究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#19

新時代の「ホステル」を解剖する〈後編〉

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 アジアを中心に各地で急速にその数を増やしているホステル。ドミトリー中心の宿で、値段と環境のバランスの良さからバックパッカーに人気だ。前回はドミトリーの内容を紹介したが、今回は館内はどうなっているのか、見てみよう。

 

単なる宿ではなく、コミュニケーションの場 

 ホステルの大きな特徴のひとつは、コミュニティスペースが充実している点だろうか。
 1階部分がカフェになっていて、宿泊客だけでなく、地域の人々が集まる場所にもなっている。電源なども整ったコ・ワーキングスペースを兼ねているところもあり、ノマドバックパッカーがなにやら仕事をしている姿も見る。こじゃれた雑誌やらガイドブックやら写真集なんかが置かれていて、ロビーでインスタ映えする写真を撮りたくなっちゃうところもけっこうある。
 ときどき現地の人と宿泊客がお互いの言葉を教えあったりするホステルもあれば、地元の料理教室を開くところ、しょっちゅうスタッフと泊まり客とで飲み会をやっているところ、またスタッフによる街のショートツアーをやっていたり、マッチングアプリで気が会った同士が集まる場所になっていたり……人と人との交流を大事にしているホステルが多い印象だ。そのあたりは従来の安宿にもあった機能だが、最近のホステルはもっと洗練されている印象だ。
 単に泊まるだけでなく、そこでの「体験」「出会い」が重要なのだ。その思い出を誰もがSNSに投稿し、共有・拡散し、それを見たバックパッカーたちが「ここに泊まってみようか」とポチるのだ。
「いかに人が集まる箱をつくるか」が昨今の街づくりの世界的な流行のようになっているが、ホステルもその機能を担っている存在といえる。

 

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小さくてもこうしたスペースがあって、宿泊客だけでなく地域にも開かれているホステルが多い

 

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みんなでまったりスペースは昔からの安宿の伝統ともいえるが、ホステルはいちいち清潔で居心地がいい

 

 

きれいな水まわりと、充実の共有スペース 

 続いて館内設備を見てみよう。
 ホステルはドミトリーが基本であるから、いろいろなものが共有だ。とりわけ気になるのは水まわり。不特定多数の人が利用するのだから、できるだけきれいであってほしい。
 この点、新しいホステルほど掃除を大切にしている。マメに手をかけて快適な環境を維持している感じだ。洗面所に観葉植物があったりハンドソープの容器ひとつ見たってちょっとかわいかったり、このへん女子受けを相当に意識している。トイレも複数あってやはりきれい。そうでないホステルもあるが、そんなところは口コミ、SNSでどんどん淘汰されていく。
 水まわりといえば洗濯機常備の物件も。洗濯は有料でスタッフに頼むこともできるが、自分で洗って中庭なり屋上なりに干せば安上がりだし「旅という生活」に浸れて楽しいものだ。
 そしてコミュニティスペースには、やはり共用の冷蔵庫があって、水なり果物なり入れておくことができるし、こういう場所にはポットやら簡単な調理器具が置かれている。インスタントのコーヒーやお茶、トースト、バターとかジャム、カップ麺などもあって、宿泊客はご自由に、というスタイルだ。これで腹を満たしているバックパッカーもけっこういる。朝食やおやつくらいなら十分にまかなえそうだ。このあたりも考えると、宿泊料金はなかなか安いのかもしれない。
 さらに、きちんとしたレストランがあるホステルでは、ちょっとしたホテル並みの食事ができたりもする(ベッド代と同じくらいの出費になるかもしれないが)。しゃれたカウンターバー併設で、バックパッカー同士で一杯楽しめるホステルも多い。
 それと深夜になると、門の鍵がかかってしまう場合もある。そんなところでは宿自体の鍵を貸してくれるだろう。また宿の内部の、ドミトリー部屋にも鍵があって、二重に安全面に気を配っていたりする。

 

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サムイ島の某ホステルの洗面所。ドライヤーもある。この後ろがシャワーブースでそちらも清潔

 

 

ホステルはシングルも狙い目だ 

 ドミトリーがウリのホステルでも、たいてい個室を持っている。部屋数は少なく、宿によってはたったひとつしかなかったりもするが、シングルなりダブルなりも用意しているのだ。ファミリータイプの大部屋があるところも。
 で、この個室がどこもなかなか立派でコスパがいいのだ。広々とした部屋に、開放感のある大きな窓、ベランダからは見事な眺望を得られたりもする。こちらはタイのリゾート島を例に取ると、1000~1500バーツ(約3500~5200円)が最低ラインだろうか。仲間同士で旅しているならシェアできるし、たまにはいいかもしれない。快適な設備と、旅人同士の交流と、両方のいいとこ取りができるというわけだ。

 

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タイ・タオ島にあるホステルのダブルルーム、1500バーツ(約5200円)。ときどきはこんな部屋にも泊まりたい

 

 

ホステルによってドミトリーが復権した? 

 こうしたホステルが急増した理由はいくつかあるようだ。
 まず途上国と言われる国々も経済発展し、どんどん宿泊料金が上がっているという点。バンコクや香港、上海など、昔はたくさん安宿があった街も物価が上がり旅しづらくなっている。
 ホステルはそこを狙った。部屋を小さく区切ってドミトリーを主体にし、低価格を実現させた。空間あたりの客単価を、結果として上げることに成功しているのだ。どうしたって宿泊者ひとりあたりの空間とプライバシーは制限されるが、そこはホスピタリティと人同士の交流を打ち出すことでカバーする。
 さらに途上国でも生活レベルは上昇しているから、清潔感や設備なども先進国ともうあまり遜色はない。
 そして経営に関わっているのはおもに現地の若者だ。センスも磨かれていて、部屋のデザインやインテリアにも凝るようになっている。日本の若いバックパッカーもそれなりに快適に過ごせるだろう。
 10年くらい前だろうか。ドミトリーは敬遠され、どんどん姿を消した時期があった。汚い、危険、客層がひどい、ただ安いだけ……そんな宿にもう若いバックパッカーは泊まらないのだ。
 そこへ現れたのが新時代のホステルだったというわけだ。アジアを中心にどんどんと増殖し、「ドミトリー復権」の感すらある。「そこそこリーズナブル」「清潔でおしゃれ」「交流を大切にしている」それがキーワードだ。
 ただし欧米の若者ノリのところも多いので、そういう雰囲気が苦手な人は、ちょっとノゾいて様子を見てからのほうがいいかもしれない。

 

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海を間近に見るタイ・パンガン島の宿。個室もあるがドミトリーもたくさん用意されていてプールではしゃげる

 

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こちらはタイ・タオ島。ドミトリー中心の安ホステルなのにプール&バーまである

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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