THE 百年宿

THE 百年宿

#15

金具屋 KANAGUYA ‐NAGANO‐

 

 

 

 

 

 

 

歴史の宿金具屋 ―長野県・下高井郡山ノ内町―

希少な木造4階建て建築と、5つの源泉・8つの内湯を有する“歴史の湯宿”を堪能する。
「THE 百年宿」連載第15回は、山越えの宿場町、長野の渋温泉から老舗の湯宿「金具屋」をお届けします。

 

文:本吉恭子

 

 

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「斉月楼」
 文化財にも認定される木造4階建ての本館「斉月楼」。六代目当主が、大工とともに日本各地の名所を巡り、そこで得た知識の集大成。

 

 

昭和初期に建てられた木造建築を歩き、
昭和ロマンに思いを馳せる。

 

 光寺と草津を結ぶ草津街道にあり、山越えの宿場町として栄えた渋温泉。今もなお江戸時代の街並みが残り、深い山の香気が流れるこの温泉街で、ひと際静かな存在感を放つ湯宿がある。それこそが、宝暦八年(1758年)創業の金具屋だ。もともとは松代藩の馬具や蹄鉄などをつくっていた鍛冶屋だったのだが、敷地内から温泉が湧き出したことから温泉宿として創業した。このユニークな宿名は当時の松代藩主によって命名されたもので、鍛冶屋を営んでいた宿のルーツが秘められている。
 敷地内には、国の登録有形文化財に認定されている建物が二棟。ひとつは木造四階建ての「斉月楼」、もうひとつは本間130畳もある広間「旧温泉会館・大広間」だ。どちらも昭和11年に完成したもので、昭和初期、宿の六代目が十人以上の宮大工たちを引き連れて全国を巡り、各地の名建築を参考にして建てられたという。これら宮大工の技術の粋を集めた伝統建築は、多少の修繕は加えられたものの、今もなお現役だ。
 また、温泉はすべて源泉かけ流しで、自家源泉四つ、共同引湯の源泉ひとつ、合計五つの源泉のお湯が内湯や露天風呂にあふれる。なかでも、創業のきっかけとなった敷地内に湧く源泉は、250余年を経た現在もあふれ続け、宿の顔とも言える内湯「浪漫風呂」に満たされている。
 さらに、信濃は全国屈指の長寿国。温泉はもちろん、じんわりと心身を癒すような麦とろが主役の滋味深い朝食や、夕食にいただく「不老全」なども、この湯宿の名物。磨きこまれた伝統建築の美しさにふれ、贅沢にあふれる極上のお湯と食のもてなしを堪能したい。

浴衣と下駄が似合う。
創業から変わらない、ノスタルジックな世界。

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木造四階建ての「斉月楼」、本間130畳の広間「旧温泉会館・大広間」という、ふたつの文化財を有する「金具屋」。旅館建築の集大成とも言われるその建物は、一見の価値がある。「金具屋」の顔とも言える木造4階建ての「斉月楼」は、社寺、数寄屋、伽藍建築や遊郭様式など、さまざまな日本の伝統建築の要素が盛り込まれている。日本建築の技が集結した国登録有形文化財だ。

 

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(左)「神明の館」の玄関。敷石には、現在では採掘することができない「むじなごうろ」を使用。 

(中)「斉月楼」の基本構造である「伝統軸組構造」は、釘やネジをほとんど使わず、木の組み合わせだけで造られる。その特徴は、館内の至るところで目にすることができる。 

(右)事前に予約すれば、館内を案内する「金具屋文化財巡り」も。

 

職人の粋が伝わるわずか29室の客室。

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4つの棟にまたがる「金具屋」の客室はわずか29室。しかし、どの客室も画一的ではなく、すべてつくりが異なる。まさに日本旅館の粋が伝わる空間だ。写真は明治時代に建てられた「潜龍閣」の一室「黒書院」。その名にちなみ、天井、障子、襖に黒漆があしらわれている。皇室関係の方が宿泊したこともあり、格天井にはその証として菊の御紋も。

長寿国・信州の食を、
会席料理で堪能する。

 

長野県は日本でも有数の長寿国であり、その秘密は、信州特有の食にあるとされている。その食材と食文化を、丹念に仕上げた会席料理に昇華し、提供する。

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志賀高原で育った信州牛を使った「りんごで育った信州牛のレトロ牛鍋」(事前予約制)。

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信州の食材を一気に堪能できる「不老膳」。提供される直前に新鮮なわさびを混ぜる「安曇野わさび漬け」がイチ押し。地酒も進みそうだ。

 

大・小八つの内湯。
千年前から変わらない「渋温泉」の温もり。

 

 

 3つの大浴場、5つの貸切風呂からなる「金具屋」のお風呂はすべて源泉かけ流し。なかでも大浴場はそれぞれ異なる源泉を使用。泉質を比べながらのお風呂巡りを楽しみたい。

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まるで古代ローマを思わせるつくりの「浪漫風呂」。金具屋が開業するきっかけとなった源泉を使用する歴史あるお風呂だ。

kanaguya3「金具屋」では3種類の源泉を巡りができるのも魅力。とくに「金具屋」でもっとも古い源泉「金具屋別荘温泉」は、戦前から“泥の湯”と親しまれおり、美肌効果が期待されている。
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(左)貸切風呂のひとつ「岩窟の湯」。浴室がすべて天然の岩で囲まれており、まるで本物の洞窟にいるかのような感覚に。(右)白く濁った湯が特徴の「鎌倉風呂」。湯花も漂う。
 

 

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かなぐや
〒381-0401
長野県下高井郡山ノ内町平穏2202
電話0269-33-3131 (代表)

www.kanaguya.com

 

 

ISBN978-4-575-45557-1 (1)

 

 

 

 

 

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