ブーツの国の街角で

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#16

サルデーニャ島/イタリアの魅惑のビーチリゾート(前編)

文と写真・田島麻美

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  いよいよ本格的な夏、待ちに待ったバカンスの季節がやってきた。「イタリア人はバカンスのために働いている」と誰かが言っていたが、それもあながち嘘ではないと思えるほど、彼らのバカンスにかける情熱は並々ならぬものがある。
 長期の休みが取れる夏のバカンスには海外へ脱出する人も多いが、基本的には「バカンスには何もしない」というスタンスの人が大多数を占める。一般的にイタリア人がバカンスに望むものは、「太陽、美しい海、美味しい料理」の3つ。予定を立てず、時間を気にせず、大好きな海を眺めながらそれらをたっぷり楽しむのがイタリア式夏のバカンスなのだ。今回から2回に渡り、そんな海好きのイタリア人の誰もが憧れる魅惑のビーチリゾートをご紹介していこう。
  

 

チヴィタヴェッキアから船旅を楽しむ

 

 

  地中海でシチリア島に次いで二番目に大きなサルデーニャ島は、海の美しさ、豊かな自然、そして独自の伝統文化と郷土料理によって、イタリアでも屈指のバカンス地として人気を集めている。サルデーニャでバカンスを過ごした経験のあるローマの友達は口を揃えて、「まるでパラディーゾ(天国)みたいにきれいな海!」と絶賛する。サルデーニャは車がないと不便だと聞いていたので、車を持たない私は「いつか行けたらいいな」と憧れだけで留まっていたのだが、ある時、サルデーニャ島出身の友人が夏に里帰りするので遊びにおいでと誘ってくれた。これぞ千載一遇のチャンス! 早速、チヴィタヴェッキアからのフェリーを予約し、サルデーニャ島北東部のオルビアへ向かった。
 チヴィタヴェッキアの港からはサルデーニャ島、コルシカ島など地中海の島へ渡る船がたくさん発着する。島へ着いてから車で移動する人が多いため、カーフェリーが基本だ。船内はベッドがある個室のコンパートメントから座席シートまで、タイプの異なる客席があり、予算や人数、車の有無によって選択できるようになっている。サルデーニャ行きのフェリーはイタリア本島各地の港から出ている。チヴィタヴェッキアからオルビアまでは高速フェリーで約6時間、夜行ならもう少し時間がかかる。飛行機なら1時間ほどで到着する距離だが、あえて地中海を船でのんびり行くのもヴァカンスならではの楽しみ方だ。
 

 

 

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 ローマからチヴィタヴェッキアまでは各駅電車で約1時間、駅から港までは徒歩10分程度。ここからサルデーニャ島やコルシカ島へ渡るフェリーが多数発着している(上)。一番安いシートは自由席。船内にはバールもある。長時間の船旅なので夜行ならゆっくり体を伸ばせる個室を選んだほうがいい(下)。
 

 

 

 

島内の移動はレンタカーが便利

 

 

 

  高級避暑地として名高いエメラルド海岸への入り口でもあるオルビアから、友人の運転する車でアルゲーロへ向かった。鉄道もあるのだが、ここで生まれ育った友人の話では、「列車はいつ来るかあてにならないし、島内の街を全て網羅しているわけではないから使わないわ。綺麗なビーチは街から離れたところに隠れていることが多いし、道路は一本道だからツーリストもレンタカーで動く人がほとんどよ」とのことだった。
 まっすぐに伸びた道路の両脇には、どこか荒涼とした大自然が広がっている。街から街までの間に建物はまるで見当たらない。かと思えば、だだっ広い荒野に風力発電の巨大な風車の群れが突如現れて、その大きさに度肝を抜かれたり。雄々しい大自然、という言葉がぴったり当てはまる風景が、車窓に広がっては流れていく。サルデーニャ島の内陸部には”ヌラーゲ”と呼ばれる独特の石造りの先史時代からの遺跡もたくさん残っている、と聞いて、世界遺産の「スー・ヌラージ・ディ・バルーミニ」を見てみたいと思いついたのだが、ここからは車で3時間もかかると言われて断念。ところどころに見え隠れする岩の遺跡を眺めて満足することにした。
 

 

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サルデーニャ島の州道を走る。島内の主要空港は3つあり、空港から各街へのシャトルバスも出ているので、運転したくない人はバスでもアクセスできる。ただし、冬期などのオフシーズンは公共交通機関の本数が少なくなるので注意が必要(上)。風力発電の風車や険しい灰色の石灰岩の山など、車窓からの風景はとても雄大(下)

 

 


 

北西端の要塞都市アルゲーロで伝統料理を味わう

 

   

   オルビアから車で走ること約2時間、島内第二の街・サッサリの隣にある海辺のヴァカンス地アルゲーロに到着した。アルゲーロと海を隔てて最も近い陸地はスペインのバルセロナ。14世紀にカタロニア、アラゴン連合軍によって征服された歴史を持つこの街は、サルデーニャ島の中でも特に異国情緒に満ちている。旧市街はスペイン風の建物が軒を連ね、街角のあちこちにはカタロニア語の表記も見られ、まるでスペインのどこかの街に迷い込んだような錯覚に陥る。
 夏のバカンスシーズン、海岸線に沿って作られた要塞の遊歩道は、日暮れとともに賑やかさを増していく。エキゾチックな旧市街で地中海の夕暮れをたっぷり眺めた後は、お楽しみの郷土料理に舌鼓を打ち、食後は爽やかな夜風に吹かれながら遊歩道を散歩する。これぞ夏のヴァカンスの王道! といえるような体験を満喫できる。
 

 

 

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塔の道(La Via delle Torri)と呼ばれるアルゲーロの城壁沿いの散策コース。海岸線に沿って続く長い遊歩道には、美味しいシーフードや郷土料理のレストラン、眺めのいいカフェなどがたくさんある(上)。アルゲーロ郊外の広野、道路の脇にポツンと立つサッカルジア大聖堂は12世紀のロマネスク様式の教会で、島内の重要な文化遺産(下)。アルゲーロには国内線の空港もあり、市街まではシャトルバスで約30分でアクセスできる。


 

 

 

 

   海・山の幸、豊かな自然に育まれた食材を使った伝統料理の数々は、サルデーニャ島を訪れる大きな楽しみの一つ。アラブやスペインなど各国の文化がミックスしたレシピもオリジナリティに溢れていて、ここならではの味を堪能できる。海の幸の代表はウニとカラスミ、マグロやロブスターも味わえる。山の幸は野生のアスパラやサラミ、特産のペコリーノチーズなど、食材は目移りしそうなほど豊富である。素材がいいのでできるだけシンプルな料理を、とオーダーしたのはミックス・シーフードフライ、そしてサルデーニャ独特のパスタ「フレーグラ(フレーゴラとも呼ばれる)」。クスクスのような小粒のパスタをアサリとトマトで煮込んだパスタはあっさりしているのにコクがある。紙のように薄くてパリパリのサルデーニャの代表的なパン「カラサウ」と一緒に、新鮮な海の恵みをたっぷり味わった。
   
 

 

 

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新鮮なシーフードのフライは何よりのご馳走(上)。ウニもこの街の特産品で、毎年3月には「ウニ祭り」も開かれる。紙のように薄くてパリパリのパン「パーネ・カラサウ」(中)。クスクスのような極小パスタ「フレーグラ」はぷちぷちした食感が病みつきになる美味しさ(下) 


 

 

 

 

天国のビーチに大興奮!

 

 

   水の透明度と美しさで定評があるサルデーニャ島には有名なビーチがいくつもある。私が島で最初に行ったのが、島内最西端にあるスティンティーノ(Stintino)の海だった。何も知らず、呑気に鼻歌を歌いながら連れて行ってもらったのだが、ビーチを見るや否や、その美しさにあんぐりと大口を開けてしまった。
 後にわかったのだが、ここはイタリア人なら誰もが憧れるビーチ「ラ・ペローザ(La Pelosa)」がある場所だった。真っ白な砂浜のビーチ、透き通ったターコイズブルーの海は太陽の光と深度で水平線に近づくにしたがって色濃くなり、見事なグラデーションが広がっている。周囲には野生のハーブの緑と甘い花の香りが漂い、まるで天国にいるよう。
「うわーっ、きれーい! バスクリン・クールの海だー!」
「バスクリン?」と不思議な顔をしている友を置き去りにし、気がつけば私はビーチへ向かって駆け出していた。居ても立ってもいられないほどの衝動に駆られて海へ飛び込んだのは、後にも先にもこの時だけである。目の前に広がる海は、決して大げさではなく、思わず叫んで飛び込みたくなるほどの魅力に満ちていた。パラダイス、という言葉を繰り返しながら、時の経つのも忘れて波間に漂う幸せをかみしめた。
 

 

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自然のままの美しさが残っているラ・ペローザのビーチ。真っ白な砂浜と海のブルー、周囲の緑、そして石灰岩の山、見渡す限りまるで絵のように美しい風景が広がっている(上)。長い遠浅のビーチでは、アクセサリーを売る屋台も海の中(中)。ビーチの名の由来となったペローザの塔は、海の中の岩の上に立つ(下)。アルゲーロからは、夏のシーズン中に限りこのビーチまでのバスも出ている。

 


 

 

(次回はリグーリア海の魅惑の海をご紹介します。お楽しみに!)

 

 

 

 

★ MAP ★

 

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<アクセス>

飛行機で/ローマからオルビアへは飛行機で55分、カリアリへは飛行機で1時間10分。イタリア本島各地からサルデーニャ島内の主要空港への便が出ている。アルゲーロにも空港があるが規模はとても小さく、小型の国内線のみ発着。

船で/チヴィタヴェッキア、ナポリ、ジェノヴァなど各街の港からサルデーニャ島オルビア、カリアリなどの港へ渡るフェリーがある。所要時間はフェリーのタイプ(高速船か否か)などによって様々なので、予約時にフェリー会社のサイトなどで確認が必要。チヴィタヴェッキアからオルビアまでは高速船で5時間半。

島内の移動/主要空港から最寄りの街まではシャトルバスが出ている。街ごとの移動は鉄道か長距離バスで。但し、時刻表はあまりあてにならないようなので、島内のあちこちを周りたいならレンタカーを使う方が効率がいい。

 

 

<参考サイト>

・イタリア各地からサルデーニャ島へのフェリー予約サイト

http://www.directferries.jp/ (日本語)
https://www.grimaldi-lines.com/en# (英語)
 

・サルデーニャ島内のバス (イタリア語のみ)
http://www.arst.sardegna.it/index.html

 

・サルデーニャ州観光サイト(英語)
https://www.sardegnaturismo.it/en

 

・サルデーニャ島の空港(日本語)
http://www2m.biglobe.ne.jp/ZenTech/airport/italy/Airports_of_Sardinia_Island.htm

 

・アルゲーロからスティンティーノへのバス(イタリア語)
http://www.sardabus.it/nur2.html
 

 

 

*この連載は毎月第2・第4木曜日(月2回)の連載となります。次回は7月27日(木)掲載予定です。お楽しみに! 

 

 

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田島麻美 (たじま・あさみ)

千葉県生まれ。大学卒業後、出版社、広告代理店勤務を経て旅をメインとするフリーランスのライター&編集者として独立。2000年9月、単身渡伊。言葉もわからず知り合いもいないローマでのサバイバル生活が始まる。半年だけのつもりで暮らし始めたローマにそのまま居座ること17年、イタリアの生活・食文化、歴史と人に魅せられ今日に至る。国立ローマ・トレ大学マスターコース宗教社会学のディプロマ取得。旅、暮らし、料理をメインテーマに執筆活動を続ける一方、撮影コーディネイター、通訳・翻訳者としても活躍中。著書に『南イタリアに行こう』『ミラノから行く北イタリアの街』『ローマから行くトスカーナと周辺の街』『イタリア中毒』『イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる』他。

 

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