究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#24

バックパッカー大歓迎!? 台湾の「秘島」馬祖諸島〈前編〉

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 台湾本島から遠く離れた馬祖諸島。中国本土に食い込んだ台湾の軍事拠点だが、いまでは手ごろな民宿も増え、観光開発が進む。古い福建の文化も色濃く残り、台湾本島とはだいぶ違う風情が漂う。日本人にとって手ごろな旅先である台湾にも「秘境」はあるのだ。

 

小さな島だが日本語パンフも完備 

 港が見える。小さな岩壁だった。低層のターミナルビルと、その向こうには灰色のささやかな街並み。くすんだ色のわずかな建物群の背後には、すぐ山が迫る。霧雨もあってか、まさに辺境の島といった風情だった。
 しかし船が接岸し、ターミナルビルの中に入っていくと、思いのほか立派で近代的だ。友達連れやカップルなど若い人たちが目立つ。小さいがインフォメーションブースまであって、何気なく見てみると、そこには思いがけず、日本語のパンフレットが置いてあったのだ。
〝バックパッカーとして馬祖を楽しもう! 馬祖完全攻略〟
 思わずにやりとした。
 ここは台湾本島から遠く離れた離島、馬祖諸島だ。その中心地でもある南竿(ナンガン)島である。この地までやってくる日本人旅行者はごく少数だろうと思うのだ。しかしそれでも馬祖国家風景区管理処は、こんな立派なパンフをつくっちゃうくらい日本人バックパッカーを歓迎してくれているのである。
 で、あるならだ。今回はその馬祖を旅するノウハウをたっぷり紹介しようと思う。馬祖諸島は、日本のガイドブックはもちろん、ブログなどでも情報は少ない。日本人にとってはとくに身近な海外旅行先である台湾の中でも、まだまだ知られざる地なのだ。そんな島々を行く海の旅ならきっと冒険心を満たせる。それに、のどかで田舎の島ならではの風情と、優しい人たちも出迎えてくれるだろう。

 

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馬祖諸島の日本語パンフには詳細マップと見どころ紹介が充実

 

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馬祖諸島で2番目に人の多い北竿島。湾ごとに小さな家が固まり集落をつくっている

 

歴史の荒波に揉まれてきた小さな島々 

 さて、まず馬祖諸島がどこにあるかといえば、ほとんど中国大陸に接した沿岸部なのである。台湾本島・台北からはおよそ200キロ離れている。沖縄・与那国島までが台北から150キロだから、日本のほうがよっぽど近いのである。

 

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赤いポイントが馬祖諸島。中国大陸に張りついたような場所にある

 

 どうして本島からこれほどに遠い馬祖が、台湾の「領土」なのか。話は国共内戦にさかのぼる。日本軍敗走後の1945年から大陸で巻き起こった国民党と共産党の争いは、全土を巻き込んだ内戦へと雪崩れ込んだ。やがて毛沢東率いる共産党の進撃を食い止めることができず、国民党は次々と大陸の拠点を失っていく。そしてついには海峡を越えて台湾に撤退するのだ。
 それでもなお、国民党は大陸に近いわずかな島々をいくつか、粘り強く保持していた。そのひとつが馬祖諸島なのだ。ほかにも金門島など、中国本土と目の鼻の先にあるいくつかの島を国民党は実効支配し、軍事力を集中させて守備を固め、来るべき大陸反攻に備えた。共産党も、要塞と化したそれらの島々を落とすことができなかった。
 そして半世紀が過ぎていった。
 大陸側から砲弾が雨あられと降り注いだ島々も、いまでは平和だ。砲撃ではなくマネーと観光客とがお互いに行き来するようになった。要塞のような軍事基地もまだたくさんあるが、かなりの部分が開放されて観光地となっている。長年ずっと渡航に厳しい制限があったため、島独自の文化も保存されている。台湾本島の人からも、中国本土の人からも、もの珍しく映るようだ。日本人にとってはなおさらだ。

 

 

「台馬之星」号で台湾海峡を越える! 

 そんな馬祖諸島へはぜひ、船で行ってみたい。飛行機も出てはいるのだが、台湾海峡を船で越えて小さな島々を訪れる体験はなかなかできないもの。台湾本島の基隆から、フェリー「台馬之星」号が出ているのだ。基隆の街の中心にある旅客第2埠頭を22時発。チケットも同じ場所で19時30分から購入できる。
 馬祖諸島の中心地である南竿島まで8時間ほどの船旅だ。偶数日は基隆から東引島を経由して南竿島に行くのでやや時間がかかる。なお基隆は台北からバスや列車で40~50分ほどの距離。
 乗船料金は座席のみ600元(約2000円)、ドミトリーのようなベッドが1000元(約3400円)、コンパートメントになった個室が1500~5000元(約5200~1万7000円)だ。カラオケ完備の部屋まであって驚いた。
 なお飛行機は台北の松山空港から多発している。しかし馬祖諸島は雨や霧が多く天候が不安定なので、欠航することもある。
 トイレはもちろんついているが、食べるものは船内の雑貨屋程度だ。売っているのはカップラーメン、パン、ちまき、包子、お菓子、ジュースやビールなど。熱湯はいくらでも手に入る。混みあうので、食糧は出航前にあらかじめ用意したほうがいいかもしれない。
 ネットは陸地に近いところだけ。船内wifiはない。けれど船をあちこち探検したり、甲板に出て景色を眺めたり、売店を物色していれば8時間はけっこうあっという間に過ぎるもの。波の状態によってはもっと早く着くこともある。
 船酔いが心配な人は事前に薬を飲んでおこう。ベッドに横になって波の揺れに身体を合わせていると、あまり酔わない気がする。6月上旬、小雨の台湾海峡はあまり揺れず、船酔いに苦しんでいる乗客はわずかだった。

 

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1000元のドミトリーの様子。各ベッドに灯かりはあるが、電源はナシ

 

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「台馬之星」号の甲板は乗客の憩いの場。誰もが思い思いに船旅を楽しむ

 

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基隆港に停泊する「台馬之星」号。基隆も夜市が楽しい街なので一泊くらいしたい

 

 

現金の用意は十分に 

 港でまず慌てたのはATMがないことだった。裏手に小さいのがひとつあったが、台湾発行のカードしか使えない。ターミナルにはセブンイレブンがあったが(諸島内におそらく3軒しかないうちのひとつ)そこでもATMはない。日本のカードが使えるATMは、確認できたもので南竿空港内だけだ。両替所もないが、そのへんの雑貨屋とか土産物屋では、中国人民元は両替してくれる。大陸からの観光客もけっこういるからだ。頼めば日本円も両替してくれるかもしれない。いずれにせよ現金は少し余裕を持っていくほうがいいだろう。
 そして諸島内は天気が変わりやすく、風も強い。夏場でも羽織るくらいの上着はあったほうがいい。

 

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南竿島で最も大きな街である介寿には、どこか懐かしい風情が漂う

 

08
諸島内では堅牢な石造りの家が多く、独特だ


(後編に続く)
 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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