台湾の人情食堂

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#16

夏本番、涼を呼ぶ伝統スイーツの世界

文・光瀬憲子   

 

 

 夜市の屋台料理に舌鼓を打ち、胡椒餅や生春巻きを片手に歩くのは台湾旅行の最大の楽しみだが、私がそれと同じくらい楽しみにしていることがある。スイーツだ。台湾には実にさまざまなスイーツが女子においでおいでをしている。いや、よく見ると甘党なのは女子だけではない。伝統スイーツの店には男子、それも中高年の男性が新聞を広げたり、スマホをいじったりしながら、目の前の大きなかき氷を掘っている。

 今や台湾のアイコンとなったマンゴーかき氷はもちろんだが、今回はもう少しディープな台湾伝統スイーツをご紹介しよう。

トッピングさまざま、剉冰(かき氷)

 まずは剉冰(ツォビン)と呼ばれるかき氷。いわゆる日本のかき氷と同じで水を凍らせた氷を細かく削ったものだが、台湾のものはトッピングがバラエティー豊かなので、食べ方によっては甘くしたり、ヘルシーにしたり、さっぱりさせたりして楽しめる。もちろん、夏場に多く出回るマンゴーをのせればマンゴーかき氷になる。

 剉冰には八寶氷(バーバオビン)というミックスかき氷があり、たいてい4~8種類のトッピングを店頭で選んでのせてもらう。列に並ぶ前にウィンドウで選んでおいて、注文するときはサッと指をさすといい。台湾ならではのタロイモの甘煮はおすすめ。お腹にたまるしヘルシーだ。逆に白玉団子は氷の上ですぐに硬くなってしまうのでそのつもりで。

 

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タロイモ、小豆など4種をトッピングした剉冰

 

 ここでかき氷のトッピング群について細かく説明しておく。前出のタロイモの甘煮は紫色でゴツゴツした大きなかたまり。それに近い黄色いかたまりがあったらサツマイモの甘煮だ。そして、紫と黄色の2色の小さな団子は九份名物でもある芋圓と地瓜圓(タロイモ団子とサツマイモ団子)。弾力のある食感と主張し過ぎないほのかな甘味があり、かき氷以外のトッピングにも使われている。さらに黒くて丸い粒や白くて丸い粒はタピオカだ。それ自体はあまり味がないが、モチモチした歯ごたえがある。

 豆類は小さな深緑色をした緑豆、日本でもおなじみの小豆、金時豆などがある。いずれも日本の煮豆より甘さ控えめ。さらにコリコリとした歯ごたえの白きくらげや、美容効果の高い蓮の実の甘煮など、日本ではあまりお目にかかれない素材が並んでいるので、「これはなんだろう?」と思ったらチャレンジしてみてもいいだろう。

 

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かき氷屋台。好きなトッピング材を選ぶ

南部に行くほど充実するフルーツ

 高雄や台南などの南部の都市へ行くと、剉冰のトッピングは断然フルーツが多くなる。甘味処ではなくフルーツスタンドや果物店で剉冰を扱っており、新鮮なフルーツをザクザク切って、練乳やシロップをかけていただくのが南部流だ。

 

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台湾南部、高雄で食べたフルーツのせ剉冰

 

 フルーツスタンドはもちろん台北など北部の都市にもある。目立つのはフルーツジュース。せっかく果物が豊富な台湾を訪れているのだから、タピオカミルクティーだけではなく、他のフルーツドリンクにもチャレンジしてみよう。

 私のイチオシは酪梨牛奶(アボカドミルク)。日本でもおなじみ、あのアボカドを使ったミルクシェークである。アボカドは野菜だと言う人も多いだろうが、ミルクシェークにすると青臭さがすっかり消えて、濃厚でまろやかな飲み物になる。またパパイヤミルクも不朽の人気ドリンクだ。パパイヤの臭みが苦手な人でもミルクシェークになっていれば無理なく飲める。

解熱作用のある緑豆シェーク

 さらにワンランク上の台湾通におすすめしたいのは綠豆沙(緑豆シェーク)。緑豆は日本ではモヤシの元となることが多いが、緑豆自体を食べることは少ない。台湾ではこの緑豆を甘く煮詰めて冬は温かい汁粉風に、夏場はミルクと混ぜてシェークにする。緑豆には解熱作用があるため、暑い夏には欠かせない漢方食品でもある。

 解熱作用といえば、もうひとつ。「良薬口に苦し」の最たる例、「仙草(シェンツァオ)」がある。台湾のスイーツのなかには、同じ物を夏場は冷たく、冬場は温かくして食べるものが多い。緑豆もその例だ。仙草は漢方の薬草で、これを煮込んだスープは真っ黒でかなり苦い。いかにも身体によさそうだが、そのまま飲むのはちょっと難しい。夏の仙草は、そんな苦くて黒い薬草スープに甘味をプラスしてゼリーにしている。よく冷えた仙草ゼリーに、かき氷のように、タロイモ団子やタピオカなどのモチモチスイーツをプラスし、シロップをかけていただく。甘味の中にも大人な苦味を含んでおり、ほてった身体を芯から冷やしてくれる夏の必需品だ。

 

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手前の黒いゼリー状のものが仙草。左上は抹茶ゼリー

見た目も涼しげな愛玉ゼリー

 さらに夏の夜市をぶらりと歩いていると必ず遭遇するのが愛玉(アイユー)というさっぱりしたゼリー。黄色いプルンとしたゼリーは完全に天然のもの。イチジクに似た愛玉という果物を乾燥させ、その種を揉みしだいてできるゼリーで、阿里山など山岳部が原産地。台湾先住民の重要な産業にもなっている。愛玉ゼリー自体には味がないので、これにシロップやレモン汁などかけて出てくる。

 

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皿に盛られる前、かたまりの状態の愛玉ゼリー

つぶつぶのデザートは上品な甘さ

 さらにちょっと上級者向けのスイーツがある。どこででも見かけるものではないが、高級レストランのデザートなどに出てくる「西米露」(シーミールー)だ。ココナッツ味のミルクのなかに、澱粉でできた小さくて透明な粒が入ったスープのようなスイーツ。台北市内には人気の西米露専門店があり、ここではココナッツミルクとタロイモ・サツマイモ団子をプラス。宮廷料理を思わせる上品な甘味は男女ともに人気だ。

 

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サゴヤシという木から採取した澱粉を粒状にした西米露

筆者イチオシの豆乳プリン

 そして台湾スイーツの密かな王道、豆花。台湾伝統スイーツのなかで私が一番好きなのがこれだ。豆花はいわば豆乳プリン。スプーンですくうとホロリとくずれるほどやわらかく、ゼリーよりもはかない。ほんのりと香る大豆が、豆腐文化になじみのある日本人をホッと落ち着かせてくれる。

 豆花も冬は温かく、夏は冷たくして食べる。夏の豆花はシロップや粗めのかき氷と一緒に碗に入れて、お好みでトッピングをして食べる。豆花にぴったりなのは茹でピーナツのトッピング。白く、柔らかく煮込まれたピーナツと優しい甘さの豆花は、初めて食べても時代をさかのぼったような懐かしい味がする。

 

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玉子豆腐のように見えるものが豆花

 

 台湾食べ歩きの旅では、食事のあとに伝統スイーツで涼をとってほしい。いよいよ夏本番、これからが最高のシーズンだ。

 

 

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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