台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#22

最新刊の◎おすすめ料理、5つ選びました!

文・光瀬憲子    

 

 台湾の地方旅行を一押しも二押しもしてきた私だが、台湾を初めて訪れる人や、これからリピートしようとしている人の多くの目的地は台北だろう。そこで私も初心にかえり、7年間暮らした台北市内をくまなく歩いて本当に美味しいお店をもう一度探してみた。

 そんな選りすぐりの食堂や屋台を集めたのが、発売されたばかりの拙著『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』だ。そのなかから、取材中に特に印象に残った店や食べ物をご紹介したい。

西門町で見つけたパワー牛肉麺 

 台北に行けば誰もが訪れるであろう西門町。台湾の渋谷や原宿とも呼ばれる台北きっての若者エリア。渋谷センター街のように交差点から扇状に延びる通りには流行の小物やファッションがずらりと並ぶ。でも、それだけではない。西門町は案外おもしろい歴史をもつ町なのだ。

 西門町のすぐ隣には、かつての台湾一の繁華街、艋舺(萬華)がある。第二次世界大戦後の1949年、中国大陸から蒋介石とともに台湾に渡った国民党の党員や軍人たち(外省人)は艋舺を根城にしようとしたが、地元のヤクザたちが譲らなかった。繰り返し縄張り争いを展開した末、外省人はお隣の西門町を拠点とすることになった。だから西門町をよく見ると、「1949創立」の飲食店や土産店などが点在している。これは、戦後台湾に渡った外省人がすぐに店を始めたということだ。

 西門町のオシャレな通りを抜けると、年季の入ったビル「萬年商業大楼」がある。この地下が美食街となっているのだが、エスカレーターを降りると、そこはまるで1970年代の日本の商業ビルのようだ。この奥に1949年創業の「老山東家常牛肉麺」がある。店員はみな若いが、品名がびっしり書かれた看板を掲げた店構えがいかにも時代を感じさせる。牛肉麺というのは、店によって麺の太さも味付けもさまざまだが、この店の麺はきしめんのように太く、コシがある。一方で、たっぷり盛られた肉塊の柔らかいこと! 牛肉麺には筋張った肉を入れる店も多いのだが、私は断然、溶けるように柔らかい肉が好みだ。いまは3代目が店を切り盛りしているというが、この先もずっと西門町の片隅で、外省人の味を守り抜いてほしい。

 

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西門町の商業ビルの地下食堂街にある「老山東家常牛肉麵」の牛肉麵160元。麺は手打ち

大人の夜市、遼寧街で意外な出合い 

 長らく、日本人に人気がある台北の夜市は士林だったが、最近は寧夏夜市も注目されているようだ。規模が大きすぎず、美味しい屋台が多い。だが、寧夏や士林を卒業したら、ぜひ遼寧街夜市に行ってみてほしい。ここは夜市と言っても屋台ではなく店舗を構えた大人向けのレストランが中心。生簀に並んだ鮮魚などを選んで炒めたり、蒸したりしてもらう。遼寧街夜市には鵝肉(ガチョウ肉)を出す店も多い。若者よりも少しだけお金のある中高年のための「酒のある夜市」なので、値段もやや高め。

 でも、遼寧街の入口にある「鵝肉城大排擋」は半屋台式なので価格もリーズナブル。店舗で料理を選んだら、通りを挟んだ向かい側の歩道に並べられた露天のテーブルでいただく。この店は、鵝鳥や魚介もさることながら、裏メニューの臭豆腐が絶品。屋台で見かける臭豆腐よりもカリッと揚がっていて、臭みがない。野菜などの具材も合わせて炒めてあるので酒の肴に最高なのだ。ビールと臭豆腐炒め。大人の夜はこれで十分だ。

 

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遼寧街夜市「鵝肉城大排擋」の臭豆腐炒め。瓶ビールと合わせて240元

台湾中の酒飲みが集まる長安路と吉林路で 

 遼寧街夜市でも酒を楽しめるが、もっと本格的に飲みたい人や、賑やかな酒場の雰囲気を味わい人には長安路や吉林路の熱炒(ルーツァオ)もおすすめだ。熱炒とは読んでの通り熱々の中華鍋でザッと炒めた料理を指す。快炒(クァイツァオ)とも呼ばれる。シーフード、肉、野菜など、炒める具材は何でもいい。

 長安路や吉林路は別名「熱炒街」との異名を取るほど熱炒店が多い。大箱ぞろいで、週末の夜ともなればビールでご機嫌になった若者たちであふれ、店内では酔客の声が大音響となってこだまする。台湾ではあまり酒飲みが目立たないと思っていたが、この雰囲気なら楽しいことは間違いない。ただし、週末の夜はどの店も混雑していて待たされることもある。

 大皿料理が基本なので3人以上で訪れることをおすすめするが、品数を減らせば2人でも大丈夫。大きな中華鍋で炒められた、しっかりと味付けされた魚介や肉類はビールに合う。これぞ中華料理の醍醐味。小籠包や春巻きを屋台で買い食いするのも楽しいが、大皿料理も旅行中に一度は体験してほしい。

 

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吉林路の繁盛店「紅翻天生猛海鮮」の蒸し魚とアサリ炒め。タイガービールと合わせ620元

台南のサバヒースープ、これなら食べやすい 

 台湾グルメを極めようとするなら、次なる目的地は食の都、台南だろう。台南ではどの屋台も食堂も、こだわりをもってそれぞれの料理を丁寧に出していることがよくわかる。台南名物と言えば虱目魚(サバヒー)という白くて美しい20~30センチほどの魚だ。日本人にはあまりなじみがないが、台湾では台南以南、東南アジア諸国などでもよく食べられている。あっさりとした甘みが人気で、身をまるごとスープに入れたり、ほぐしてお粥にいれたり、すり身にしてあんかけにしたりと食べ方もいろいろ。

 台南の人々は、みな自分がひいきにしている虱目魚店がある。私はといえば、今回の取材ですっかり惚れ込んでしまったのが「阿和肉燥飯」の虱目魚の皮のスープ。うっすらと肉がついた虱目魚の皮をアツアツのスープに入れる。くるりと丸まった皮は、歯ごたえもあり、香りも豊か。

 

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台南「阿和肉燥飯」の皮魚湯50元

 

 さらに、この店の肉燥飯(魯肉飯)もみごとだ。ネギの香ばしさが漂う、脂の乗った肉が白米の上で呼んでいる。この店の肉燥飯と虱目魚の皮スープを飲むためだけに台南に行くのもなかなか粋ではないだろうか。

 

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「阿和肉燥飯」の肉燥飯20元

高雄の切仔麺の店で初体験 

 台湾の南北を高速鉄路が走るようになって、ぐっと近い存在になった高雄。最近では成田・高雄間のLCCも運行するようになり、日本からのアクセスがよくなった。ぜひ訪れたいのが鹽埕(イェンチェン)という下町。50~70年代は米兵が闊歩した町で、どこか横浜に似ている。往時を想像しながら歩くと楽しい、大人の感性が試される場所だ。
 そんな鹽埕の路地裏で出会ったおもしろい料理がある。「阿進切仔麺」というシンプルな切仔麺を出す店にあった黒白切だ。黒白切とは豚モツをさっと湯がいてスライスしたもの。日本人や韓国人なら当たり前のようにこれをつまみに一杯やるはずだが、台湾人はあくまでも麺のおかずとして食べている。豚のハツ(心臓)、フワ(肺)、レバーなど部位ごとに食感がちがって楽しい。

 ここでなんとも珍しい部位に出合った。まるでキャタピラのような、それでいて象牙のように美しい色をしたギザギザの部位。これは豚のどの部分? と店長に尋ねると、「歯茎だよ」とニコッと笑う。あらゆる台湾料理を食べ尽くしたと思っていたが、こんなところでまた初体験。だから台湾はおもしろい。肝心の歯茎のお味は? これがまたコリコリした食感がたまらない。う~ん、お酒が飲めれば……とうなりつつ、看板の切仔麺をすするのだった。

 

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高雄鹽埕の「阿進切仔麵」の湯麵45元。太めの麺にコクのあるスープがからむ

 

 

*本連載の一部に新取材&書き下ろしを加えた、著者最新刊『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、10月21日に双葉社より発売になりました。ぜひお買い求めください!

 

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*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅

 

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