韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#13

レートがよくなったのでソウルで牛焼肉!

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 1,000円をウォンに両替しても10,000ウォンにならない時期が長く続いたが、久しぶりに10,000ウォンになり、今のように10,500ウォンくらいになると、しばらく我慢していたものが食べたくなるはず。そう、焼肉である。

 日本人から見れば我が国は今も「焼肉の本場」なのだろうか? 私のまわりには日韓を行ったり来たりする日本人が多いが、彼らの多くはこう言う。「サムギョプサル(豚バラ焼肉)はともかく、牛焼肉はやっぱり日本だな」と。

 

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筆者の地元、江東区の遁村市場にある精肉店系の人気店『シンフン精肉百貨店』

日韓の焼肉のちがいをおさらい

 韓国の焼肉と日本の焼肉は、客席で肉を焼くという形式が同じなだけで、ちがう点が多い。まず、日本で一般的なタン塩だが、韓国ではごく一部の店にしかない。日本では網を汚さないために、最初にタン塩を頼むのがなかばルールのようだが、韓国の繁盛店では少しでも網が汚れたら、店員がすぐに交換してくれる。

 また、客席にタレが用意されている店はほとんどない。日本では焼いた肉を直接口に運ぶと「アチチ」となるので、いったんタレに浸して冷ますと聞いたが、韓国ではサンチュやエゴマの葉で包んで食べるのが普通。タレも塩、ゴマ油、味噌など、何種類かが客の人数分出てくる。

 野菜の価格が高騰したため以前ほどではないものの、韓国では、水キムチ、キノコ、タマネギ、ネギ、ポテトサラダ、大根スライス、青唐辛子など、つきだしが豊富だ。そのため、「こんなもの頼んでいないのに」とあわてる日本人がいまだにいる。無料でお代わりもできるが、最近、精肉店系の焼肉店ではいい肉を安く提供するため、つきだしを有料(5,000ウォン程度で食べ放題)にしている店もある。

 

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精肉店系焼肉店では肉を安く提供するため、つきだしは少なめ。右手の野菜は有料

 

 韓国と日本の牛肉では肉質もちがう。韓国の牛肉は日本のそれと比べるとやや硬い。最近は日本の影響かやわらかい霜降りをありがたがる韓国人が増えたが、それでもまだ「噛み味を楽しんでこそ肉」と言う人が少なくない。私もそのひとりだ。そもそもメニューに「上」とか「特上」というメニュー表示がない。

 ここ数年、日本ではきれいにサシ(上質な脂身)が入っている肉を敬遠し、赤身肉を好む人が増えたと聞いたが、その傾向は韓国にもある。乙支路3街の路地裏にある私の行きつけの『統一チ』では、国産牛の赤身の多い部分を小さめに切って出してくれるので、酒のつまみに最高だ。

 

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乙支路3街駅辺りではしご酒をするときに立ち寄る『統一チプ』。5番出口近く

観光地にある焼肉店は安くない

 日本の特上カルビのようなやわらかい霜降り肉が激安で食べられると期待して韓国にやってくると、がっかりすることになる。もはや韓国の牛焼肉はけっして安いとはいえず、ソウルでは国産のカルビやトゥンシム(ロース)が200グラム程度で30,000ウォンを超える店も珍しくない。ここ数年、何度か訪日して気づいたが、日本は10年くらい前と比べ外食店の料理の価格が下がっていて、焼肉店も予算に合わせて店が多様化していると感じた。

 韓国の牛焼肉は日本からの旅行者にとっても高級料理のひとつになった。それでもつきだしがたっぷりサービスされるので、旅の途中で一回だけぜいたくをしようかというときにはいいのかもしれないが。

 「肉を食べた!」という満足感を得られるのは日本の焼肉のほうかもしれない。韓国の焼肉はサンチュなどの葉で巻いたり、ネギやニンニク、豆モヤシや大根スライスなどを足したりするので、「何を食べているかわからなくなる」とか、「身体にはいいのだろうが、野菜で腹がふくれているような気もする」と言う人もいる。

精肉店系の焼肉店を目指す!

 ソウルで2、3泊するうち1回は牛焼肉を食べたいという人には、先述した精肉店系の店をおすすめする。ソウル中心部には少なく、郊外のほうに多いが、宿から地下鉄で30分以内なら、わざわざ出かける価値がある。カルビやロースが1斤(ハンクン、約600グラム)20,000~40,000ウォン程度。一般のガイドブックや旅行会社系のサイトに載っているような店はこの1・5~2倍はするだろう。

 

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精肉店系焼肉店の盛り付け。左がトゥンシム(牛ロース)、右がサムギョプサル

 

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精肉店系焼肉店のトゥンシムとチャトルパギ(牛あばら肉の脂肪の多い部分)のセット。計600グラムで38,000ウォン(約3,600円)

精肉店系焼肉店の探し方

 宿がソウル中心部から離れている場合は、宿の人に、

「가까운 곳에 정육점이 하는 소갈비집 가르켜 주세요」

 カッカウン ゴセ チョンユッジョミ ハヌン ソカルビチプ カルキョ ジュセヨ

(近くで精肉店がやっている牛カルビの店を教えてください)

「가까운 곳에 싸고 맛있는 소갈비집 가르켜 주세요」

 カッカウン ゴセ サゴ マシヌン ソカルビチプ カルキョ ジュセヨ

(近くで安くて美味しい牛カルビの店を教えてください)

 

 と聞くか、上記のハングルを見せて、教えてもらうといい。

 ハングルが読めるなら、NAVER지도などの地図サイトで、「정육식당」(精肉食堂)や「정육백화점」(精肉百貨店)などで検索すると、位置や店の情報を得ることができる。

 また、宿の近くにガイドブックには載っていない繁華街があったら、散歩がてら歩いてみよう。混雑している庶民的な焼肉店を見つけたら、迷わず入るべし。今の時期なら韓国人が短パンにTシャツ姿でリラックスして焼肉を楽しむ姿が見られるはずだ。

 

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精肉店系は飾り気のない店が多い。たいてい店先にショーケースがある

 

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精肉店系では日本では気軽に食べられなくなったユッケを出す店も多い。150グラムで15,000ウォン(約1,400円)程度

 

 

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「韓国!新発見」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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