄せ合って並ぶ。漁船が停泊し、航海の安全を守ってくれるという女神、媽祖を祀った廟が点在する。その媽祖が亡くなり遺体が打ち上げられた地こそ南竿島という伝説があり、馬祖諸島の由来ともなっている。「媽祖信仰」は、台湾、福建を中心に、中国沿岸部の人々や華僑に広く親しまれている。馬祖諸島は、その「聖地」でもあるのだ。

 

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南竿島の南西部に位置する津沙には昔ながらの家並みが残っている

 

安くておいしい馬祖グルメの数々 

 馬祖は地元メシもなかなかいける。有名どころは紅糟を使った料理だろう。紅糟とは名産の老酒をつくるときに出る赤い酒かすで、炒め物や揚げ物などさまざまに使われる。手ごろなのは紅糟炒飯で、ほんのりと酒の香りが漂い、やや甘みがあっておいしい。80元(約270円)前後だ。
 それに海鮮が安くて新鮮だ。福建各地と同様に、小ぶりの牡蠣やノリをふんだんに使った卵とじやスープ、揚げ物などがいける。魚のすり身から作った麺も素朴な味わいで、乾燥させたものはお土産にも人気だった。
 またベーグルのようなパンの生産でも知られている。これに牡蠣オムレツや肉などを挟めば、中国を睨む兵隊たちも任務につきながら食べることができるのだ……と人気になり、いつしか「馬祖バーガー」と呼ばれるようになったといわれるが、いまでは観光客に人気だ。
 どの店も夜は早い。9時には閉まってしまう店ばかりなので、早めの行動をすべし。そのぶん朝から宿でがっつり食べるのが台湾スタイルだ。また介寿の小さな市場では早朝から食堂が賑わっていて、粥や、魚のすり身がつまった水餃子がうまい。どれも200円前後でバックパッカー・グルメにはちょうどいい。

 

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赤い見た目にびっくりするが、これがおいしい紅糟炒飯

 

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こちらは紅糟を使った豚肉の揚げ物。トンカツ的でごはんにぴたり

 

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馬祖バーガーは小腹の空いたときに。南竿島の西部、馬港に人気店がある

 

馬祖諸島から、目指せ中国大陸! 

 旅行者のほとんどは南竿島だけを見て帰っていくのだが、それではちょっともったいない。船で20分ほど北に行くと北竿島があり、こちらはさらに古びた風情が漂う。時が止まったかのような小さな石の村があちこちに散らばり、きらびやかな台北と同じ国だとはとても思えない静けさだ。
 北竿島に渡る船は1時間に1本ほど。バイクは乗せられないが、北竿島の白沙港にも、やっぱりレンタルバイク屋がいる。この両島をゆっくりと見て、2~3日を過ごすのがおすすめだ。時間があるなら東引島など少し離れた島を巡ってみてはどうだろう。
 そして!
 バックパッカー的にはこの馬祖が出発点でもあるのだ。馬祖諸島は台湾本島よりも、はるかに大陸に近い島々。中国本土とも船で結ばれているのである。福建省は福州の琅岐港までおよそ1時間30分、170人民元(約2600円)。福州を足がかりに、広大な大陸を旅する。馬祖はそのゲートウェイなのだ。
 日本からまず台湾にLCCで飛び、基隆で船に乗ってかつて戦乱の海となった台湾海峡を横断。馬祖諸島を経由して再び船で大陸へ……そんなロマンある旅なんてどうだろうか。台湾辺境から中国へと入るこのルート、ドラマチックでなかなかにおすすめなのだ。

 

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北竿島の東端にある公園には、いまとなっては役目を終えた戦車が朽ちていた

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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