究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

#16

ロシア・ウラジオストク旅行術〈2〉現地でのオリエンテーション

文と写真・来生杏太郎

 いま新しいディスティネーションとして注目されているロシア・ウラジオストク。ビザ取得要件が緩和されたことで「日本から2時間で行けるヨーロッパ」としてにわかに人気になっているのだ。そんなウラジオストクをどう旅するのか、ノウハウを紹介する。

 

空港から市内までのアクセスビザ 

 バス、アエロエクスプレス、タクシーの3択。バックパッカーとして優先すべきはアエロエクスプレス、バス、タクシーの順になる。
 アエロエクスプレスの料金はバスと大差なく時間が読めるが1日5便しかないのが難点だ。http://vvo.aero/en/passazhiram/transport/aeroexpress.html
 ミニバン運行のエアポートバス107番は片道220ルーブル(2018年10月時点。約360円)。大きい荷物があると追加料金がかかることもある。8:10から22:00までウラジオストク駅を結ぶ1日24便が運行している。
 これらが利用できない時間帯はタクシーを使うことになる。ウラジオストク駅から空港に向かう107番バスは5:40始発で17:20が最終となっている。

 

nor
エアポートバスのタイムテーブル。英語併記だ

 

 

まずはウラジオストク駅前へ 

 初めての訪問ならウラジオストク駅前の宿がいい。鉄道、バス、フェリー、空港へのアエロエクスプレスなど交通機関が利用しやすい。主要な見どころは徒歩とバスで観光できる。金角湾を見下ろせる鷹の巣展望台へは駅から距離があるが、徒歩40分ほどなので散歩がてらに歩くのもいい。
 市バスを利用する場合はグーグルマップの経路案内を使うとバスの番号が表示されるので参考にしよう。ただし、現地のバス停やバスの表記はキリル文字なのでアルファベットは読めるようにしておきたい。
 個別の観光については、ガイドブック等が詳しいので割愛する。今回2度目となるウラジオストクでは中心部を街歩き、潜水艦や軍艦に乗り込み、夕暮れ時に鷹の巣展望台から金角湾を眺めた。夕食は北朝鮮レストランやグルジア料理店に行った。どちらも日本では馴染みがないがウラジオストクでは手軽に、お手頃価格で楽しむことができる。
 マリインスキー沿海州劇場のチケットはネットで購入できる。スケジュールが合えば観劇もお勧めだ。初めてのウラジオストクなら丸2日は観光に充てたい。余裕があれば、ハバロフスクIN、ウラジオストクOUTの日程を組んで両都市間を鉄道移動するのもよいだろう。

 

rhdr
金角湾の軍艦に乗ってクルージング気分!

 

oznor
街歩きもなかなか楽しい

 

 

ロシア各地の民族料理を食べ歩きたい 

 グルジア料理、ウクライナ料理、中央アジア料理など旧ソ連の民族料理レストランが充実している。西欧のレストランと違い、おひとり様でも入店しやすいが、ひとりだと多くのメニューを楽しめないのが難点だ。駅近くのグルジア料理店でハチャプリを頼んだら、分厚いピザのような大きさのものが運ばれてきて半分食べたところで断念した。
 バックパッカーやひとり旅に欠かせないのがスタローバヤというカフェテリア形式の食堂だ。トレイに料理を載せて、最後にレジで会計する「はなまるうどんスタイル」なのでロシア語がわからなくても大丈夫。前菜、メイン、スープ、パン、ドリンクとひと通り載せても500ルーブル(約820円)程度でおさまるだろう。
 ウラジオストク市内でよく見かけるのが『スタローバヤ・ノメルアジン(Столовая No1)』https://st1.one/ウラジオ駅隣接の店舗もあり、閉店間際には半額になることもある。

 

nfd
こちらがグルジア料理のハチャプリ。チーズのたっぷり詰まったパンでグルジアの国民食でもある。

 

 

タクシー配車アプリも普及している 

 市バス用の小銭は常備しておこう。タクシーを利用するなら配車アプリYandex Taxiがおすすめ。これでタクシーを呼ぶことができるし、流しのタクシーを捕まえる場合にも料金の目安がわかる。タクシーは市内であればほぼ1000円以下におさまる。

 

 

やはり寒さ対策は必要 

 海沿いのため内陸の都市ほどの厳しい寒さではないが、冬季の旅行には充分な防寒対策が必要だ。路上で冷凍食品が売られている程度には冷え込む。マイナス10度に耐えられる服装を準備する。路面は当然凍結するのでグリップの利く靴が望ましい。反面、室内は充分暖房が効いているので重ね着で調整しやすいようにしておこう。

 

 

陸路で中国から入ることもできる 

 ビザを準備しておけば、ウラジオストクへは中国から陸路で入ることもできる。黒竜江省の綏芬河からのルートと、吉林省延辺朝鮮族自治州から入るルートが一般的だ。
 私が越えたのは後者の国境で、琿春市からウラジオストクまでバスを乗り継いだ。早朝出発、日没後到着で丸1日がかりの旅になる。
 まず琿春市国際バスターミナルから7:40AM発のロシア側スラビヤンカ行きのバスに乗る。1:30PMにスラビヤンカに到着。バスの切符売り場らしきものが目の前にあるが、ここではウラジオストク行のチケットは売っていない。隣接するバザールの中に切符売り場がある。バスチケット売り場を示す「ABTOKACCA」という表示は出ているが、非常にわかりにくい。
 3:00PM出発の便がすぐ買えた。中国から来た場合、ルーブルの持ち合わせがなくても周辺にATMはあるので心配はいらないが、ロシア語では「ATM」と言っても通じない。ヨーロッパでは一般的な「BANKOMAT」と言えばわかってもらえるので誰かに尋ねよう。
 終点のウラジオストクは、フタラヤ・レーチカ駅隣接のバスターミナルだ。
https://goo.gl/maps/wNoYMTv63PB2
 ここは中国やハバロフスク行きのバスが発着している。SIMカードを売る店があったので、ここでBeelineのSIMを購入した。ウラジオストク駅まではバスでも行けるが、厳冬期に外で待つのは避けたかったため、フタラヤ・レーチカ駅から近郊電車(エレクトリーチカ)を利用した。20時過ぎにようやくウラジオストク駅に到着。10時間を超える大移動だった。

 

 

北朝鮮レストランが何軒もある 

 現在、ウラジオストクに北朝鮮レストランは5店舗あるとされているが、私はうち3店舗を確認、訪問している。『カフェ平壌』は、『地球の歩き方』にも掲載されている有名店。金剛山はやや郊外にある小規模店。『高麗(コリョ/KOPЁ)』はウラジオストク市庁舎の隣にできた新しい北レスで、駅前から充分徒歩でアクセス可能だ。今回は高麗と平壌にいってきた。
 まずは、初訪問になる高麗。2016年に来たときはこの店はなかった。手始めに表から写真を撮り、入店する。最初に声をかけてきたウェイトレスはロシア人だ。北レスで朝鮮人以外が給仕をしているのは珍しい。ボックス席に案内され、席に着く。
 この店は、北レスらしくない垢抜けた内装で、一見韓国料理店のようにもみえる。メニューはよくいえば保守的で、各国の北レスもだいたい似たような料理を出す。今回は単独訪問なので、あまり多くのメニューは頼めない。厳選してオーダーしたのは平壌冷麺とユッケ。日本ではなかなかお目にかかれないので注文したのだが、このユッケのたれは絶品であった。ボックス席のため他のテーブル席の様子はうかがいしれない。
 そろそろ食事を終えて会計を頼もうとしたとき、黒ずくめの作業服に身を包んだ東洋人の中年男性2人組が入店してきた。浅黒い肌、角刈り風の短髪。どうやら常連客のようで北のウェイトレスたちと親しげに言葉を交わしている。ウラジオストクの建設現場で働く出稼ぎ労働者に違いない。休みなく働き、北の外貨稼ぎに一役買っている彼らは息抜きや情報交換を求めてここにやってくるのであろう。
『カフェ平壌』はウラジオストクでは老舗の北レスだ。名前はカフェだが実態はレストランそのものだ。ウラジオストク駅前からは市バスで目の前までいける。徒歩では約30分ほど。
 小規模な店内には独立したステージはない。バーカウンターの前には電子ピアノなどの楽器が置かれている。前回は店内を撮影してもとがめられなかったが、いまは撮影禁止になっていた。試しにスマホのカメラを構えると美人ウェイトレスが駆け寄り「お客さま、いけません」と上品な指導を受けた。料理を撮る程度なら黙認してくれるようだ。
 客層は、日本人のビジネスマン、韓国人、地元のロシア人。2016年の訪問では20時頃からウェイトレスによるギターでの弾き語りがあった。客の入り具合によるので、公演があればラッキーぐらいに思っておく方がよい。

 

nfd
『高麗(コリョ/KOPЁ)』のユッケ。なかなかいけた

 

北の労働者との邂逅 

 帰国の途に就くため、ウラジオストク空港に入るとチェックインカウンター前が大混雑していた。黒ずくめの男たち、カートに積み上げられた大荷物。これはもしや! とチェックインカウンターのフライト案内モニターを確認する。はたして「Pyongyang」であった。朝鮮民主主義人民共和国が誇るあの高麗航空のロゴ。北の労働者のための帰国チャーター便だ。
 普通の観光客を装い、スマホのカメラをこっそり向けて写真を撮りまくる。ざっとみたところ100から150人はいる。20代から40代の男性がほとんどだが、10人ほど若い女性もいた。身長、ルックス、たたずまいからして北レスのウェイトレスではなさそうだ。ウラジオストクの工場で勤務していた女性労働者と思われる。
 余ったルーブルを替えようと両替所にいくと、そこにも北の男たちが群がっていた。スマホの電卓を立ち上げ、レートを確認するふりをして最前列の隣に張り付いた。男が手にしているのはルーブルだ。帰国前に、ドル札として残そうと殺到しているのだった。
 正規の賃金は国家がさらってしまうため、ビルの内装をアルバイトとして下請けしながら休みなく働き蓄財に励んでいると聞く。実際、ロシアのポータルサイトには朝鮮人によるビル内装請負の広告が出ている。そうして得たルーブルをここで両替していくのだろう。

 

oznor
平壌行きのチェックインカウンターに群がる北朝鮮労働者たち

 

新しいディスティネーションとして 

 ウラジオストクは日本からのアクセスがよく、英語も他の極東ロシア諸都市に比較すれば通じやすい。近年ホステルの開業が相次いでいるのも追い風だ。従来はビザの申請が手間だったが、電子ビザ申請が可能となってその障壁も除かれた。3泊4日程度の休暇であっても欧州の街並みを満喫できる。次の旅先候補に入れてみてはいかがだろうか。

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

来生杏太郎(きすぎ・きょうたろう)

1972年福島県生まれ。外国人向けゲストハウスのマネージャーを経て現在はホテル勤務。都内大学を卒業後、Uターン就職した地方銀行を26歳で辞めて長旅に出る。ワーキングホリデーでパースとメルボルンに滞在したあと、念願だったユーラシア横断を果たす。転職の合間に1ヶ月から半年ほどの旅を重ね、バックパッカー旅行歴は初海外の1995年以来通算で3年半余り。故向井通浩氏運営の「バックパッカー新聞」に不定期連載。「第2回yomyom短編小説コンテスト」(新潮社)入賞。「私が見た中国 SNSフォトコンテスト」(中国駐東京観光代表処)特別賞。

 

紀行エッセイガイド好評発売中!!

okinawa00_book01

最新改訂版 バックパッカーズ読本

究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本
バックナンバー

その他の辺境・秘境の旅

ページトップアンカー