THE 百年宿
#13
新井旅館 ARAIRYOKAN ‐SHIZUOKA・SHUZENJI‐
「THE 百年宿」連載第13回は、静岡県は伊豆修善寺の伝統宿「新井旅館」をお届けします。
新井旅館 ―静岡県・伊豆市―
明治5年の創業以来、多くの文人や歌人、画人たちに愛され続けてきた。
凛とした雰囲気のなかに文化の香りが漂う。
文:金井幸男
「修善寺の自然」
館内の庭園では、春は桜や梅、ツツジに山吹、夏にはサルスベリが咲き誇る。秋の紅葉もまた素晴らしい。
歴代の文人墨客が来訪。
数々の作品にも取り上げられた、
至極の“湯・食・住”を堪能。
起源となる「養気館新井」が創業したのが明治五年。当時から変わらぬ「青州楼」や「霞の棟」など。大正時代に建設された「甘泉楼」や「月の棟」ほか、ほぼ全棟が国の有形文化財に登録される「新井旅館」。さらには「花の棟」から見える〝竹林の小径〞に至っては、二〇〇九年のミシュラングリーンガイドにおいて、二つ星まで獲得するなど、文化の香りにあふれた宿だ。
特筆すべきは昭和九年に完成した「天平大浴堂」(国登録有形文化財)。台湾から運んだ檜の芯去り材を使った総檜づくり。源泉かけ流しで満たされた天然温泉が映える、様式・材質・技術すべてにすぐれた名建築だ。
まさに〝文化財の宿〞と呼ぶにふさわしい「新井旅館」。館内では文化財ガイドも用意。その興味深い案内に耳を傾けてみるのも一興だろう。
文化人たちが馳せた思いにそっと寄り添う。
日々刻々とその表情を変える修善寺の自然を望む客室。かつて過ごした文化人たちはなにを思ったのか。そんなことを考えながら、優雅なひとときを刻みたい。大正5年に建てられた、木造2階建て数寄屋づくりの準特別室棟「桐の棟」(国登録有形文化財)。池の景観を取り込んだ人気の高い客室だ。窓から眺める庭園は、まるで水上にいるかのよう。客室からは、館内の敷地を流れる清流・桂川のせせらぎを間近に感じられる。
伊豆ならではの滋味を、
多彩なメニューで味わう。
「金目鯛のしゃぶしゃぶ」「あわびの踊り焼」「サザエの磯焼」など、多彩な伊豆名産の魚介を食すことができる。また、静岡のブランド牛を使った「伊豆牛ステーキ」や天城の本山葵をアボカドと巻いた「天城寿司」など、魚介以外の名産品も充実。月ごとに旬の味わいを満喫できる多彩なメニューが揃う。創作料理も見逃せない。
「伊豆ならではの山の幸・海の幸をふんだんに使った会席料理」
これまでに数々の受賞歴を持つ料理長自慢の会席料理コース。