台湾の人情食堂

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#14

夏休みに向かって台湾親子旅のオキテ

文・光瀬憲子   

 

“親3・子7”の気持ちで

 学生時代の友達や気のおけない仲間との台湾旅行はもちろん楽しいが、近場でリーズナブルに行けるため、家族旅行にもおすすめだ。私はよく娘(10代)と台湾旅行をするのだが、そのたびに子供目線で旅をすることの難しさと楽しさを痛感している。今回は特に小中高生と一緒に行く台湾を楽しむコツをご紹介したい。

 まず大事なのは、旅先では自分が見たいもの、食べたいものではなく、子供の意見を優先すること。自分の意見3割、子供の意見7割くらいにしておくと旅先でのトラブルが少ない。これは小学生でも高校生でも同じこと。たとえば、大人なら訪れてみたいと思う龍山寺のような施設も、子供にとっては古くてけばい建物というだけで、あまりおもしろがってもらえない。「ねえ、もう次に行こうよ~」ということになってしまう。

親子で楽しめる衛兵交代のセレモニー

 しかし、伝統的な建造物であっても子供も楽しめるスポットがある。「忠烈祠」だ。ここは「烈士」つまり革命や戦争などで活躍し、命を落とした勇士をまつる施設。台北の繁華街から少し離れた、広々とした土地に立つ。交通の便が悪いのでタクシーを利用するとよい。西門町などの繁華街から15分程度だ。広大な敷地内には赤や金で縁取られたきらびやかな中華建築が立ち並び、なかなか壮観だ。子供でも楽しめるのは、衛兵と呼ばれる兵隊さんたちの行進があるからだ。

 忠烈祠を訪れると、門には「蝋人形かな?」と思えるほど、直立不動の衛兵が上から糸で吊るしたようにピンと姿勢を伸ばして立っている。それだけでも小学生なら「わあ、すごい!」と声を上げそう。衛兵は台湾の空軍、海軍、陸軍から選ばれるが、身長や体重の制限がある。また、「もしかして顔で選んでいるのでは?」と思えるほどのイケメン揃い。凛々しい軍服姿の若者たちに、子供だけでなくお母さんもポッとなる。

 一番の見ものは1時間に1回行われる衛兵交代という儀式。隊列を組んだ衛兵たちが正面の大門から大殿に向かって行進する姿はとても美しい。彼らが銃を肩に乗せ、一糸乱れぬ様子で行進するあいだ、周辺の空気がピンと張り詰める。子供でも大人でも、息をするのも忘れるほど見入ってしまう。

 

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忠烈祠、衛兵の行進

美味しいもの+アルファの夜市選び

 親子で楽しめる観光スポットの筆頭はやはり夜市。ただ、夜市を選ぶときも子供が楽しめるかどうかを考えよう。たとえば有名な士林夜市は巨大なだけに食べ物の種類も申し分ないが、実はゲーセンのような施設もかなり充実している。人が多いので迷子にならないよう注意する必要があるが、小学生には魅力的なエンターテイメントがいっぱいだ。ゲーセンといっても矢を投げて風船を割ったり、バケツにボールを入れたり…というアナログなゲームが多い。日本の縁日の進化型といったところだ。小学生なら、日本ではお祭りでしか体験できない遊びに夢中になるだろう。

 また、寧夏夜市は屋台料理が美味しいことで知られる。コンパクトにまとまっているので長距離を歩かずに済み、蚵仔煎(牡蠣オムレツ)や臭豆腐など定番の屋台料理がどれもハイレベル。そして、あまり知られていないが寧夏夜市の南の端にはピンボール(スマートボール)ゲームのコーナーがある。日本の温泉地にあるような四角いガラス張りの箱にピンが刺さっていて、右端に付いたレバーを引くと銀色のボールが箱の中をゴロゴロ転がりながら、最後に穴に入っていくゲームだ。繰り返し遊んでポイントを貯めると、いろいろな景品がもらえる仕組みになっている。これが案外楽しく、親子でハマる人もいる。

 

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寧夏夜市の人気店『蚵仔煎大王』

 

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士林夜市のゲームコーナー

いまどきの子供は“ばらまき土産”が必須

 次にショッピング。旅先では「お土産を買うために旅行に来たのか?」と思うほど、時間を使ってしまうこともしばしば。昨今の小中高生のあいだには、旅行をすると休み明けにクラス全員にお土産を配らなければならない“同調圧力”のようなものがあるらしい。それがクラスで人気者になるコツでもあるようで、ばらまき土産は必須だという。

 台湾土産の定番といえばパイナップルケーキ。台湾独特の味でありながら日本人に受け入れられやすく、嫌いな人は少ない。値段も安く、街なかのスーパーやパン屋さんなどでも買えたりする。もちろん空港でも売っているが、市内で買うほうが安く種類が豊富だ。西門町あたりに行くと試食できる店も多いので安心だ。

 

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西門町の試食用パイナップルケーキ

 

 西門町は小中高生のショッピングでは外せないスポット。台湾の渋谷、とも言われるように、まるでセンター街のような歩行者天国の通りが扇状に広がっており、若者向けの衣服や雑貨があふれている。流行りのスマホグッズは日本よりずっと安く手に入り、ばらまき土産に最適なピンバッジやマグネットなども多く、まとめて買うと安くなる。

 また、師大夜市や臨江街夜市は雑貨やアクセサリーの店舗が充実している。特に師大夜市は師範大学や台湾大学から徒歩圏内なので学生に人気。コスメやアクセサリー、ファッションなどは今どきの若者の好みを反映している。

ショッピングで、娘の“地雷”を踏まないために

 私はかつて、中学生の娘と西門町を訪れ、ふたりで洋服を物色していたのだが、娘があちこちの店で試着し、2時間ほど費やした挙句、「やっぱりやめた」と言ったときはガックリしてしまった。しかし、娘が何も買わなかった理由は気に入った服がなかったからではなく、買い物に付き合っていた私がいかにも不機嫌そうだったからだそうだ。この後、大げんかになって、危うく台湾という異国の地で別行動をとるところだった。

 同じ女である私が言うのもなんだが、子供、特に女子の買い物に付き合う場合は、辛抱強く待つこと、笑顔で「似合うね」「その色もいいね」と相槌を打つこと、そして最終的な決断は本人に委ねることが鉄則である。

 

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ショッピングは“辛抱が”が肝心(夜市で娘の服選びを手伝う筆者)

不機嫌な娘にはスイーツを

 ケンカしてへそを曲げたりたり、歩き疲れたりして不機嫌になった子供や女子中高生のご機嫌とりに有効なのはやはり「甘いもの」である。台湾には日本でなかなか食べられないスイーツがある。その中でも手軽に入手できるのがタピオカミルクティー。ボリュームたっぷりな割には安く、『50嵐』などのチェーン店のスタンドがそこら中にある。

 なかでも一押しは公館という学生街にある『陳三鼎』タピオカミルクティースタンドだ。黒糖入りで濃厚な甘味のドリンクにはファンが多いため、行列必至。

 

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タピオカミルクティーの人気店、公館の『陳三鼎』。行列して食べるからこそ美味しい

 

 また、同じ公館にある『龍潭豆花』の素朴な豆花デザートもいい。豆花はいわば豆乳プリン。豆腐を原材料としたプリン状のものに茹でピーナッツを乗せ、たっぷりの甘味シロップをかけていただく。夏は冷たく、シャリシャリとした氷が舌に心地よい。老若男女に人気の伝統スイーツである。

 

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公館の『龍潭豆花』の冷たい豆花

 

 台湾の夏は気温も湿度も高いので、子連れの場合はこまめに休憩をとるほうがいい。その点、台湾のコンビニはどこもイートインのスペースがあるので、飲料を買い、座って一休みができる。家族とは言え旅先ではトラブルも多い。親子ともに思い出に残る楽しい旅となるよう、無理のないスケジュールを心がけたい。

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『ビジネス指さし会話帳 台湾華語』『スピリチュアル紀行 台湾』他。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「翻訳女」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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