京都で町家旅館はじめました

京都で町家旅館はじめました

#19

ぶらり散歩のすすめ

文・山田静

 

歩くのにいい碁盤の目

「京都の見どころは、もうだいたい巡りましたか?」

 たまに聞かれるのだが、

 ぜんっぜん。

 週のうち5日間は宿にこもりっきり。不規則にとる休日は寝るか締め切りに追われているかだ。観光地っぽいところに行くのは友人知人が来ているときか、取材だけ。そもそも、京都の見どころなんて多すぎてどこまでいってもクリアできる気がしない(し、「京都の見どころはだいたい行きましたよ!」なんて無邪気に言ったら京都人から「おやぁ、そうですかぁ……今度色々教えてくださいねぇ〈意訳:最近来たよそさんが、よくそんなこと言えますなあ〉」と氷のような目で見られること請け合いだ)。

 

 だがその一方、散歩にはよく行くようになった。暮らしてみて感じるが、京都は散歩の目的地には困らないし、碁盤の目のような道の構成は、「こっからここまで歩いた」という距離がつかみやすいので目標が立てやすく、歩くのに向いている。ほぼ真っ平らだし。

 最近ではなんとなく定番ルートもできてきた。

 私が暮らす「堀川五条(堀川通りと五条通りが交わるところ)」は、南側にある京都駅と北側の二条城とほぼ中間くらいに位置していて、どちらにも徒歩25分程度。

 南へ向かうルートは、京都駅西側にある梅小路公園が目的地。鉄道博物館や京都水族館がある大きな公園で、花見にもいい。暇と元気があれば京都駅反対側にある東寺に行き、門前の『東寺餅』で団子を買い食い。大宮通りの西本願寺の裏側にあるベーカリー『樋口金松堂』も好きなおやつスポットだ。

 

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梅小路公園は京都駅に発着する列車を間近で見られるので、鉄道ファンの子どもたちにも人気だ

 

 

定番ルート、三条通

 北側ルートとして最近よく行くのは三条会商店街。堀川五条から20分ほど北上すると三条通りと堀川通りが交わる「堀川三条」に出るが、そこを起点に千本通りと交わる「千本三条」まで西に800メートルほど続くアーケードの商店街が三条会商店街。大正3年からスタートしたというこの商店街、公式HPによれば当時は周囲のほとんどが田畑で、夜には嵐山や太秦の灯も望めたという。

 ここが好きなのは、昭和っぽさ漂う総菜店、果物店、定食屋など昔ながらの商店街の合間合間に、居心地のいいカフェや喫茶店、そして個性的な雑貨店や古着屋が点在し、歩いていて楽しいからだ。

 カフェでよく行くのは、たまに仕事場としても使っている『さらさ3』や『kamee coffee』。コーヒーがおいしいのはもちろん、広々とした空間、木の温かみを生かした落ち着いた雰囲気のインテリアがくつろげる。『さらさ3』に隣接する焼き菓子工房のグラノーラも好物だ。

 老舗から話題のショップまで、おやつスポットが充実しているのもポイントが高い。祇園ちご餅で知られる『若狭屋』からはじまって、白味噌や湯葉など珍しい素材のジェラートも並ぶ『プレマルシェ ジェラテリア』、賞味期限10分のモンブランが有名な『菓子工房&sweets cafe KYOTO KEIZO』、さらに焼肉の超有名店『弘』(本店はこの三条会商店街にある)が営む精肉店『ミートショップ ヒロ』は焼肉弁当やコロッケも販売しており、ついつい立ち寄ってしまう。

 食事だと、『玉屋』が好きだ。中華そば、焼きそば、だし巻定食などがメニューに並ぶ典型的な昭和スタイルの食堂だ。ご近所の常連さんに混じって「レトロジャパン」を求めてきた外国人客が多いのはいかにも京都だ。

 

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三条会商店街。人もそれほど多くないが寂れているわけでもない、この感じが歩きやすい

 

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祇園祭発祥の地といわれる又旅社。869年、京都に疫病が流行ったとき鉾をたてて祈祷をしたのが祇園祭のはじまりだが、その斎場の地なのだとか

 

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『さらさ3』と焼菓子工房。ピザやパスタも美味。四条河原町や西院にも店舗がある

 

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『kamee coffee』の2階。広い店内にいろいろなタイプの席があって、ぼっち読書や仕事にもいい。スイーツも充実

 

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『プレマルシェ ジェラテリア』。和風味のジェラートが食べられるとあって、外国人客も多い

 

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『玉屋』のかやくにゅうめん。やさしい味に癒やされる

 

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『玉屋』名物のパンダ大判焼。訪れた日は残念、売り切れでした

 

 いっぽう、同じ三条通りでも、ぐっとおしゃれな散歩が楽しめるのが(三条会の皆さんすいません)、三条室町から三条寺町(寺町京極商店街)あたりまで。周辺には明治以降に建てられた多くの洋風建築が残り、現在はショップや博物館などさまざまな形で再利用されている。

人気のイノダコーヒーの本店もこの近くだし、当館でも以前仕入れていたハチミツ専門店『miel mie』や素敵ショコラショップ『ショコラ ベルアメール京都別邸』なんかもある。ツーリスト価格のお店が多く気軽に買い食い、衝動買いができないのはちとつらいが、眺めて歩くだけでも楽しい。そのまままっすぐ東に行けば寺町京極の商店街で京都っぽいお土産を買うのにもよく、当館に来てくれる女子旅のゲストに、歩くのにおすすめの場所を聞かれたときに、この界隈を何度か紹介した。

 

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かつては銀行だった煉瓦造りのSACRAビル。現在はファッションビルになっている

 

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登録有形文化財にも指定されている家邊徳時計店。明治四年創業

 

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たぶん日本一かっこいい店舗の『Paul Smith』。ほかにもこの通りには有名ブランドショップが風情あるたたずまいに溶け込んでいて、一見の価値がある

 

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『miel mie』は量り売り、試食もOKで品揃え豊富。『金市商店』という昭和5年創業の京都の蜂蜜製造・卸販売会社が営んでいる

 

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ここは日本のバスケットボール発祥の地らしい。京都にはそこらじゅうに発祥の地碑がある

 

 

京都のオールドタウンはどこか

 1000年を越える歴史がレイヤーになっているだけに、京都は歩いているだけで多くの発見があるし、はっと目を奪われる美しさもそこかしこに潜んでいる。なので徒歩や自転車など、道ばたの風景が目に入る形で観光をするのはとってもおすすめだ。

 といって、

「京都のオールドタウンを歩きたいんだけど、どこがいいかな?」

 はじめて日本に来た外国人ゲストに聞かれて、

「サンジョーカイショウテンガイがいいですよ」

 とはやっぱり言わない。言えない。

「今夜行くならポントチョーがいいでしょう。タカセリバーサイドなど歩くのをおすすめします。素敵なリバーサイドレストランやバーがライトアップされているのを見ることができます」

 こちらがたぶん正解……ですよね? 

 


 

*町家旅館「京町家 楽遊 堀川五条」ホームページ→http://luckyou-kyoto.com/

*宿の最新情報はこちら→https://www.facebook.com/luck.you.kyoto/

 

 

 

*本連載は毎月20日に配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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山田 静(やまだ しずか)

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』『成功する海外ボランティア』など企画・編著書多数。2016年6月開業の京都の町家旅館「京町家 楽遊 堀川五条」の運営も担当。

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