京都で町家旅館はじめました

京都で町家旅館はじめました

#17

冬の京都は旅しごろ

文・山田静

 

京風雑煮はどんな味

 あけましておめでとうございます!

 昨年同様、当館の年越しはカウントダウンもなく、ゲストの多くは外出してるか部屋に戻っていて、ロビーはしーんとしたまま。夜勤スタッフと世間話をしているうちに、ふと時計を見て、

「あっ12時」

「あっ年越し」

「あっ」「あっ」

「おめでとう」

「ございます」

「イェーイ★」

 取り急ぎハイタッチなどしてみても、しーん。

 昨年に引き続き年越し蕎麦代わりのカップ麵を用意してみたものの、こちらもそれほど需要がありそうもない(年中腹ぺこの若手スタッフ陣には超絶需要があった)。12時すぎたら外出中のゲストも続々と帰ってきてすぐ部屋に入り、今年も年越しの夜は静かに淡々と過ぎていった。

 京都の観光はハードなだけに、宿屋としては「安心・安全に、静かにゆっくり休める場所」でありたいといろいろ心がけているわけで、まあ、ゆっくり休んでいただけてるのは狙い通りといえなくもない。けれども、なにかお正月っぽいこともしてみたい。昨年はミニおせちを用意したが、数の子も黒豆もなますも外国人には未体験ゾーンの色・食感・味で、ハードルが高かったように見えた。じゃあやめるか、というのも寂しいし、お正月は朝食パンを仕入れている「まるき製パン」もお休みなので、食卓になにか特別な感じを出したい。できればあったかいものがいい。

 で、今年のチャレンジは大胆不敵にも「京風雑煮を手作りしてみよう」。

 どんな雑煮を食べていたか、というのはこの季節の定番の話題だが、山梨県人の私にとって雑煮とはニンジン、ダイコン、三つ葉と鶏肉、四角い餅が入った醤油風味のすまし汁(山梨でも地方によって違うが)。京風雑煮というのは食べたことはあるが「味噌味で甘い」という記憶が全てだ。

 12月も下旬に入ったころ、レシピや動画サイトをあれこれと検索し、「京風雑煮」の試作をしてみた。

 丸いお餅、金時ニンジン、ダイコン、白味噌、柚子でまずはレシピに従って作ってみると、

「白味噌の量、ほんとにこれであってる……?」

 と二度見するほど、どのレシピも味噌がたんまり入る。おいしいけれども、甘い。これが正解なのか分からない。

 お餅も難題だ。朝食時間は7時半から10時で予約不要のバイキング。この間に不規則に現れるゲストのために、常にお餅をベストの状態にして、かつすみやかに提供するにはどうすればいいか。煮たり焼いたり電子レンジでチンしたりあれこれ試したあげく、

1.軽くチンして柔らかくする

2.トースターで焦げ目をつけて置いておく

3.ゲストが現れたらスープに入れて少し煮る

 この方式にたどりついた。ここに至るまでにトースターの中で餅が燃えたり爆発したり柔らかくしすぎて煮とけたりしたことは社外秘である。

 そんなこんなでできあがったものの、

「おいしい……ねえ、これで合ってる……?」

「おいしいです。けど分からないですね」

 なにせ、試作したのが山梨県人(京風雑煮をつくったことない)と台湾人(京風雑煮を食べたことがない)、最初に試食したのが香港人(「お雑煮」という料理を知らない)。さらに次のシフトで現れたのが宮城県出身者と茨城県出身者で、

「うちは醤油味でした」

「こんな味なんですね。へえ」

 とまるっきり頼りにならない。途方にくれるうち、ようやく京都人のスタッフが現れ、

「わあ、お母さんの味です」

 笑顔で太鼓判を押してくれたのでようやくひと安心。さらに改良を重ねて、三が日は京風雑煮が朝食のテーブルに登場し、特に日本人ゲストには喜んでいただけた……と、思う。たぶん。

 が、しかし。外国人ゲストにとってお餅の食感は謎だったようで、食べられないまま残す人も目立った。

 むむむ、季節感の演出もなかなかに難しい。正月の試行錯誤、来年にまた持ち越しである。

 ちなみに台湾人スタッフは長年「お雑煮」が謎だったので、来日して謎がとけてうれしかったという。

「子どものとき『ちびまる子ちゃん』で見ていましたが、どんな味なのか分からなかったです。台湾ではお餅は甘くして食べますから」

 なるほどそこからか。

 というわけで、お雑煮ひとつでも大騒ぎの新米旅館なのだった。

 

 

冬の旅ならいつ行く?

 さて、お正月を挟んだ京都の冬は、いわゆる閑散期に入る。紅葉の時期の恐るべき人出がさあああーっ、と引いて静かになる様はちょっと驚くほどだ。

 ただしこの季節は、個人的には京都を旅するのに悪くない時期だと思っている。宿代は紅葉のピーク時期の半額くらいになる日もあるし(申し訳ないです……!)、どこに行っても空いている。予約が難しい有名料理店も、当日席がとれて、電話したこっちが驚いたり。

 冬の旅行で特におすすめなのは紅葉が終わってすぐ、12月中旬くらいとお正月明けで春節前の1月中旬だろうか。

 京都の紅葉は山から平地まで見どころが広く散らばっているので、比較的長いこと楽しめる。一般的な見ごろは11月半ばすぎから12月頭ごろだが、11月中旬に入ると山のほうでは木々が色づき始めるし、12月も10日くらいまでは一部残っている。特に12月中旬は、嵐山で「花灯路」とよばれるライトアップが行われるのもポイントが高い。灯りに浮かび上がる渡月橋や竹林はフォトジェニックで、レストランやショップもライトアップにあわせて営業を延長しているので夜の散索にいい。今年は12月8日から17日の10日間開催された。

 1月に入り、正月の行事が一段落すると恒例の「京の冬の旅」キャンペーンがはじまり、3月まで特別拝観が各所で行われる(京都の観光振興政策のこの計算っぷり……!)。妙心寺の三門や「萩の寺」こと常林寺など、ふだん見られないところを人出も少ないなかでゆっくりと見られるのは冬の旅ならではだ。21日には東寺の初弘法、25日には北野天満宮の初天神と年明け最初の大きな縁日もあり、どうしてどうして、1月の京都は見るものが多い。人が少ないところでじっくり巡りたい、というならば、2月の春節や観梅の季節の前までがいいタイミングだろう。

 噂に聞く京都の寒さに恐れをなす人も多いかもしれないが、きんと冷えた空気のなか、静けさに包まれた名刹や庭園巡りも悪くない。お汁粉やうどん、ラーメン、鍋などあったかい食べ物が美味しいのもこの時期ならではだ。

 京都に限らず、人気の観光地を訪れるのはピークの前後が狙いめだ。ってことで、楽遊も管理人室前にホッカイロ(これがまた外国人に用途を理解させるのが難しいのだが、そんな話はまた今度!)を山積みして冬の京都でお待ちしてます♡

 

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京都のクリスマスも風情がある。東山にあるかつての迎賓館『長楽館』は控えめなライトアップが映える。中のカフェにはクラシカルな内装が素敵な7つの異なる部屋がある

 

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紅葉や桜の時期には人でいっぱいの哲学の道も、時期を少しずらすとこの静けさ

 

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嵐山「花灯路」は竹林の小径をはじめ周辺寺院や庭園のライトアップ、屋形船の運行などさまざなまプログラムが用意される。嵐山駅の色とりどりの友禅が並ぶ「光の林」も人気撮影スポット

 

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楽遊のクリスマスケーキ(?)として、『亀屋良長』のかわいすぎる生菓子を皆さんに。和菓子ってすごい

 

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年越しそば・うどん。もちろん「西日本」味です

 

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新年の下鴨神社には巨大な犬絵馬。いかにも御利益ありそうだ

 

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参拝が終わったらこれは外せない、加茂みたらし茶屋のおだんご。下鴨神社のみたらし池の水玉をかたどったそう

 

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よろよろと試行錯誤を続けながらもなんとか新年。今年もよろしくお願いいたします!


 

*町家旅館「京町家 楽遊 堀川五条」ホームページ→http://luckyou-kyoto.com/

*宿の最新情報はこちら→https://www.facebook.com/luck.you.kyoto/

 

 

 

*本連載は毎月20日に配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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山田 静(やまだ しずか)

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』『成功する海外ボランティア』など企画・編著書多数。2016年6月開業の京都の町家旅館「京町家 楽遊 堀川五条」の運営も担当。

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