韓国の旅と酒場とグルメ横丁

 韓国の旅と酒場とグルメ横丁

#21

「取材では本気飲み?」そんな疑問に答えます

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「韓国全土で食べ歩きをするなんて羨ましいですね」

「そういう仕事なら私もやってみたいです」

「酔っぱらってしまっても取材になるのですか?」

 

 上記は15年以上、食べ歩きの仕事をしている私がよく日本の人から言われることです。今回はみなさんから寄せられる素朴な疑問にお答えします。

 

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筆者は元から酒豪ではない。鍛えられたのは2009年のマッコリブームから。全羅南道の青山島で

取材する店はどうやって探すの?

 いちばんの頼りは口コミです。ソウルのような大都市の場合は、私の行きつけの飲み屋(鍾路3街や乙支路3~4街など)で飲んでいるお客さんに話しかけ、おすすめを教えてもらいます。

 地方ではタクシーの運転手さんが有力な情報源です。バスターミナルで降りたらタクシーに乗り込み、そのまま運転手さんの行きつけの店に直行することも珍しくありません。また、タクシーの運転手さんが集まっている技士食堂(キサシクタン)と呼ばれる大衆食堂で聞き込みすることもあります。

 今でこそ、韓国のネットには飲食店情報があふれていますが、食べ歩き取材を始めた1999年頃は一般人がグルメネタをアップすることは稀でした。地元の人しか行かないような店の情報がネットに流れ出したのは、ブログが流行りだした2004年以降だったと思います。

 

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タクシーの運転手さんが集まる技士食堂(キサシクタン)は貴重な情報源

どんなふうに取材しているの?

 基本的に私と日本人編集者(兼カメラマン)の2人で取材しています。原則的に、事前にお店側に取材だということは告げません。取材であることを告げると、お店の人が構えてしまったりして、ふだんの姿を見ることができなくなってしまうからです。型にはまったインタビューなどもしないので、傍から見たら、中高年の食いしん坊2人組が楽しく食事をしているようにしか見えないかもしれません。

 単に食べ物を取材するだけなら、一度その店に行けば済みますが、名物女将がいる店だったり、常連客がちょっとしたコミュニティを形成していて、それが店の特徴になっていたりする場合は、昼と夜、あるいは夜と昼の2回行くようにしています。

 

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右から女将、常連客3名、左端が筆者。忠清南道・瑞山の酒場で(仕事です)

酒場の取材の場合、本気で飲むの?

 食べ物を味わえば済む取材の場合は、食べるだけです。いえ、ちょっと嘘をつきました。その食べ物に合う酒があれば、できるだけ飲むようにしています。

 クッパ(汁かけ飯)などの場合は、たいていその土地のマッコリと合わせます。まずは汁の中の具(肉や魚介)をつまみながら、マッコリを飲み、残った汁にご飯を投入して、かき込むのが楽しみです。肉や魚を使った辛い料理の場合は冷えた焼酎ですね。

 基本的に本気で飲みます。酒好きだからということもありますが、常連客と呼吸を合わせるためには、酒を注ぎ注がれ、同じように気分を高揚させる必要があるからです。

 地元の中高年に「おまえはよく飲むな。気に入った」などと言われ、二次会につれていかれる(ついていく)こともあります。三次会はたいていノレバン(カラオケボックス)なので、午前様になることも珍しくありません。

 

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このような揚げ物にはマッコリを合わせる

飲んだり食べたりした代金は払うの?

 客としてお店を利用しているので当然払います。ただ、田舎の飲食店の場合、「遠くからわざわざ来てくれて、ありがとう」などと言われ、代金を受け取ってもらえないことがあります。「取材してくれて、ありがとう」ではなく、「遠くから来てくれて、ありがとう」という真心が伝わってきた場合は、甘える場合もあります。

 私が著書で取り上げた地方の店に行った日本の旅行者が、同様に「お代を受け取ってもらえなかった。申しわけなかったが感激した」という報告をしてくれたこともありました。その女将は外国からわざわざ来てくれたことがよほどうれしかったのでしょう。

 ただ、田舎の大衆酒場(食堂)の女将は庶民のためにできるだけ多くのつきだしを提供しようと努力している人情家で、本人だってけっして裕福とはいえません。「誠意です(ソンウィ イムニダ)」と言えば受け取ってもらえることもありますし、雰囲気によってはお皿の下にお金を置いて店を出たりすることもあります。

 

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拙著を読んで来た日本人読者からお代を受け取らなかった全羅北道・金堤の酒場の女将(残念ながら数年前に廃業)

 

 中高年の常連客に連れられて二次会、三次会に行く場合は、まず払わせてもらえません。韓国では最近でこそワリカンにする若者が増えてきましたが、年配者の間ではまだまだ目上の人や誘った人が払うのが一般的です。日本でもよくあるように、トイレに行くふりをして支払いをしてしまう方法もありますが、金額が大きい場合は気分を害する年配者の方もいます。

 なので、基本的に行為に甘え、彼らがソウルに来る機会にお返しをしたり、日本に旅行に行ったときにお返しをしたりしています。実際、相棒の日本人編集者は、お世話になった人のお子さんが東京観光に来たとき、成田からホテルまで同行したり、浅草→上野→新宿観光のガイドを務めたりしました。

 

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江原道・道渓の焼肉店で酒を酌み交わした炭鉱夫のおじさんたち。後日、鉱山を見学させてもらった(仕事ですよ)

 

 韓国の飲食店取材はそれ自体がドラマや映画のようでとてもスリリングです。不案内な田舎町ではなおさらですね。どんなに飲んでも一定の緊張の糸は残しておかなくてはいけませんが、一度取材旅行に出て、しばらく執筆や編集作業でデスクワークが続くと、また旅に出たくなります。その繰り返しです。取材費の捻出や時間の確保など苦労も多いのですが、それでも幸せな仕事だとはっきりいえます。

 その結晶である最新作『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』が、10月21日に発売になります。よろしければ書店で手に取ってご覧ください。

 

 

*本連載の一部に新取材&書き下ろしを加えた、著者最新刊『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』が、10月21日に双葉社より発売されます。お楽しみに!

 

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『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』

定価:本体1200円+税

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「韓国!新発見」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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