台湾の人情食堂

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#15

美味しい店はここにある! 食べ歩きのコツ

文・光瀬憲子   

 

 外食率が8割にものぼる台湾。外食需要が大きければ、美味しいものが多いのも当然である。たとえ2泊3日の短い旅でも、できるだけたくさん美味しいものを食べたい。そんな旅行者のみなさんが効率よく美味しいものを見つけ、食べ歩けるコツをお伝えする。

廟の前に旨いものがある

 まずは台湾ならではの文化に根付いた法則。「廟前に旨いものあり」だ。台湾を訪れたことがある人なら、都会や地方を問わず、あちこちにお寺のような建物があることに気付くだろう。台湾人にとっての神様はとても身近な存在。今の台湾人の祖先が中国大陸から台湾海峡を渡って台湾島へやってきたとき、人々は媽祖と呼ばれる海の聖母を守り神として船に乗せた。そして無事台湾島へたどり着くと、航海の無事を感謝し、媽祖廟を建てた。媽祖だけでなく、観音や関帝などの廟も多く、買い物帰りや散歩のついでに気軽に訪れ、様々な願い事や相談事をする。だから必然的に廟には人が集まるようになり、飲食店ができ始めた。古い廟の周辺に食べ物屋が多いのはこのためだ。

 たとえば台湾南部、高雄の保生大帝という廟の前には、屋台より少し大きめの庶民的な食堂がずらりと並んでいる。朝から営業している店もあれば、夕方以降に賑わうラム肉スープの店や生ビールと海鮮の店もある。広々とした境内のガジュマルの木の下で仲間とアフターファイブを楽しむ人の姿が見える。高雄の夏は暑い。涼しい風が吹き始める夜、廟前で遅めの宴を楽しむのもなかなか粋である。こんな風に、少し大きめの廟や古い廟を訪れ、その周辺を歩いてみると、美味しい店に出くわす確率が高い。

 

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高雄の保生大帝(保安宮)の境内、人気の腸詰屋台

 

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保生大帝前の屋台の腸詰と、その右側の店で買える生ビール

ロータリー(圓環)には旨い店がある

 もうひとつの穴場はロータリーの周辺だ。こちらも背景は廟と似ていて、日本時代に都市整備のため作られたロータリーがいまだに台湾各地の都市部に点在している。なかでも台南市はロータリーが多く、西門路一段のロータリーには台南市を代表する人気食堂が2店ある。ラム肉スープの『包成羊肉』と、台南名物サバヒー粥の『阿堂鹹粥』だ。いずれも早朝から営業している朝ごはん屋さんで、土日はかなり混雑する。ほかにも台北の寧夏夜市や嘉義の東公有市場など、ロータリー付近に朝市や夜市ができた例もある。地図上でロータリーを見つけたら、自分で歩いてみると隠れた名店を発掘できるかもしれない。

 

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台南、西門路一段のロータリーの『包成羊肉』。名物サバヒー粥の人気店『阿堂鹹粥』はこの右手

 

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新鮮なラムのレバーを湯がいたもの(『包成羊肉』)

“行列”ではなく“人だかり”がしている店が地元の人気店

 次の法則は「人だかりがしている店は旨い」。当たり前だ、と思われるかもしれないが、“人だかり”と“行列”はちょっと違う。台湾人はかつては行列が苦手だったが、最近は美味しいものにありつくためなら待つことを厭わない。だが、整然とした行列をつくっているのはたいてい外部から来た観光客で、新たにオープンした店や、メディアで取り上げられた人気店がほとんど。

 たとえば、台北公館の羅斯福路三段にあるタピオカミルクティー『陳三鼎』は常に長い行列ができている。ここでしか味わえない濃厚な黒糖タピオカミルクティーが女子を中心にファンを集めているのだが、若者が流行や口コミに群がっている感が否めない。

 

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基隆の人気腸詰店『孝三路大腸圏』。外部から来た人が並ぶ典型的な“行列”だが、ここは美味しい

 

 一方で、“人だかり”というのは食堂や屋台前のごちゃごちゃした人の群れを指す。台湾の屋台や食堂では、テーブルに食事が運ばれてきたときに会計するパターンが多い。人気の個人経営店などは常に人手不足なので、客が勝手に席に座り、注文や会計をベテランの店員が手際よくこなす。常連客は暗黙の了解とばかり、自分で席が空くのを待ち、注文するタイミングをはかり、会計を待ち、さらにはテイクアウトの品を待つ。こうして常連客の多い人気店にはそれぞれの理由で待っている客がごちゃごちゃと集まり、人だかりができる。本当に旨い店は、目立たない裏路地にあったりするので、不規則な人だかりが見えたらのぞいてみることをおすすめする。

 

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これが“人だかり”。台北の郊外、板橋の黄石市場で人気のイカあんかけスープ店『生炒魷魚』

店が朝型か、昼型か、夜型かを把握して食べ歩き計画を

 旨い店を見つけるには時間帯も重要だ。台湾の小さな屋台や食堂は比較的営業時間が短い。蚵仔煎なら蚵仔煎、麺なら麺と、特定の商品に絞って提供する店が多いので、1日中営業するよりも、その商品が求められる時間帯に数時間だけ店を開けるのだ。

 朝市付近の粥店なら早朝から昼前まで、オフィス街の麺店なら昼前から午後まで、夜市に近い店は夕方から夜中まで、といった具合。お目当ての食べ物がある場合は、それが朝食向けなのか、ランチ向けなのかを考えて店を訪問しよう。

 台南には自助餐(庶民的なバイキング)の発祥と言われる食堂『福泰飯桌』がある。魯肉飯や小皿の炒め物など、どれも絶品だが、営業時間が11時~14時頃までと短いため、客が集中して常に混雑している。一方で、同じ台南市内にあるタウナギあんかけ麺『阿江炒鱔魚』は、暗くなりかけた夕方5時頃からオープンし、深夜まで賑わう。かなりボリュームのある濃厚な麺だが、いつの間にか定番の夜食となったようだ。

 

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台南にあるタウナギあんかけ麺の人気店『阿江炒鱔魚』は夜型

酒は鴨肉料理店や海鮮料理店、火鍋店にある

 旨い店を見分けるついでに、酒のある店の特徴も知っておくと便利だ。台湾は日本ほど飲酒人口が多くないので、酒を置いていない食堂が多い。そもそも晩酌しながら食べる習慣がない。それでも、高確率で酒が置いてあるのが鴨肉・ガチョウ肉を扱う店、海鮮の店、そして火鍋店である。

 鴨肉やガチョウ肉のスライスはビールにとてもよく合う。鴨肉のスライスをツマミに台湾ビールを飲みながら語らうのが台湾飲兵衛の密かな楽しみだ。海鮮なら台北は艋舺(万華)の梧州街と廣州街の交差点に接する屋台が安くて手軽。1皿100元程度でエビの炒め物やアサリの酒蒸しなどの酒肴が楽しめる。

 鍋はやはり大勢の仲間とワイワイやるときに似つかわしい。特に冬場の週末ともなれば火鍋を囲んで乾杯するグループが急増する。火鍋店は深夜過ぎまで営業していることも多い。高雄の美麗島駅の目の前にある『汕頭泉成火鍋店』は濃厚で癖になる麻辣火鍋が絶品だ。ここは前述した「ロータリーに旨いものあり」の条件も満たしており、午前0時を回っても、若者たちの賑やかな笑い声が聞こえてくる。

 

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鍋の店にはビールがある。高雄、美麗島駅(ロータリーに位置)前の『汕頭泉成火鍋店』

料理は最小単位で注文。2、3人で1人分を分け合ってもいい

 最後に、限られた時間で美味しいものをなるべくたくさん食べるための鉄則。それは少しずつ休みながら食べること。幸い、台湾の小吃グルメはどれも一人前が少量な上、2~3人でひとつをシェアしても店側に嫌な顔をされない。

 また、麺や魯肉飯などのご飯物は大と小を選べる場合が多いので、迷わず「小」を選ぼう。また、少しずつでも1日中食べていると胃が疲れてしまうので、途中にコンビニ休憩を挟むのもいい。台湾のコンビニはたいていイートインの休憩スペースが設置されているので、コーヒーなどで口直しをしつつ、休憩しながら食べ歩きを楽しもう。

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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