台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#23

一人旅向きスポット5選~『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』より

文・光瀬憲子    

 

 知り合いの40代女性から、「台湾、一人で行っても楽しめるかな?」と聞かれたので、「台湾はどこの国より一人旅向きだよ」と即答した。

 治安がよく、日本語も通じやすい。外食率が高く、現地の人も「一人メシ」が当たり前なので、店に入りやすい。そして、小皿料理が多いので食べ歩きしやすい。今回は最新刊『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』で取材したスポットのなかから、一人旅向きの店や施設をご紹介したい。

台北、龍城市場の小籠包屋さん  

 台北には女性一人でも安心して歩ける、こぎれいな朝市が少なくない。なかでも東部にある「龍城市場」は、集合住宅の中にある清潔でコンパクトな朝市だ。近所の主婦がスーパーへでも行くように利用しているので、旅行者が一人でふらりと訪れても溶け込みやすい。

 野菜や精肉コーナーの奥に、美食の三角地帯とでもいうべき朝ごはん屋さん密集地がある。早朝から昼過ぎまで営業していて、食事時には行列ができる。

 三角地帯にあるのは小龍包、ゴマ風味の油麺、イカあんかけスープの店。どれも遠方から食べに来る人がいるほど人気だが、一押しは「上海小龍包」。肉汁のしたたる薄皮小籠包ではなく、ミニサイズの肉まんのようにふっくらしている。生地はほんのり甘く、中身の肉にはジュワッと汁気もある。行列で待つ間はもうもうと湯気が上がる蒸籠や、その場で黙々と小籠包を作る職人さんの様子を見ることができる。購入したら、その場で食べるためのテーブルもちゃんとある。

 

taiwan23_01

龍城市場、美食の三角地帯。左手前が「上海小龍包」

 

taiwan23_02

「上海小龍包」の小籠包。皮も具も◎

台北、龍山寺からの徒歩10分の廟前酒場 

 飲み屋文化が発達していない台湾では、大都会台北といえど食事をしながらお酒を楽しめる店を見つけるのが難しい。一人でも入りやすい、という条件を加えるとさらに困難だ。そんななかでおすすめしたいのが台北の下町、艋舺(万華)の清水厳祖師廟前にある「祖師廟口自助餐」だ。ただし昼酒専用。店は午前中から営業しており、昼過ぎから14時くらいまでがピーク。15時になると店じまいをしてしまう。しかも土日は休みだ。

 

taiwan23_03

龍山寺から北方向に10分歩いた辺りにある「祖師廟口自助餐」

 

 この店は中高年男性客が多いため、やや入りづらく感じるかもしれないが、ご主人と女将がとても気さくで親切だ。女将は日本旅行が大好きなので日本語も片言ながら話せる。人なつっこい常連客が多く、ご主人や女将とともに和やかな雰囲気を醸し出している。常連客のなかには日本語を話す人もけっこういるので、話し相手になってもらったり、あれこれ世話を焼いてもらったりした拙著の読者さんも多い。お酒が入るので節度を守ることは大切だが、地元の人たちと仲良くなるにはうってつけの酒場である。泥酔した客には女将が厳しい態度をとってくれるところも安心だ。

 料理はカウンターの前のガラスケースに並んでいるので、好きなものを指差せばよそってくれる。小皿に少しずつが基本で、ひとりでも食べ切れる量だ。

 

taiwan23_04

「祖師廟口自助餐」の料理と酒。これで約1000円(!)

 

 閉店後もさらに飲み続けたければ、隣りの「沙茶牛肉大王」が21時までやっているし、おなかがすいたら、向かいにある「清粥小菜」(17時から営業)でお粥を食べてもいい。

人気の平渓線は意外と“お一人さま”向き 

 九份を訪れるつもりなら、その前に平渓線も体験してはどうだろう。小さなローカル列車、平渓線は瑞芳駅から出ている。1時間に1本しかないので時間を見極める必要はあるが、少し早めに宿を出て、まずは瑞芳駅で朝ごはん。

 駅前から垂直に伸びる民生街という通りの右手に「梅」という小さな食堂がある。肉のすり身のあんかけスープは朝ごはんにぴったりのあっさりした味。さらに白米をスープに混ぜるとおじやにもなるので腹持ちもいい。民生街には他にも大腸麺線や肉まんなど、人気の朝食店がそろっているので、平渓線を待つ間に時間をつぶすにはちょうどいい。

 

taiwan23_05

瑞芳駅前の食堂「梅」の肉のすり身あんかけスープのごはん入り

 

 朝ごはんを食べたらさっそく平渓線へ。行きが列車の先頭なら帰りは最後尾というように、陣取る位置を変えると飽きずに楽しめる。先頭(運転席脇)で、運よく陽気な運転手、張さんに出会えたら彼がカタコトの日本語で観光ガイドをしてくれる。最後尾なら、十分駅を列車が通過した直後、ランタンを飛ばそうとする観光客が線路にぞろぞろ出てくる様子を観ることができる。好きな位置を確保するためには、旅行者がまだ少ない9時台の列車に乗るといい。注意したいのは、列車は1時間に1本しかないので、あちこちの駅で下車してのんびりしているとあっという間に数時間が経ってしまうこと。あまり時間がない場合は下車駅をひとつに絞って、あとは往復の列車の風情を楽しむといい。

 

taiwan23_06

平渓線のハイライトのひとつ、十分駅

台南、ゆっくり時が流れる友愛市場へ 

 台南へは高鉄(新幹線)も便利だが、時間が許せば台鐵(在来線)に乗って車窓風景をのんびり楽しむのもいい。台南へは自強号でおよそ4時間。もちろん睡眠時間に充ててもいい。

 食文化が発達した台南は食べたくなるものが多い。初めての台南で外せないのが国華街というグルメストリートだ。蚵仔煎(牡蠣のオムレツ)、チマキ、割包(台湾バーガー)など、ひとつの料理に特化した屋台や食堂が目立つ。

 一人旅の食事に特に適しているのが国華街から徒歩5分ほどの場所にある友愛市場。こぢんまりとした朝市で、タイル張りのカウンターは積年を感じさせつつも清潔感がある。台南名物の虱目魚(サバヒー)という魚も実物を見ることができる。虱目魚は食堂では粥やスープになって出て来るが、調理される前は白と黒のコントラストが美しい魚だ。台南以南の温かい場所で養殖されるので、台北ではあまりお目にかかれない。

 友愛市場には知る人ぞ知る有名なチマキ店「郭家粽」がある。3~4人しか座れないカウンターだが、この店の菜粽(ピーナッツチマキ)や、肉チマキと味噌汁の組み合わせは定評がある。日本時代の名残りで、日本語の話せるお年寄りがふらりとやってきて、屋台の店主と日本語で話す場面も見かけたことがある。日本の影も見え隠れする友愛市場。初めて来たのに懐かしい気持ちになり、時計の針がゆっくりと進むような不思議な感覚にとらわれる場所だ。

 

taiwan23_07

台南の友愛市場。手前がチマキ店「郭家粽」

“台湾の横浜”鹽埕(高雄)の個性的な宿 

 台南まで足を伸ばしたら、高雄はもう目と鼻の先だ。台湾リピーターなら、あえて台北をスキップして、高雄に直接飛び、高雄を拠点に旅するのもおもしろい。そこでおすすめの宿が鹽埕(イェンチェン)という横浜や神戸に似た街にある「叁捌旅居」(サンバリュージュー)だ。現代風にアレンジされながらも、どこかレトロな雰囲気をまとう民宿。実は、オーナーの祖母が経営していたウェディングサロンだった4階建ての細長いビルを改装したものである。随所にウェディングサロン時代の雑貨なども見つけることができる上、部屋も洗練されている。さらにキッチンやダイニング、読書室のようなスペースも自由に使うことができる。屋上にはバックパッカー用の共同部屋も用意されている。

 

taiwan23_08

高雄の鹽埕にある宿「叁捌旅居」のダイニングルーム兼読書室

 

 叁捌旅居のある鹽埕は高雄でもっとも古い下町で、60年台から70年台の建物があちこちに残されていて、路地が多く、美味しくて特徴のある食堂に巡り合える。

 台湾南部では、特にフルーツが美味しい。鹽埕にもフルーツをふんだんに使うかき氷店があり、老若男女を問わず人気だ。夜中まで営業しているところもうれしい。写真の超級水果冰は迫力満点だが、フルーツたっぷりで案外あっさりしているので、ひとりでも食べられてしまう。メニューには写真もついているので言葉がわからなくても安心だ。

 

taiwan23_09

「高雄婆婆冰」の超級水果冰(デラックスフルーツかき氷)80元

 

 ひとり旅は不安や危険も伴うが、すべての時間を自分のためだけに使える贅沢な旅でもある。勇気をもって一度実現させると、ハマる人も多い。台湾ひとり旅なら、人懐っこい地元の人々にも手伝ってもらって、素敵な思い出が作れそうだ。

 

 

 

*著者最新刊『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、10月21日に双葉社より発売になりました。ぜひお買い求めください!

 

台湾カバー01

『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』 

定価:本体1200円+税

 

*新刊発売記念!著者トークイベント開催のお知らせ

光瀬憲子スライド&トークショー「大人が楽しめる台湾グルメを巡ろう!」

【開催日時】11月10日(木)19:30~(開場19:00)
【会場】 東京・西荻窪『旅の本屋のまど』店内  
申し込み方法等、詳細は『旅の本屋のまど』HPをご覧ください→http://www.nomad-books.co.jp
皆様、奮ってご参加のほど、お待ちしております!!

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

taiwan_profile_new

著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

紀行エッセイガイド好評発売中!!

taiwan00_book01

台湾一周! 安旨食堂の旅

taiwan00_book02

台湾縦断! 人情食堂と美景の旅

isbn978-4-575-31183-9

台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅

 

台湾の人情食堂
バックナンバー

その他のTRAVEL

ページトップへ戻る

ページトップへ戻る