究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#18

新時代の「ホステル」を解剖する〈前編〉

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 比較的安く泊まれて、旅人のコミュニティ・スペースともなっている「ホステル」がこのところ人気だ。ドミトリーが基本で、シャワーなども共用だが、とにかくおしゃれで清潔、そしてなにより宿泊者同士の交流を促すつくりになっている。そんなホステルを詳しくチェックしていこう。

 

アジア各地で増殖している存在 

 この数年、とくにアジアの街を歩いていると目につくものがある。それが「ホステル」だ。英語で「Hostel」なんて看板を掲げているから、外国人旅行者相手なのだろう。大都市だとかなりの頻度で、しかもあちこちで見る。もちろん格安の宿泊施設のことである。
 例えばタイだったらバンコクのカオサン通りとか、ベトナム・ホーチミンのデタムエリアといった「安宿街」「ホテル密集地」だけでなく、街の各所にホステルはある。それこそ場所を選ばずといった勢いで増殖しているように見える。
 その軒先をのぞいてみれば、バックパッカーらしき欧米人がくつろいでいたりする。1階部分がカフェになっているホステルも多いようだ。それになんといっても内装がおしゃれである。けっこう値段が張るのだろうか……。
 このホステルとはいかなる存在なのか。バックパッカーの基地たりうるのか。タイを中心に各地のホステルを訪ね歩いてみた。

 

01
タイ・プーケットにあるホステルのロビー。安宿とは思えない。このスペースではコーヒーなどがフリー

 

「進化したドミトリー」の設備とは 

 ホステル最大の特徴は、ドミトリーが基本という点ではないだろうか。そうでない個室中心のホステルもあるが、やはりドミをメインに据えているところが多いように思うのだ。
 その点、従来の「ゲストハウス」「ユースホステル」と、どう違うのか? といえば明確な差異はないし、境界も垣根もなくあいまいなのだが、近年あちこちで大流行しているホステルは「清潔さ」「おしゃれさ」を前面に押し出しているドミトリーということだ。
 例えばタイ・タオ島で欧米人バックパッカーが大挙している「ディアリー・ホステル」は、見た目もロビーもほとんどリゾートホテルのようなんである。高い天井、ゆったりとしていて豊かに緑が配されたつくり、掃除の行き届いた館内、海を望む屋上のコミュニティスペース、プールだってある。
 都市部でスペースに余裕がなく、狭い雑居ビルを改装しているホステルもよく見るが、こういう物件でもウッディにまとめられていたり、アジア各地の雑貨がところどころにアクセントを与えていたり、季節の花々が飾られていたりして、オーナーのこだわりというか、ホスピタリティを感じるのだ。
 そして出迎えてくれるのは、笑顔まぶしい若いスタッフだ。大きなホステルだと揃いのTシャツなんか着ちゃって、どの国のホステルでもだいたい、そこらの日本人旅行者よりはるかに英語が達者だ。彼らはきっと館内をガイドのように案内してくれるだろう。
 ドミトリーはホステルにもよるが、少なくて4人部屋、多いと10人部屋くらいだろうか。
 で、2段ベッドが並んでいる様子はよくあるドミトリーの風景なんだけど、とっても清潔なのが印象的。さっぱりと、そして機能的にまとめられている。
 ベッドは身体の大きな欧米人でもゆったり横たわれるサイズだ。枕のあたりに充電用のコンセントやUSBポートが設置されていたり、スマホなどを置ける小さな棚があったりもする。さらに個人用の鍵つきロッカーはどこのホステルでも常備していて、最低設備のひとつになっている。個人用の照明も定番で、夜間でもまわりを気にせずに本を読んだりスマホを使ったりと役に立つ。もちろんエアコンとWifiは完備。
 またベッドをすっぽりと覆うカーテンが取りつけられていて、着替えのときや寝るときなどプライバシーを確保できるところも多い。
 それにどこも、女性用の部屋が常備されている。男女混合の「ミックスドミ」もあるが、ホステルと名乗っている施設ならたいてい、最低でもひと部屋は女性専用になっているはずだ。
 こんな感じなので「安宿での雑魚寝」という感覚ではなく、けっこう快適に過ごせる。日本のカプセルホテルよりも環境は良かったたりするかもしれない(さすがに個人用テレビは見たことがないが)。
 いわばホステルは「進化したドミトリー」なのだ。
 従来、ドミをウリにしている安宿といえば、まさしく「安かろう、悪かろう」の世界だった。ほとんど雑居房のごとき様相で、エアコンはなく、隣とぴったりくっついたベッド、不潔で湿ったシーツ、セキュリティーもプライバシーも皆無、ときに盗難が発生し、男女混合が当たり前……そんな「古き良き(?)」宿もまだまだ生き残ってはいるが、いまの主流派はおしゃれドミを擁したホステルなのだ。

 

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ベッドひとつひとつにロッカーや電源があるのは当たり前。ベッド同士も離して、少しでもプライベート空間を確保しようとしている

 

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プール完備のホステルだっていまでは多い

 

 

1泊1000~2000円が相場か 

 気になる料金だが、昔ながらのボロ宿ドミとは違うのでやや高い。タイを例に取ると、1ベッド300~500バーツ(約1050~1700円)といったところ。ひと部屋あたりのベッド数が少ないほど高くなる傾向にある。
 もちろんネット予約が前提となっているホステルがほとんど。飛び込みでもいいが人気の宿は空いていないこともある。
 設備の良さと値段とのバランス。そのコストパフォーマンスに優れているから、安宿街などにこだわらずに展開できているのだろう。Airb&bなどと同様に、バックパッカーたちの宿泊スタイルを大きく変えていく存在なのかもしれない。
 さて次回では、そんなホステルの館内設備や機能を見てみよう。

 

04
タイ・サムイ島の小さなビーチにぽつんと立つホステル。すべて木造りで、若者が集まるカフェでもある

 

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こちらもサムイ島。これで350バーツ(約1200円)。コーヒーやパンなど簡単な朝食つき

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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