韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#24

冬到来、あつあつのスープとごはんのある風景

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 最近は韓国各地の料理を食べ歩き、韓国人よりも韓国料理に詳しい日本人が少なくない。彼らの話を聴くと、「韓国料理を極めていくとクッパやチゲのようなシンプルなものに行き着く」と言う人が多い。クッパやチゲは韓国人にとってとても身近な食べものだ。汁ものとごはんという組み合わせは、家庭でも食堂でもまさに韓国料理の基本といっていい。

 クッパはスープ(クッ)とごはん(パプ)、チゲは鍋物のことを指していて、他にもタン(湯)というものもあり、クッパやタンはチゲよりも汁気が多いなどといった違いはあるが、今回はそんな細かい話は抜き。本格的な冬が訪れた韓国で湯気を立てている汁物の写真を眺めながら暖をとることにしよう。

 

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ソウル南大門市場の太刀魚鍋横丁。最新刊『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』p61より

スンデクッパ(腸詰入り汁かけめしメシ)

 韓国人に○○クッパの○○部分を埋めよと言ったら、スンデ(腸詰)を挙げる人が多いだろう。日本人旅行者は積極的に食べないかもしれないが、韓国の飲食店街に行けばたやすく見つかる食べものだ。

 スンデクッパというと、私は「深酒」を連想する。一次会(大人数の宴会)を終えた中高年男性が気心の知れた仲間と腹ごしらえするのがスンデクッパの店。日本でも〆のラーメンを食べるときに、未練がましくビールを飲む人がいるが、韓国も同じで、スンデをつまみながら再び焼酎を飲み始める人も珍しくない。

 また、日本のように一人で酒を飲む姿があまり見られない韓国だが、スンデクッパの店ではけっこう見かける。気取らず、飾らず、肩の力を抜く。それがスンデクッパのある空間だ。

 

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ご飯が別になっているスンデクッ。腸詰以外に豚の端肉やモツが入っていることが多い

ユッケジャン

 日本の焼肉店でもおなじみの激辛スープ。細切りにした牛スネ肉やズイキなどが入っていることが多い。私にとってユッケジャンは、むしゃくしゃしたときに食べるものだ。ストレスがたまっているが、仕事があるので酒を飲むわけにはいかない。そんなときユッケジャンの辛さが軽い神経麻痺と発汗を促し、心身をスッキリさせてくれる。

 韓国のユッケジャンは日本のものよりもさらに辛いので注意が必要。辛さでごはんが進むので、ダイエット中の方にはおすすめできない。

 

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ユッケジャンは「キムパプ天国」などの大衆食堂チェーンでも食べられる

シレギクッ(大根の葉のスープ)、ウゴジクッ(白菜の外葉のスープ)

 大根や白菜の干し葉を牛骨などのダシで煮込んだスープ。ソウルなら仁寺洞の東側にある楽園洞(タプコル公園の裏)で出している店が多い。田舎の市場にある食堂ではクッパを頼むと、これが出てくることもある。

 香辛料も少なめで、肉片も入っていないので、胃に負担が少ない。本当の意味でのヘジャンクッ(酔い覚ましのスープ)になるだろう。

 

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シレギクッ。これにはヨモギの葉も入っていた

キムチチゲ

 韓国人に好きな食べもののアンケートをとったら、たいていベスト3に入るキムチチゲ。私は焼肉店であらかた肉を食べ終わった後に、焼き網に小鍋をのせて煮るキムチチゲが好きだ。

 焼肉の後の冷麺は別腹だとよくいうが、キムチチゲとごはんも同じで、つい食べ過ぎてしまう。発酵が進んだキムチの酸味と唐辛子の辛味が、口中をさっぱりさせてくれる。

 

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焼肉の網の上に小鍋を置いてぐつぐつ煮込むキムチチゲ

 

 キムチチゲは家庭でも食堂でもありふれた料理だが、専門店もある。仁川の旧市街、中央洞にはキムチチゲを主菜としたペクパン(定食)の専門店があり、朝からにぎわっている。

 

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仁川の中央洞にある人気店「ミョンウォルチプ」のキムチチゲ。辛味と酸味のバランスがいい。『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』p134より

漁村の大衆食堂、魚のアラのスープ

 長らく韓国の田舎町を旅してきて、山間部の農村はもちろん好きなのだが、飲食店の密集度では、人の出入りの多い漁村のほうに軍配が上がる。

 二日酔い気味だが、少し早起きして魚市場をぶらっと歩いた後、名もない食堂に入る。たいてい女将さんが一人で商っていて、メニューらしいメニューもないのだが、ペクパン(定食)を頼めば、スープとごはんにキムチやナムル、塩辛などを添えて出してくれる。

 スープは漁村らしく、たっぷりの魚のアラとネギ、薄切りの大根が入っている。けっして見た目はよいとはいえず、何の魚なのかもよくわからないが、ひと口すすったら最後、汁を口に運ぶスプーンは休む暇がなくなる。あたたかいスープで胃が動き出したら、ごはんを食べる。おあつらえ向きに塩辛が添えられている。塩辛ごはん→スープ→塩辛ごはんのローテーションを繰り返していたら、二日酔いのことはすっかり忘れていた。

 

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慶尚北道、竹辺の漁村で食べた魚のアラ汁

 

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同じ食堂で食べた塩辛とごはん

酔い覚ましの妙薬、タニシのヘジャンクッ

 川の水がきれいな山間部に行くと出合えるのが、タスルギ(カワニナ)と呼ばれる青緑色の小さな巻貝の身が入ったヘジャンクッ。その小さな身には解毒作用があり、二日酔いを和らげてくれるという。大根や白菜の干し葉の入ったシレギクッやウゴジクッにタスルギを加えたものだと思えばよい。

 スプーンでタスルギをすくい、そのやわらかい身を噛むと、ほのかに苦味が感じられ、なんとなく効くような気がしてくる。「キムパプ天国」など都市部の大衆食堂チェーンでもたまに見かける。

 

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タスルギヘジャンクッ。タスルギは地域によってコディとかオルゲンイと呼ばれる

センテタン(生スケトウダラのスープ)

 ユッケジャンと同じような真っ赤な辛いスープだが、ユッケジャンはごはんをぶち込んで荒々しくかき込むのが似つかわしい。それに対し、センテタンはじっくり味わうスープ。まずは真っ赤な汁をスプーンですくい、ふうふうしながらひと口。肉とはまたちがった繊細な旨味を堪能してから、ごはんへ。次に白身→白子と楽しみ、再びごはんへ。

 冷凍していない白身はもちろん旨いが、とろりとした白子と辛いスープもたまらない相性だ。「韓国料理は何を頼んでも赤茶色、ただ辛いだけ」などという人は、ぜひセンテタンを試してほしい。

 

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センテタンはソウルの広蔵市場や三角地駅前に専門店街がある

ソンジクッ(牛の血の煮凝り入りスープ)

 ソウルでは二日酔い解消スープとして有名。鍾路には専門店もある。二日酔い対策料理の専門店が存在することがじつに我が国らしい。

 牛の血の煮凝り(ソンジ)がごろんと入っていて、見た目のインパクトは絶大だ。しかしこのソンジ、味らしい味はなく、ほのかにレバーのような香りがする。ハチノスやセンマイ、豆モヤシなどがいっしょに入っていることが多い。

 乾いた寒天のようなソンジの食感、ハチノスやセンマイの弾力、豆モヤシのシャキシャキ感。これらを楽しみながらスープをすすり、ふと周囲を見渡すと、あれ? ソンジクッの具をつまみながら、マッコリを美味しそうに飲んでいる人がいる。6度くらいだから迎え酒というわけなのだろう。いや、マッコリだけではない。焼酎を飲んでいる人もいる。二日酔いを解消すめために来た店で、また飲み始めるという韓国酒道の底なし沼。

 ノドまで出かかった「マッコリください」という言葉を、私はソンジのスープで飲み込んだ。

 

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牛の血の煮凝りやハチノス、センマイが入ったソンジクッ

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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