編集部通信

神話の世界を体感できる花と古墳のまち・宮崎県西都市に行ってきました!(前編)

 古墳群空撮

 

 

 

宮崎県のほぼ中央に位置し、日本最大級の規模を誇る古墳群をもつ西都市。今回、その西都市で毎年11月の第1土曜日に行われる神話をもとにした幻想的な西都古墳まつりがあるということで、行ってみることにしました。
羽田空港から南国・宮崎ブーゲンビリア空港までは、飛行機で約1時間50分。搭乗してからたっぷり寝るつもりにしていましたが、思いのほか飛行時間は短く、あっという間に着いてしまいました。宮崎ブーゲンビリア空港から西都市までは車で約50分の道のりです。東京から約3時間で、300余基の古墳がいたるところにあり、いろいろな場所や市民の生活に神話が息づいた、今まで味わったことのない世界が広がるまちへ行けるのです。『TABILISTA』読者は旅の達人も多く、これまでに個性的な旅をしてきていると思いますが、そんな人たちでも、西都を訪れたのなら、新しい旅のバリエーションが増えるはずです。
「神話」と「古墳」が日常にあるまちとは…。今回は、西都に伝わる伝説も交えながら「神話の世界を体感できる花と古墳のまち西都市」の観光を、近日公開の後編では西都の食についてレポートさせて頂きます。


  

 四季折々に楽しめる西都原の花

西都市に入って最初に訪れた場所は、広大な西都原に拡がるコスモス畑。宮崎に着いてからの道中、ところどころで野生に咲くコスモスを見かけてはいましたが、ここ西都原に咲くコスモスは、約300万本もあるというから迫力は満点。青空の中、風に揺れるピンクのコスモス畑の中に立ってみると、とてつもなくリラックスした気分になり疲れもふっとんでいきました。ちなみにこの西都原の花畑、春は菜の花、夏はヒマワリ、秋はコスモスの三期作で毎シーズン植え替えられているとのこと。季節ごとに違う迫力ある花畑を楽しめるのです。
 

 

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_ ____西都原の花畑は三期作。上/取材時11月のコスモス畑。下/春は菜の花と桜が同時期に咲き、西都を代表する印象的な風景となっている。写真提供/西都市
 

 

広大な花畑に囲まれた「鬼の窟古墳」にまつわる伝説

ところで西都原のコスモス畑は、南九州最大級の復元された横穴式石室がある鬼の窟(おにのいわや)古墳の周りを取り囲んでいて、この古墳に由来した伝説があるということでした。

 

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西都原に住みついていた鬼が、山の神・オオヤマツミの美しい娘・コノハナサクヤヒメをお嫁にほしいと申し込みます。娘を鬼の嫁にするわけにはいかないオオヤマツミは、「一晩で岩屋を作りあげれば嫁にやろう」と難題を出しますが、鬼は要求通りに一晩で岩屋を完成させ、安心して居眠りをしてしまいます。そこへやってきたオオヤマツミは鬼が眠っている隙に石をひとつ抜き取ってしまいます。夜が明けて鬼が目覚めると完成したはずの岩屋の石が一枚抜けています。こうしてコノハノサクヤヒメと鬼の縁談は、なくなったということで、「鬼の窟古墳」という名前はこの伝説から由来しているのでした。(参考/西都市HP)
 

 

                          

 

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IMG_0524上/咲き乱れる西都原のコスモス。中/鬼の窟古墳の周りを取り囲む高さ5mほどの外堤。下/横から見た鬼の窟古墳。
 

この鬼の窟古墳の中にある石室の中には、気軽に入ることができるようになっています。石室の中は、思っていたよりも広く感じたのですが、古代からの伝説が息づくミステリアスな空間にいるのだと考えるとちょっとぞくっとしましたが、貴重な体験ができました!
 

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IMG_0533上/復元された横穴式石室。下/ミステリアスな石室の入り口は牧歌的!?

 

 圧倒的な見応えなのに入場料無料!「西都原古墳群博物館」

 

西都原考古博物館存在感抜群の外観。写真/西都市

 

西都では、今でも土を掘ると様々な出土品が出てくるということで、建築基準も相当厳しいらしく、市街地以外で高い建物を見かけることはほとんどありません。そんな西都でひときわ異彩を放っていたのが、西都原の台地に建つ重厚なモダン建築「西都原古墳群博物館」。外観も豪華で、建物に近づくにつれ、期待値が膨らんでいくのですが、これがまた期待を裏切らない中身なのです。なんとここでは、出土品に直接触れることもでき、点数も多く充実した内容なのに見学料が無料というのは驚きでした。古代人の生活ぶりをストーリー展開でイメージさせてくれる展示ぶりで丁寧に説明もされています。歴史マニアじゃなくても、興味をそそられ、土器や石斧、石包丁もたっぷり見られます。そして視覚障害者にも古墳の歴史を体感できるようにとの配慮がいたるところに見られるユニバーサルデザインで、2005年にディスプレイ産業特別賞を受賞しています。
また、西都原を見渡せる博物館内のカフェでは、「古墳丼」や500円のワンコインランチが人気とのことです。
展示内容、展示方法など、世界の有名博物館に引けを取らない内容にも関わらず、「入場料無料」とは、太っ腹過ぎると思いました。
 

 

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IMG_0818上/説明を読みながら古代へタイムスリップ。中/展示してあった石斧や石包丁にも触れられる。下/博物館のカフェから見る西都原。小さな古墳群がいくつも見える。
 

 

 秋に咲いていた季節外れの桜

ところで、11月だというのに夏の終わりのような暖かさだった西都市。西都原を移動中も、ところどころで桜が咲いているのを見かけました。西都が暖かすぎるのか、西都に不思議なパワーがあるのか、そのどちらとも言えるのか…。
 

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IMG_0777上/西都原の桜並木。下/秋空に映える桜の花。

 

 神話を辿る散歩道「記紀の道」

さて、今回の西都滞在の一番の目的は、西都古墳まつり初日に行われる「たいまつ行列」と「炎の祭典」の見学です(2日目は式典、御陵墓一般参拝、奉納行事など)。西都古墳まつりは、「現代の中に古代をめざして」をコンセプトに行われ、コノハナサクヤヒメが出産するときに、産屋に火を放ったという伝説にちなんで、毎年11月の第1土・日曜に開催されるお祭りです。土曜日の夜に参加者が古代の衣装をまとって行うたいまつ行列は圧巻で、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの結婚の儀を執り行った神社とされる「都萬神社(つまじんじゃ)」からスタートし、「日本書紀」や「古事記」などで、二人の出逢いの場などの言い伝えがあるのどかな「記紀の道」を通り抜け、コスモス畑の横を通り、御陵墓前広場へと向かいます。大人も子供も4キロほどの道を約1時間かけて歩いていくということです。

 

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IMG_0589上/古くから縁結びや安産祈願が絶えない都萬神社。中/ハート型の絵馬がびっしり。下/キュートな絵馬やお守りなどが充実。

 

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上/夕刻時の雰囲気が神話の世界観を呼び起こす逢初川に流れ出る児湯の池。中/記紀の道にあるニニギノミコトが水を汲みに来たコノハナサクヤヒメを見初めた場だと言われる逢初川。下/記紀の道や逢初川についての説明。

 

ところで、炎の祭典のコンセプトになっている「産屋に火を放って出産」って、どういうことだと思い、調べてみたところ、なかなかすごい神話が元だったのだと知りました。
 

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「炎に包まれた悲しみの出産」

「コノハナサクヤヒメ、あなたはたった一夜で子どもができたと言いますが、そんなはずはない。その子はきっとほかの国つ神(くにつかみ)の子だろう」
ニニギノミコトのこのひと言はコノハナサクヤヒメの心をとても傷つけました。
コノハナサクヤヒメは
「私はこれからお産の準備をします。もしあなたが言うとおり、生まれてくる子どもがほかの国つ神の子であるなら無事に生まれてはこないでしょう。しかし、あなたの子であるなら、たとえ火の中でもきっと無事に生まれてくることでしょう」
こう告げると、コノハナサクヤヒメは出口のない大きな産屋をつくらせました。そして中へ入ると、まわりを土で塗りふさいでこもってしまいました。
やがて出産の時が近づきました。
するとコノハナサクヤヒメは産屋のまわりにみずから火を放ったのです。そして、燃えさかる炎の中で三人の男の子が生まれました。
三人の名は、火が燃えさかる時に最初に生まれた子がホデリ(火照)。次に火の勢いがより強くなった時に生まれた子がホスセリ(火須勢理)。最後に火がおとろえてきた時に生まれた子どもがホオリ(火遠理)です。のちに、ホデリは海幸彦、ホオリは山幸彦と呼ばれるようになりました。
こうしてコノハナサクヤヒメは炎の中で無事に三人の子どもを生み、身の潔白は証明されたのですが、ニニギノミコトから疑われたことにひどく傷つき、それからもニニギノミコトに心を開くことはありませんでした。(西都市HPより)

 

 

 

なんという衝撃的な内容でしょう! 一時は、鬼の嫁になりそうだった危機を乗り越え(「鬼の窟古墳」での伝説)、ニニギノミコトに見初められ、恋に落ち、熱々のまま結婚し、愛する夫の子供を身ごもったけれども、その愛する夫から信じられない言葉を投げかけられ、身の潔白を表現するために、自ら火を放って出産に臨み、見事に3人の皇子を出産したとは。そして、その後、夫に心を開くことはなかったとは…!
コノハナサクヤヒメの潔癖な凛々しさに心打たれました。なんて、自分に正直な強い女性なのでしょう。神話の中で、伝説の美女と言い伝えられるコノハナサクヤヒメの美しさは、そういった芯の強さからくる輝きもあったのかもしれないと思いました。普段は明るく大らかだけれども、実は頑固なまでに自分の信念を貫く。人としても、絶対にカッコイイはずです。

 

 コノハナサクヤヒメの想いを炎で再現!

さて、18時を回るとたいまつ行列がスタートです。都萬神社では古代衣装を着た全国からの一般参加者総勢約570人がもつたいまつに次々と灯が点けられます。

 

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IMG_0651上/灯は慎重に優しく点けられていた。下/鳥居を出ると、約4キロの神聖な夜の散歩へ。昼間とは風景を一変させる公道。

 

 

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上/記紀の道の途中にある169段の石貫階段。中/たいまつ行列時、石貫階段を上ってくる参加者たち。遠くまで繋がる炎の行列は、儚くとても美しい。下/西都原のコスモス畑も妖しい美しさ。

 

途中の過酷な石段は、小さな子供たちも数を数えながら上がってきていました。大人でもギブアップしたくなりそうなのに…なんだか楽しそうに見えました。次にコスモス畑や鬼の窟古墳を横にしながら、ついにゴールの御陵墓前広場に入っていきます。炎がゆらめく中、オカリナ、五弦琴、太鼓などの古代演奏にあわせて出演者たちが踊り、神話を再現していきます。最初は、幸せなカップルの熱々な恋愛感情を思わせる和やかな雰囲気から、徐々に炎は激しくなり、裏切られ、怒りと哀しみでいっぱいになるコノハナサクヤヒメの感情を現しているようです。

 

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IMG_0718上/たいまつ行列のゴール、御陵墓前広場にて。中/偶然?容姿端麗な女性出演者たちが、しなやかに踊っています。下/こちらも、炎を手にした精悍な青年たちが、逞しく踊っていて、祭のハイライトシーン!
 

意外にも、たいまつ行列も炎の祭典も「炎」を扱っているまつりにも関わらず、荒々しさや危うさ、混乱を感じさせませんでした。3万人の参加者、出演者、観客がいますが、親子連れも多く誰もが安心して参加でき、また私たちのように、他の地域から来た参加者にも、優しく迎え入れてくれる雰囲気を感じました。

神話と歴史を今もリアルに感じられる西都市には、素晴らしい人間教育が根付いているのでしょう。
聞くところによると、西都市では「さいと学」として、小・中・高の学校教育の中に西都市固有の自然、環境、歴史、伝統、産業、生活等について学ぶ時間を設けているそうです。
それはとても大切なことなのだと思います。
この祭りが、その大切なことを伝える大きな力になり続けることを願ってやみません。

次回後編では、高品質な食材に溢れる西都市の「食」についてレポート致します!                       

 

<参考>

宮崎県西都市ホームページ

http://www.city.saito.lg.jp/


 

< 2018.11

 

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