究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#20

インスタ映えスポット「ワット・パクナム」をもっと楽しむには

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

「いいね!」が欲しいのもわかるけれど 

 この1年ほどだろうか。
 タイ・バンコクにある寺院ワット・パクナムが人気になっている。街を流れるチャオプラヤー河の西側、トンブリーという地区にある古刹だ。アユタヤ朝時代半ばの15世紀に建立されたといわれている歴史と権威ある寺院で、タイ人の参拝者が絶えない。
 そして日本人旅行者もひっきりなしなのだ。バンコク都心部やバックパッカーの多いカオサン通りからもややアクセスの悪い場所なのに、どうして人気なのかといえば、いわゆる「インスタ映え」スポットだから。
 境内にはプラ・マハー・チェディ・マハー・ラチャモンコンという純白の巨大な仏塔が建っているのだが、その最上階だ。仏舎利(釈迦の遺骨)が納められているという小さな塔が安置されているのだが、これを覆うドーム型の天井いっぱいに壮大な仏画が描かれている。まるで宇宙だ。天界に星々がちりばめられているようで、なるほど「仏教のプラネタリウム」と呼ばれているのも納得だ。座り込んで天井を見上げて、しばらく無心になりたくなる。
 しかし……その傍らで大騒ぎしている日本人旅行者に出会ってしまうかもしれない。スマホを掲げて仏画の写真を撮るくらいならまだしも、飛んだり跳ねたり、天井の絵巻をバックに躍動する自分を映そうとはしゃいでいる日本人がやたらに増えているのだ。
 ここはまず、寺院なのである。タイ人にとっては大事な祈りの空間であることを考えてほしいと思うのだ。マナーの悪い旅行者が増えていることはすでに日本のニュースでも報じられた。SNSでも問題視されているのだが、それでもまだ行儀の悪い日本人はちらほらいるようだ。

 

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宇宙を思わせるワット・パクナムの絵巻。撮影は自由だけど、お静かに

 

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タイの僧侶も思わずスマホを向ける仏画

 

 

実は楽しいトンブリー地区 

 せっかくタイでも知られた寺院に来ているのだから、仏塔だけではなくて本堂のほうものぞいてみてはどうだろう。高僧プラ・モンコン・テムニー師の坐像に対面して、熱心に祈るタイ人の姿を見るだろう。パーリ語(タイでもお経はインド系の言語であるパーリ語で唱えられる)の教育センターでもあリ、図書館なども併設されている。また尼さんもたくさん見る。(仏塔をのぞいて)観光客のいない、素のタイ寺院に触れることができるのだ。
 寺院は、例え一時的なSNS人気だろうと日本人が来ることを歓迎してくれており、日本語のパンフレットも用意している。広大な敷地内を見て回ってみよう。ついでに言うとネコがたくさんいるので好きな人にはたまらない。
 運河に面しているのも楽しい。緑豊かな庭からボートが行き交い、水上に張り出した木造家屋からは、洗濯したり食事の支度をする生活の姿が見える。
 この運河を渡って対岸にある寺院、ワット・クンチャンもけっこう面白い。寝釈迦をはじめとして巨大な仏像がいくつも建っており、バンコクの有名寺院にも負けない立派さなのだが、その口元が良い。にんまりと、いまにも吹き出しそうな豊かな表情なのだ。そのたもとにも、花や線香を捧げ、世間話をしている近所のおばちゃんたちがいる。
 そう、トンブリー地区はバンコクでも郊外で、ふつうのタイ人の生活エリアなのだ。観光地にはない、ナマの暮らしを垣間見ることができる。近くにあるタラート・プルー市場に行けば、昔ながらの商店や屋台が密集する、どこか懐かしい光景が広がる。
 そこから南下したところにある「ザ・モール・タープラ」はきわめて庶民的なデパートだ。遊びに来ている家族連れや友達同士のタイ人たちも、都心の高級モールとは違ってずいぶんくだけた感じだ。観光地や、外国人旅行者の多い場所にはない、素顔のタイがそこにはある。こうした場所では食事もまだまだ安い。ゲストハウスやホステル、airb&bの物件もそこそこあるので、トンブリーに泊まってしまうのも楽しいかもしれない。

 

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ワット・パクナムから運河にかかった橋を渡って対岸のワット・クンチャンへ。寝釈迦が出迎えてくれる

 

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なんだか嬉しそうな仏像たち。東南アジアの仏はどれも生き生きとしている

 

 

バスなら格安でワット・パクナムに行ける 

 さて、ワット・パクナムは都心からは少し距離がある。BTS(高架鉄道)タラート・プルー駅や、その隣のウッタカート駅から、ソンテウという小型トラックもしくはトゥクトゥクやバイクタクシーで住宅街の路地をすり抜け10分ほど。ソンテウは乗り合いのものをつかまえれば10バーツ(約35円)くらいだがチャーターだと高くなる。トゥクトゥクやバイクタクシーは30~50バーツ(約100~170円)くらい。駅から歩くと20分ほどだ。
 まだ4番バスの終点がワット・パクナムのすぐそばで、わかりやすい。このバスはクロントイ港を出発して、日本人にも人気の安宿「EZ STAY Bangkok」のそばを通過、それからルンピニー公園やシーロム通り、ホアランポーン駅など外国人旅行者にも知られた場所を通っていくので、つかまえやすいだろう。料金は8バーツ(約28円)~と格安だ。


*4番バスのルート図→https://komasan.net/bangkok-bus/en/4/ ラマ4世通りから中華街を通ってトンブリーに向かう

 

タイの寺は日本にもある 

 ところでワット・パクナムは、日本にもあるのだ。千葉県成田市のはずれ、畑や小さな工場が並ぶのどかな場所に、忽然とタイ寺院が現れるのである。なんだかシュールだ。
 こちらはトンブリー本院の「別院」となっている。日本にもたくさんのタイ人が住んでいるが、彼らが週末や仏日に訪れる憩いの場所となのだ。もちろんタイの僧侶が「駐在」しており、在日タイ人の心の拠り所となっている。
 本院の住職であるソムデット師が来日し、日本各地を回ったことを記念して建てられたのだとか。以降、本院からはたくさんのタイの僧侶がこの別院を訪れ、両国の仏教界交流の軸となっている。
 タイ正月や仏教のイベント時にはたくさんのタイ人がやってきて、成田の田舎が束の間タイになる。ふだんの日でもタイ人が出迎えてくれる。日本にいながらタイを感じられのだ。
 バックパッカー旅行を通してタイにハマる人は多い。日本のワット・パクナムもぜひ訪ねてほしいが、こちらはかなり行きにくい。JR・京成線の成田駅から千葉交通バス2番線でおよそ20分、吉岡新田の停留所から歩いてさらに4キロという道のりだ。タクシーか、レンタカー、自前のクルマがいいだろう。

 

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ワット・パクナム http://pakunamu.net ニンジン畑の向こうにそびえるタイ建築にはちょっとびっくり

 

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15年以上前に建てられたというワット・パクナム日本別院

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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