台湾の人情食堂

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#20

初めての台湾で「!?」となる謎の料理7選

文・光瀬憲子    

 

 中華圏で10年以上過ごし、台湾のものを中心に様々な中華料理を食べ歩いた私だが、最初から何でも食べられたわけではない。台湾で暮らし始めた20歳の頃は、夜市の屋台や食堂で見かけるものすべてが不思議に思えて、いちいち驚いたものだ。

 見るからに美味しそうなものもあるが、元の食材がどんなものなのか想像がつかないものもある。だが、台湾に渡ったら、どんなに不思議な食べ物でも、臆せずにチャレンジしてみるのがいい。2口目、3口目から徐々に美味しく感じるものもある。そんな不思議食べ物をピックアップしてご紹介しよう。

肉圓(バーワン)

 おそらく摩訶不思議な台湾料理の代表格と言えるのではないか。名前もちょっと不思議だ。「バー」は台湾語で肉、「ワン」は丸いものを指す。北京語では肉圓(ロウユェン)と呼ぶ。ほとんどの夜市で見つけることができるが、北部と南部では作り方が違うので、見た目も違う。

 北部は手のひらサイズの半透明な丸い物体。味付けした豚ひき肉やタケノコを片栗粉の生地で包み、油で揚げて、ピンク色や茶色の甘口ソースをかけて食べる。半透明の皮は分厚く、弾力がある。箸で引っ張るくらいでは切れない。その弾力から、映画『千と千尋の神隠し』で豚に変わってしまう父親が食べていた得体の知れないプルプルした食べ物は肉圓ではないか? という説もある。中身は肉まんの具のようにしっかり味付けされているものが多く、皮と一緒に食べると美味。1つでかなりお腹いっぱいになる。

 南部では蒸しているので、生地に透明感はなく、白っぽいのだが、揚げたものよりもさっぱりしている。

 

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ぷるんとした食感の肉圓

碗粿(ワッゴエ)

 台南発祥の食べ物と言われていて、北部ではやや少なめ。「台南碗粿」として売られていることもある。名前のとおり、碗に入れて作られて、碗のまま食べる。米粉を使った練り物のなかに、味付けした豚肉、塩漬けにした卵の黄身、シイタケなどを入れて碗で蒸したもの。甘辛い醤油だれとニンニクペーストをかけて食べる。プリプリとした食感が楽しいし、形が大きなプリンに見えるので、私はどんな食べ物か説明に困ったときに「米粉プリン」と呼んでいる。

 中に具がたくさん入っているので普通はスプーンではなくフォークで食べるが、こだわりの強い店では竹のヘラのようなものを用意している。具沢山なほど人気が高い。台湾人なら、碗粿1つはおやつ感覚だが、けっこうお腹がふくれる。

 

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台湾の碗粿は竹ヘラで食べる

豬血糕(ズーシエガオ)

 かつて、イギリスの旅行サイトが行った「世界の不思議な料理ベスト10」でみごと第1位を獲得した、正真正銘、世界が認める不思議フードは豬血糕(ズーシエガオ)だ。その名のとおり、豚の血ともち米を固めてブロック状にして蒸したもの。血の部分が黒く、もち米部分が白いので、見た目はちょっとクランチチョコレートに似ている。鴨肉専門店では鴨血糕を扱う店がある。鴨のほうがややクセがなく、食べやすい。

 豬血糕は用途の多い食材だ。夜市ではおやつとして、そのまま串焼きにしたものにピーナッツの粉と香菜をたっぷりふりかけて食べ歩きができる。また、おでんの具としても人気。おでん汁の染みこんだ豬血糕は、もちもち食感とさっぱりとした風味がよくマッチしている。ちくわぶを食べる感覚に少し似ているだろうか。コンビニ各店で扱っている。

 

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おでん屋台の豬血糕(手前の皿中央)

豬血湯(ズーシエタン)

 豬血糕と同様にハードルが高いのが豬血だ。こちらも鴨の血で作ったものは鴨血(ヤーシエ)として人気。動物の血は放置するとそのまま固まる性質があるので、それを利用して豚の血を自然に固め、塩や水分を加えて軽く味付けをしただけのもの。中国本土では「血豆腐」と呼ばれるほど、豆腐に近い食感だが、さらに弾力があり、ゼリーにも似ている。

 スープの具材として使われることが多い。豬血湯はたっぷりの豚の血にザーサイやネギなどをプラスしたスープ。豚の血は辛いスープと相性がいいので、四川風の激辛スープにも必ず入っているアイテム。もちろん、栄養たっぷりなので特に女子にも人気。

 

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スープに入った豬血湯

四神湯(スーセンタン)

 台湾屋台料理の汁物のなかで不思議度が高い四神湯。名前が何とも神々しい。「四神」は4種類の漢方具材(山芋、蓮の実、ヨクイニン、ケンジツ)を意味する。これに加えて一番大事な具材、豚の小腸がプラスされる。スープは乳白色で、小腸のほのかな臭みと柔らかな漢方の香りが漂う。日本人にはあまり馴染みのない、不思議な香りだろう。

 最初はつかみどころのない、薄味のスープのような気がするのだが、2口、3口と食べるうちに旨味が広がり、やみつきになる人も多い。胃腸に優しいスープなので、夜市での食べ過ぎや、飲み過ぎて二日酔いになった日などに最適。

 

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漢方や豚の小腸が入った四神湯

愛玉(アイユー)

 夏の台湾夜市で遭遇率が高くなる愛玉ゼリー。一見すると普通のレモンゼリーのようにも見えるが、イチジクに似た愛玉という実のタネが原材料になっている。台湾中部、特に阿里山が原産地だ。愛玉の木に成る実は青っぽいが、これを開いて乾燥させ、小さなゴマ粒のようなタネを水で揉みしだく。すると、タネのゼラチン質が溶け出して水が固まるのだ。これを冷やせば愛玉ゼリーの出来上がり。ゼラチンも寒天も使っていない、100パーセント天然のゼリーとなる。レモン汁やシロップなどに入れていただくとさっぱりして、食べあるきの口直しにもなる。

 

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店頭に置かれた愛玉。食べるときは小皿に盛られる

焼仙草(サオシェンツァオ)

 温かい屋台スイーツ。見た目が真っ黒なので「!?」となるが、味も苦いのでスイーツとして分類すべきかどうか疑問。仙草という漢方の薬草を煮込んだスープで、最初は液状なのだが、時間が経つと固まってドロドロになる。温かい仙草スープに甘みを加え、芋圓(タロイモ団子)や地瓜圓(サツマイモ団子)を入れて食べる。

 甘みをプラスするとスイーツなのにほろ苦く、身体にいいことをしている感じがして、甘いものを食べる罪悪感は軽減されそうだ。解熱作用があるので夏は冷たいドリンクとしても人気。

 

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器の中の黒い部分が焼仙草

 

 

*本連載の一部も収録した著者最新刊『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』は、10月21日に双葉社より発売予定です。お楽しみに!

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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