編集部通信

美味しい野菜とは?静岡県三島市の箱根西麓三島野菜をレポート!

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三島市へは東京駅から新幹線で約50分。三島市は、直接海に面してはいないけれど、富士山と駿河湾を同時に望める恵まれた立地条件にあります。富士山の火山灰土が熟成された肥沃な土壌で育った野菜は、「箱根西麓三島野菜」として、その美味しさが高く評価されているとのこと。普段食べている野菜と、どう違うのだろう…? 
この地で採れる野菜の美味しさの秘密を知るために、ゆるやかな傾斜の畑にある農家を訪ねてみました。
 

 

就農もグループユニットの時代!?

 

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のうみんずのみなさん(メンバーは現在6人)。

 

  まず、話を聞かせて頂いたのは、期待の若手就農グループ「のうみんず」のみなさん。のうみんずは、JA三島函南青壮年部員の若手で結成され、「箱根西麓三島野菜」のPR活動や新品目の栽培に取り組んでいます。

―― のうみんずは、いつから活動しているのですか?
「正式に結成したのは2015年ですが、5年くらい前から、今のメンバーで活動を始めています。JAのなかで日常的に一緒にいるメンバーが、それぞれ作っていた野菜は違ったのですが、何か一緒に作ってみようという話になり、全員でミニ白菜「タイニーシュシュ」と「ロメインレタス」の共販出荷に取り組んだことで、活動が始まりました。タイニーシュシュは、柔らかい葉の部分が多く、生で食べても美味しいんです。そしてサイズが普通の白菜の半分くらいでお手ごろなので、今後もっとブレイクすると思っています」
――(人参ジュースがふるまわれ)この人参ジュース、甘くて美味しいですね。
「この畑の人参をしぼっただけなんですけどね。ジュースにすると甘みが良くわかるんです。昼夜の温度差によって、にんじんは甘みが強くなるので、1月2月の人参が最も甘みが強くなるんです。雨が降っても、火山灰土の傾斜地なので水はけがよく水がたまらない。非常に恵まれています。その代わり傾斜が20度のところもあり、大型の機械を入れにくいので、作業性は悪いんですけどね  笑」

 

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IMG_0875 上/結成のきっかけでもあったミニ白菜。中/絞りたての甘い人参ジュース。下/この辺りは水はけがいいので根菜類、人参畑として最適。

 

  先輩農家さんたちが築いてきたブランド「箱根西麓三島野菜」の伝統を受け継ぎ、これを日本一のブランド野菜にすることを目標と宣言しているのうみんずのみなさん。
  地元出身で実家が農家のメンバーも多いのですが、ほとんどのメンバーは他の職業からの転職組。一旦、よその世界を見たあと農業に取り組みはじめたからこそ、燃えたぎる熱い思いを抱いているのです。
  でも、だからといって、ぎらぎらした雰囲気はなく、明るいノリの気のいい兄ちゃん集団というイメージ。静岡という土地柄もあり、サッカーサークルのメンバーかと錯覚してしまいそうでした。のうみんずのメンバーは先輩たちからも可愛がられており、「仲間になりたい」と思い就農する若者も多いのでは、と思わされます。採れたて野菜のようなフレッシュなグループユニット。メンバーは固定しているわけではなく、活動に共感してもらえれば、新規加入も可能だといいます。現在は、地元中心で販売をしていますが、都心部のデパートに販売ブースを設けたり、マルシェに出店したりと販売エリアを拡大しているところです。
  後継者不足で困っている地域は多いですが、三島農家の未来は明るそうです。
 

 

 レタス作りのプロに教わる美味しいレタスの見分け方

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  二か所目に伺ったのは、のうみんずの先輩にあたる内藤さんの農園。レタスをメインに作っている内藤さんは「箱根西麓三島野菜」の大ベテランの作り手で、のうみんずのメンバーの何人かもかつては内藤さんのもとで修行していました。
   標高250メートルのとても景色のいい内藤さんのレタス畑で、箱根西麓三島野菜の概要と、美味しいレタスのポイントなどをうかがいました。
 インタビューに同席したのは、大学を卒業したばかりでまだ見習い中の初々しい息子さん。高校3年生のときに農業も進路の選択肢に入れて考えるようになり、春夏休みにお父さんを手伝っているうちに、就農を考えるようになったということです。大ベテランの農業者を父に持つ息子さん、大変だけど、頑張ってお父さんの跡を継ぎ、三島の美味しい野菜を作り続けてほしいものです。内藤さんが解説します。
「まず、この地域の野菜の概要を話しましょう。駿河湾がよく見える箱根の中腹にあるこの畑で、だいたい標高250メートルくらい。見た通り傾斜のきつい畑です。私が小さかった頃は根菜類、人参、大根、ごぼうなどを作っていましたが、今は多種多様なものを作るようになってきました。
 いまはレタスを作っています。出荷期間は10月の初めから6月の半ばまで。長い期間やっています。自分は6人のグループで年間30ヘクタールくらいを作っています。そのうち私が作るのは6ヘクタール分くらい。8月のお盆の時期から種まきをして10月になると収穫し始めます。50万株分の種を蒔いています。
 堆肥、肥料も有機のものを中心に使っています。それによって、食べた時に「甘み」を感じるようなレタスになるようにしています。このレタスは美味しいんで、春巻きにしたり、いろいろな食べ方ができますよ」
  いいレタスの見分け方は?と聞くと、「ふわっとしたのがいいレタス」と内藤さんはおっしゃいます。確かにこの場にある採れたてのレタスは、どれもふんわりとして瑞々しい。油断するとすぐに締まってしまうので、老化して重くならないベストのタイミングで収穫しなければならないのだとか。
  本当に美味しいものを消費者に届けるための、内藤さんたちの努力が、美味しいレタスとして結実しているのだと思いました。
 

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上/収穫前のレタス畑。中/ふわっとした採れたてのレタス。下/ ベテラン内藤さんと初々しい息子さん。 

 

 

甘くて濃い野菜の衝撃体験
 

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 次に訪れたのは、杉本正博さんが営む杉正農園。まずは、小松菜が栽培されているビニールハウスに通されました。20数種類のきれいにカットされた色とりどりの野菜たちが並べられています。
「どうぞ、好きなだけお皿に盛りつけてください」。
 杉本さんの言葉にしたがって、野菜を皿にとっていきます。「皇帝塩」というおすすめの塩だけが置かれており、それを少しつけて生のまま野菜を食べるのです。
 「見学者は時間が許す限り案内します。ただし1時間半以上の時間がないと私の言いたいことが伝わらないので、それ以下の時間しかとれないなら断っています」。
 厳しい発言に一瞬、緊張が走りましたが、おそるおそる野菜を口に入れてみるとすぐに違いがわかりました。少し塩をつけて食べただけなのに。小松菜、なす、大根、里芋のそれぞれが、甘くて濃厚な味わいで、ものすごいインパクトがあるのです。普段なにげなく食べていた野菜とはまるで別物…衝撃体験でした。
 
 杉正農園が、現在のような多種多様な品目を作り始めたのは、イタリアンの名店「マンジャペッシェ」と取引を始めたことがきっかけのようです。そして、杉本さんの生来の研究熱心さに火がつき、興味を持った野菜をどんどん取り入れるようになっていったということです。今では130種類もの野菜を作っているそうです。レストランのシェフもこれだけ豊富な野菜を扱えるのは、さぞ楽しいことでしょう。

 

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IMG_0933上3枚/多くの有名レストランも惚れ込む杉正農園の野菜。下/熱心に説明してくれる杉本さん。
 

 

 静岡県では、県内で栽培される高品質な農林水産物の中から特に優れたものを「しずおか食セレクション」に認定していますが、杉正農園の小松菜は、平成26年11月に、この「しずおか食セレクション」に認定されています。
 この小松菜はハウス栽培されているのですが、なんと7連作ということです。通常、連作は避け、行う場合は化学薬品による土壌消毒をすることが多いのですが、ここでは化学薬品は一切使わず、米ぬかと石灰窒素、太陽熱消毒という方法で土壌を消毒しているとか。
 杉本さんにお話を伺いました。
「これからの農業は消費者に理解されないと成り立たないというのが、僕の経営の理念です。それから、企業秘密をもたないということもモットーです。農家の行動範囲はすごく狭いものですから、やはり自分が胸襟を開いて情報を提供し、相手からも情報をもらうというのが僕の考えです。ここへは年間30件くらいの見学があります。1人から大型バス2台まで、僕の時間が合えば必ずお受けしています。お金はもらいません。うちも楽しいし」
 次に、たくさんの野菜が並ぶ露地に案内してもらいました。見慣れた春菊などにまじって、始めて見るきれいなイタリア野菜が色鮮やかに並んでいます。
 消費者が美味しい!と感動する野菜作りを追求する点においては、杉本さんほど研究熱心な人はなかなかいないのではないかと思いました。そして、その研究の末に知り得たノウハウを隠すことなく他の人々に伝える…杉本さんは、まさに農業の伝道師と呼べるほどのすごい人という印象でした。

 

 

地元の素材を堪能できるレストラン『ハートフルダイニング おんふらんす』
 

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  農園を見学した後は、ランチで三島駅近くにあるレストラン「おんふらんす」へ。
さきほど見てきた農園の野菜たちの素材を活かした美味しそうな料理の数々が出されます。シェフの田中さんがお話しします。
「私の場合は素材を見てメニューを決めるので、今日、ここに出したメニューも昨日きた野菜を見て考えたものです。農家さんや、JAさんの窓口、何軒かの農家さんにお願いしているのですが、うちの方から野菜を指定して注文したことはありません。農家さんがその時一番自信のあるもの、美味しいと思っているものを頂き、その野菜を見てメニューを考えるのです。基本的にはフランス料理ですが、和の技法を入れてみたり、いろいろな工夫をすることで、この三島の野菜の良さを出せればと思っています。農家さんの思いを伝えるために、野菜をPRできるような料理作りを心がけています」
 実際に食べてみると二色人参のグラッセが、すごく甘くて、美味しかったです。何か特別なものが入っているのかと聞いてみると、
「塩とバターしか入れてないです。三島の人参はもともと本当に甘いんです。包丁を入れると野菜の良さがすごくわかるのですが、切った瞬間に、人参の断面がぴかっと光るほどみずみずしいのです。また、光が出るのは糖分が高いということを示しているのだと思います。あまり煮すぎると香りが飛んでしまうので短時間で仕上げるようにしています」
 素材の良さを生かした料理の数々は、心にも身体にも良さそうです。
 


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三島の野菜や果物を使ったスイーツ店『クリーム・ド・クオーレ』

              

  ランチの後は、地元の野菜や果物を使った珍しいスイーツ店「クリーム・ド・クオーレ」へ。そこでジェラートやプリンを頂きました。「おさつ(三島甘藷)ジェラート」は焼き芋をジェラートにした低糖スイーツ。焼き芋にすると芋の甘みが一番引き出せるとか。実際に食べてみると、たしかに焼き芋の風味がして、素材の味を楽しめたのです。 

 

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上左/おさつのジェラート。上右/おさつのプリン(右)、くりーむぷりん(左・カラメルソース付)。下左/外観。下右/思わず惹かれる沼津産のみかんゼリーがたったの100円。

 

 

 

ご当地パン祭りで2種のパンが全国1位!

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 スイーツ店の後は、焼きたてパンの店『グルッペ』へ。『日本全国ご当地パン祭り』で第1位を受賞し、いまや三島を代表するご当地グルメの代表となった2つのパン「みしまコロッケぱん」と「みしまフルーティキャロット」はグルッペの石渡麗子さんの情熱によって生まれたもの。その裏話を聞いてみました。

「三島に嫁いできた私が、地産のものを使って三島のために何かできないかと思い、三島馬鈴薯(メイクイーン)で作ったのが冷めても美味しいコロッケ「みしまコロッケ」。実際に作って販売してみると、この商品が『みしまコロッケ総選挙』で1位を獲得しました。そして次に三島産の米を炊き上げてから小麦粉と合わせて練り込んで作る蒸しパンに特製ソースに絡めたみしまコロッケを挟んだこだわりの「みしまコロッケぱん」を作ったところ、なんと『日本全国ご当地パン祭り』で全国第一位を頂きました。
 もうひとつの看板商品は、「みしまフルーティキャロット」という三島人参をパンの生地やゼリーに使ったもの。これは以前、三島人参で作ったジュースを飲んだ時に「りんごとオレンジを入れてるんじゃないか」と疑うぐらい甘くて。この美味しい人参を使ったパンを絶対に作ってみようと決めたんです。袋のデザインも工夫し、パンそのものが人参に見えるようにこだわりました。このパンも『日本全国ご当地パン祭り』で第1位を受賞。ふたつとも、ぜひ皆さんに食べていただきたい」
 地産地消にこだわっていたら、2種のパンが全国1位になってしまうとは。両方とも、個性的で、もちろんとても美味しいです。
石渡さんのご当地パン、次は三島の何を用いて作ってくれるのか、楽しみです。

 

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上左/みしまコロッケぱん。上右/みしまフルーティキャロット、下左/外観。下右/三島のためにと、数々のヒット商品を作り出している石渡さん。

 

 

お土産買うなら「伊豆・村の駅」へ

 

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 三島の特産物が勢揃いしている「伊豆・村の駅」に足を運んでみました。先ほど見た三島の農作物やパンも販売されています。

 

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 広々とした店内は、地元の人も観光客も満足できる品揃え。

 

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上左/わさびコーナー。上右/ご当地ソーダがずらり。下左/のうみんずのミニ白菜発見。下右/グルッペのパンもこちらで販売されている。

 

 

箱根西麓は水耕栽培にも最適

 

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「伊豆・村の駅」内で販売されていた食材の中で目についたのがクレソン。たっぷり盛られたクレソン料理がテーブルに並べられた中、クレソン農家の青野陽子さんに、お話を伺いしました。 
  「もともとウチはトマト農家だったんですが、病気をきっかけにいろいろ調べてみると、どうやらクレソンがいいらしいということに。ならば、実際に自分で栽培してみたいと思いました。クレソンはわさび菜を育てるのと同じ条件の、水が冷たいほどいいクレソンができるんですね。箱根西麓から湧き出る水源は量も多く、水温も15度くらいでクレソン栽培に最適だったんです。実際クレソンを食べると、体質が変わり、あらゆる数値が違ってきたんです。」
  クレソンは肉料理の付け合せとして良く知られていますが、主役になり得る野菜で、肉に負けない風味の強さがあります。栄養価は、βカロチンが豊富に含まれている他、抗菌効果、血液酸化防止の効果もあり、カリウムやカルシウムも多く含んだ緑黄色野菜。
  クレソンの健康への影響を自身が体感した青野さんだからこそ、情熱を持って多くの人々へすすめられるのですね。
  試食で提供された料理もバリエーション豊か! 味はもちろんのこと、健康志向の高まりで、今後ますます注目されていく野菜になるでしょう。

 

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上/試食として差し出されたクレソンのサラダ、カルパッチョ添え。豪華なメインディッシュに。中左/クレソンのてんぷら。中右/クレソンのおひたし胡麻和え。下/店内のクレソンコーナー。青野さんのラベルもおしゃれ。

 

 

 慌ただしい取材でしたが、富士山と駿河湾に挟まれた三島という地域の素晴らしさ、そしてその地に育つ瑞々しい野菜の美味しさが、いまだに強烈な印象として残っています。
 最初は、三島の自然や風土が、こうした極上の野菜を作り出したのではないか、と単純に考えたのですが、実はそれだけではありませんでした。消費者に本当に美味しい野菜を食べてもらいたいという生産者たちの情熱と創意工夫、気の遠くなるような試行錯誤の繰り返しが、三島の気候風土と相まって、「美味しい野菜」として結実したと言うことに思い至ったのです。
 もし、この地を再訪することができたら、今回手に取ることができなかった他の旬の野菜もできるだけ多く食べてみたいと思いました!!
 

 

< 2019.03

 

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