究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#13

イラン旅行術〈2〉宿、見どころ、食事について

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 危険なテロ支援国家という一方的な報道ばかりのイランだが、実際に旅してみると親日的で、国境地帯をのぞいて治安もいい。それなりに発展していて旅もしやすいのだ。そんなイランを歩く際のポイント、後半をお伝えしよう。

 

ホテルの数はあまり多くない 

 イランの宿は少ない印象だ。とくに外国人バックパッカーが好んで泊まるようなドミトリーのあるホステルやゲストハウスは少数。安宿街という存在もない。
 主要都市ならドミトリーのある宿が見つかるが、1泊1000円ほど。同じくらいの料金か少しプラスすれば、シングルの部屋に泊まれるので、そちらを選ぶ旅行者も多いようだ。
 安宿と言っても設備はそう悪くなく、小ぎれいで、狭いがWi-Fiくらいはある。シャワーやトイレは共同のことも。
 中級どころだと3000円くらいから見つかるだろうか。シングルもしくはツインで、ホットシャワー、Wi-Fi、エアコン、冷蔵などがある。床にイラン特産の絨毯が敷かれていたりもする。紅茶とナン、バター程度の朝食がついていることもある。
 どのホテルでもWi-Fiは遅かったり、ロビー周辺でしか使えなかったりするので注意。宿泊料金はダメモトで頼んでみると下がることもあるので、言ってみるといいかもしれない。
 日本人宿とまではいかずとも、日本人が集まっているのはテヘランのマシュハド・ホテル、イスファハンのアミール・カビール・ホテルだろうか。
 なおホテル予約サイトはほとんど使えない。イランはこの手の国際的なサービスからは締め出されてしまっているからだ。ホテルのホームページがあればそこから予約するか、あるいはバックパッカーの王道らしく飛び込みでも大丈夫だろう。

 

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テヘランの安ホテル。バスルームはついている。これで2500円ほど

 

 

中世の様子を伝えるバザールを歩く 

 とにかく印象的であるのは、どんな街にもあるバザールだろう。生活用品や身のまわりの雑貨、食べ物、絨毯をはじめとした伝統工芸品、スマホまわりやドローンなどの電子機器まで、ありとあらゆる店が軒を連ねる。
 日本の商店街だったらチェーン店やコンビニに侵食されてしまうところだが、イランは小規模な業態を守る店や、家族経営が多い。小さいながらも個性豊かな商店がぎっしりと続く。道は歴史を物語る磨り減った石畳。見上げればアーチ型の屋根で、ところどころステンドグラスから柔らかな光が差し込んできたりもする。迷路のように入り組む路地を行き来する買い物客や、荷を運ぶ大八車、ヤカンひとつで営業している茶屋……そのたたずまいは、はるか中世から変わっていないともいわれる。タブリーズのバザールは1000年以上の歴史を持つ世界遺産だ。我々の大先輩たる旅行家、マルコ・ポーロや、イブン・バットゥータも訪れたという。

 

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シーラーズのバザールで絨毯を商う。先祖代々、続けてきたのだろうか

 

インスタ栄えスポットもある! 

 世界遺産はそれこそ目白押しだ。なにせ偉大なるペルシャ帝国の末裔なのである。人類最古の文明を生んだメソポタミアの一端がここにあるのだ。紀元前1250年に建造された階段状のピラミッド、チョーガ・ザンビールであるとか、紀元前6世紀に栄えたペルシャ帝国の首都パサルガダエ跡など、非常に古いものがいくつも現存する。世界史が好きならたまらないだろう。
 有名どころはふたつ、ペルセポリスとイスファハンだ。マケドニアのアレクサンダー大王に滅ぼされた王都ぺルセポリスは、炎上し焼け落ちた当時のまま砂漠の風に吹かれている。17世紀に「世界の半分」と呼ばれるほど栄えたイスファハンでは、王の広場を巡りたい。緑と噴水が広がる壮麗な広場を囲むのは、いくつものモスクや宮殿、それにバザールだ。どの建物も細やかな装飾、青く澄んだタイル画が鮮やかだが、ほとんど往時の姿をとどめているのだ。
 ここ数年ではインスタ栄えスポットも増えてきた。城や宮殿などのモザイク画をバックに撮影してインスタグラムに投稿するのがイラン女子には人気だ。外国人にも評判となっているのがシーラーズにあるナスィーロル・モルク・モスクだ。このモスクは壁面いっぱいにステンドグラスが使われており、日が差し込むと絨毯の上にカラフルな模様をつくりだす。幻想的なのだ。モスクというと厳粛なイメージだが、ここでは誰もがスマホを掲げて楽しんでいる(ただし礼拝時はのぞく)。

 

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砂漠の中にかつての王都の跡がたたずむペルセポリス

 

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王の広場の一角、シェイフ・ロトゥフォッラー・モスクの内部。ドームのタイル装飾はイラン芸術の至宝であり世界遺産

 

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ナスィーロル・モルク・モスクで踊るイラン女子は妖精のようだった

 

 

豊かな食文化を堪能しよう 

 食事はいける! 肉モノが多いのだが、味つけはクドくないし辛くもない。食べやすいのだ。それに、つけあわせにサラダがたっぷり添えられたりするので、肉だけということもない。沿岸部や河沿いでは魚も豊富だ。
 代表的なメニューは、日本でもおなじみケバブだろう。羊肉が多い。ライスとセットになった「チェロ・ケバブ」は、そのへんの食堂からバスターミナル、駅など、どこにでもあるので、旅の間はよく食べることになるはずだ。
 煮込みも多い。これがいい味わいなのだ。とくにアーブグシュトだ。壷の中に、肉や豆、トマトやじゃがいもなどの野菜を入れてじっくり煮込んだもので、これがナンと実によく合う。
 タブリーズあたりの西部では、でっかい肉団子キョフテが絶品だ。羊や牛のひき肉とスパイス、玉ねぎを練り上げている。かみしめると肉汁があふれる。
 朝食では、地元のヨーグルトとハチミツを、ナンと一緒に食べ、熱い紅茶(チャイ)で流し込むような食堂が良かった。地元のおじさんたちの朝の社交場だ。
 そんな食堂がいちばん旅を感じられる。ときには少し値が張るが、絨毯の敷かれた小部屋に分かれている伝統的な家屋を模したレストランにも行ってみたい。靴を脱いで上がりこむスタイルだ。観光客向けの店も多い。値段はメニューにもよるが、ローカル向けの食堂で500円~、ちょっとしたレストランで1000円~。
 安くサクッと済ませようと思うとファストフードばかりになってしまう。ハンバーガー、ホットドッグ、スパゲティの類はやたらに多い。そして量もスゴい。200円~。この手のものばかり食べて「イランのメシはいまいち」というバックパッカーもいるが、もう少し地元の料理も試してほしいものだ。
 街角では絞りたてのザクロや人参を使ったジュース、ヨーグルト、自家製アイスクリームも並ぶ。そしてなにより、紅茶は旅の供になるだろう。道端ではあちこちに紅茶売りがいて、街歩きの疲れを癒してくれる。チャイハネという伝統的な喫茶店では水タバコと紅茶を楽しむおじさんたちの姿がある。外国人はやや気後れするが、入ってみると歓迎されるものだ。
 なお厳格なイスラム国家なので、酒は飲めない(ことになっている)。ノンアルコールビールは売っている。タバコは大丈夫だ。

 

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どこでも食べられるチェロ・ケバブ。ライスにはバターを溶かして食べる

 

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でっかい煮込み肉団子キョフテはおすすめ。具がみっしり詰まっている

 

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ちょっと良いレストランで紅茶を。お茶菓子つき。黄色い棒は砂糖菓子で、紅茶に溶かしながらいただく

 

(次回に続く!)

 

 

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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