韓国の旅と酒場とグルメ横丁

 韓国の旅と酒場とグルメ横丁

#22

最新刊の取材で知った美味5選(ソウル、仁川編)

korea00_writer.gif 

   

 10年間以上、韓国の地方取材に力を入れてきたが、この1年間はソウルとその周辺の魅力を再確認することに力を入れた。お金をたくさん出せば美味しいものにありつけるのは当たり前なので、韓国の庶民が日常的に食べたり、ハレの日にちょっと奮発して食べたりするものに注目した。

 今回は最新刊『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』で取材した料理のなかでも特に美味しかったものを5つ紹介する。

ソウル中央市場のプンジャンオクイ(アナゴ蒲焼き)

 地下鉄2号線、東大門歴史文化公園駅のひとつ先の新堂駅前にある中央市場。ソウルの中心部にありながら、どこか地方の市場のような雰囲気があり、気に入っている。

 チヂミやスンデの屋台に目を奪われながらアーケードの通りを進むと、「アナゴ焼き3尾1万ウォン」の横断幕を掲げた店を見つけたので、吸い込まれるように席に着く。市場の通りにまでテーブルが置いてある半屋台形式だが、この気楽さがいい。アナゴ3尾とはどれくらいのボリュームなのか想像がつかなかったが、3×5センチくらいに切り分けられた身が26切れあった。2~3人で飲みながらつまむのにちょうどよい量だ。

 日本でよく食べられている料理を韓国で食べるとだいたいが失敗、よくてまあまあ。私もそんな先入観を持っている者の一人だが、これは当たりだ。味付けは薄めでたくさん食べてもあきない。聞けばご主人の奥さんが日本人だそう。もしかしたら味付けに一役買っているのかもしれない。アナゴをつまみにマッコリから始めたが、ビール、さらに焼酎に移行。どんな酒にも合う。個人的にリピート決定だ。日本からお客さんが来たらぜひ案内したい。

 

kankoku22_01

中央市場「コッリチヌン ジャンオクイ」のプンジャンオクイ、1万ウォン

ソウル鍾路3街、路地裏のカルククス(韓式うどん)

 韓国関係の旅行サイトでもよく記事になっているが、5号線鍾路3街駅のある通りの北側の路地にカルククス横丁がある。カルククスはいわば韓国式のうどん。小麦粉を練ったものをカル(刃物)で切って麺(ククス)にすることからこう呼ばれる。汁は煮干しや牛肉でダシをとった関西風。麺は歯ごたえがあるので、日本のさぬきうどんが好きなら気に入るはずだ。具はアサリやムール貝など海産物がメイン。私の場合、前日に飲み過ぎて、今日は休肝という日に食べることが多い。

 この横丁では競合する店が多いせいか、どの店もボリュームたっぷり。日本の立ち食いうどんの1.5倍はあると思ったほうがいい。店の人はいい顔をしないかもしれないが、女性なら2人でひとつでじゅうぶんかもしれない。ソルロンタンの店のキムチが美味しいように、カルククスの店もキムチには気をつかっている。あっさりしたスープをすすりながら、たまにキムチをつまむと最高だ。横丁には4、5軒の専門店があるが、どれも大きな外れはない。混んでいる店があったら入ってみるといいだろう。

 

kankoku22_02

鍾路3街、路地裏のカルククス。どの店も5500ウォン程度

ソウル南大門市場のカルチクイ(太刀魚の揚げ焼き)

 南大門市場のC棟とD棟の西側ブロックの路地は太刀魚料理の店が集まっていることで有名だ。太刀魚の切り身を唐辛子やニンニク、生姜のきいたタレで辛く煮たカルチチョリムという小鍋料理が目玉なのだが、辛いものが苦手な人には手ごわい食べものだ。

 私のおすすめは切り身に塩をふってフライパンで揚げ焼きしたカルチクイ。薄い衣の部分にサクッと箸を入れると、湯気とともに白い身が現れる。それを骨から外しながらじっくり食べるのが楽しい。ごはんのおかずにもなるが、マッコリのつまみにしたらもっと幸せ。私の行きつけは有名店「ヒラク」のある路地を南に少し行った交差路の角にある「トンファ食堂」だ。

 

kankoku22_03

南大門市場の路地裏にある「トンファ食堂」のカルチクイ8000ウォン

仁川の水冷麺

 母親が南北分断前の北朝鮮出身なので、冷麺にはこだわりがある。スープのあるムル冷麺も、辛いソースでからめるピビム冷麺もともに好きだが、“先酒後麺”(ソンジュフミョン)という言葉を知って以来、茹でた豚肉などをつまみに一杯やってから、あっさりしたムル冷麺で〆るのが好きになった。

 年齢のせいもあり、淡泊なものをありがたがるようになっている昨今、仁川の旧市街、内洞にある「京仁麺屋」ですばらしい冷麺と出合った。仁川は私の母のような朝鮮戦争避難民が多く定着したところなので、北由来の冷麺専門店が多い。私はこれまで萬寿洞の「黄海モミル冷麺」をひいきにしてきたのだが、旧市街からは遠いのが難点だった。

 京仁麺屋の冷麺はまずスープをひと口飲んでハッとした。なんらかの漢方が使われているような気がするのだが、嫌みがまったくない。今まで韓国全土で食べたどの冷麺よりもあっさりしている。やや太めの麺はそば粉8割だが、実の外皮まで使った田舎そばふうではなく、つるんとなめらかな舌触り。一杯飲んだ後に食べるというより、お昼どきにこの一品とだけしっかり向き合いたい。そんなタイプの冷麺だ。ソウル中心部では専門店の冷麺は1万~1万3000ウォンはするが、この店は9000ウォンというのも魅力だ。

 

kankoku22_04_2

仁川「京仁麺屋」の平壌ムル冷麺9000ウォン

仁川のスジタン(牛筋の鍋)

 地元の人に「気取りのない大衆酒場に行きたい」と言ったら教えてくれたのが、チャイナタウン東側にある金剛制靴ロータリー前の大衆酒場街。スジタンという鍋料理はそのなかのひとつ「マニャンチプ」にあった。

 スジとは日本語の筋からきている。そう、おでんダネでよく知られる牛筋のことだ。ソルロンタン専門店にあるトガニタンに入っている牛膝軟骨に類するものなので、2万ウォンという値段では、野菜のなかに申し訳程度に筋が入っているくらいだろうと予想したが、誤解だった。野菜はネギが少し散らしてある程度で、筋がたっぷり入っているのだ。筋のもちもちとした歯ごたえを楽しみながら、焼酎を飲む。これはいいつまみを発見した。スジタンのために仁川まで行ってもいいが、ソウルでもどこかの店でやってもらえないだろうか。

 

kankoku22_05

仁川「マニャンチプ」のスジタン2万ウォン

 

 

*本連載の一部に新取材&書き下ろしを加えた、著者最新刊『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』が、10月21日に双葉社より発売されました。ぜひお買い求め下さい!

 

kankoku_h1

『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』

定価:本体1200円+税

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

korea00_writer

korea00_writer.gif

紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

紀行エッセイガイド好評発売中!!

korea00_book01

うまい、安い、あったかい 

韓国の人情食堂

korea00_book02

港町、ほろ酔い散歩

釜山の人情食堂

isbn978-4-575-31182-2

韓国ほろ酔い横丁 

こだわりグルメ旅

 

 

 韓国の旅と酒場とグルメ横丁
バックナンバー

その他のTRAVEL

ページトップへ戻る

ページトップへ戻る