韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#12

仁寺洞の東、楽園商街と鍾路3街の穴場

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 先々週(5月上旬)の土日、名古屋で行われた韓国旅行講座は、有料(6900円!)にもかかわらず、愛知や三重、そして関東や関西から40名以上の方にご参加いただき、大変感激した。今回は名古屋でも披露したソウルの鍾路3街周辺の穴場情報をお伝えする。

 

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名古屋での講座終了後、著作へのサインに応じる筆者(左端)

韓国版かけそばが190円! 知る人ぞ知る地下市場

 外国人観光客が集まるおしゃれな仁寺洞と、ソウルのおじいちゃんが集まる鍾路3街を隔てる楽園商街というビルがある。タプコル公園側から見ると、ビルの1階がトンネルのようになっていて、クルマが出たり入ったりするあのビルだ。かつては財界人や芸能人が多く住んだ住商複合ビルで、70年代の“六本木ヒルズ”と言えなくもない。

 

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鍾路の大通り側から見た楽園商街のビル。タプコル公園はこの右側

 

 ビルの周りを半周もすると、青地に白抜きの文字で「지하시장」(チハシジャン/地下市場)と書かれた看板がいくつか見つかる。その下の階段を降りると、生鮮野菜や精肉店、食器や衣類の店が連なる市場らしい光景が広がり「えっ!」となる。ここが韓国で初めて地下にできた市場だ。中央部には素材もデザインも不統一なテーブルが並べられた飲食街になっている。飲食店は数軒あるようだが、その境界線は段ボール箱などで大ざっぱに仕切られているので、ひとつの大型食堂のように見えなくもない。

 中高年男性が昼間からマッコリをうまそうに飲んでいるが、タプコル公園に集まるおじいちゃんと比べると、年齢層はやや若いので、相席になっても威圧感が少ない。

 

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地元のおじさんたちとともに気がねなく昼酒が楽しめる地下市場

 

 ここはなにしろ食べものが安い。酒のつまみになるモドゥムジョン(チヂミの盛り合せ)が5000ウォン(約470円)とは驚きだ。

 また、日本で言えばかけそばに当たるチャンチククス(素麺)が2000ウォン(約190円)。ボリュームは日本のかけそばの1.5倍はあり、ちゃんとキムチも添えられる。マンドゥクッ(水餃子)は3000ウォン(約290円)、暑いときにさっぱりといただけるが栄養価も高いコンククス(豆乳スープ麵)は4000ウォン(約380円)と、いずれも破格だ。

楽園商街周辺はリーズナブルな飲食店がいっぱい

 楽園商街のビルの周囲、特にタプコル公園側には良心的な価格の飲食店が集まっている。その代表が「ソムンナンチプ」。この店は牛肉でダシをとったスープで大根の葉と白菜の葉、それと豆腐ひと切れを煮込んだスープだけで60年間勝負している。創業者は朝鮮戦争のときに北側から避難してきた人で、「飢えることがどれだけ恐ろしいか身に沁みしているので薄利多売を守り続けている」というから泣かせる。

 

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ソムンナンチプのスープとご飯とカクトゥギ(大根キムチ)

 

 タプコル公園裏側(北側)の脇にある「ユジン食堂」も人気店だ。こちらも北側からの避難民が始めた店で、いまどき専門店なら1万ウォンは下らない冷麺が7000ウォン(約670円)で食べられる。麺はそば粉がきいた本格派だ。

 

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ユジン食堂の本格派冷麺。スープはあっさり、麺は爽やかにそば粉が香る

 

 梅雨どきは店の前に設置されるテント席に陣取り、雨音を聴きながら、ピンデトック(緑豆チヂミ)やスユク(茹で豚肉)各6000ウォン(約580円)をつまみに一杯飲み、冷麺で〆る“先酒後麺”を楽しむのも乙だ。

 

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雨の日でもテントの席が人気のユジン食堂。右手がタプコル公園

 

大衆酒場で各地のマッコリが格安で楽しめる

 楽園商街のビルの東側に、地下鉄「鍾路3街」駅の3~6番出口が点在する通りがのびている。この辺りも安くてうまい店の宝庫だ。最近私が日本からの旅行者をよく案内するのが「ヘンボッカンチプ」。

 ここはチヂミの店だが、何年も前から釜山名物の伝統マッコリ、金井山城(クムジョンサンソン)を置くなど、マッコリにこだわっている。最近は全羅北道の井邑(ジョンウプ)のマッコリ名人が醸すソ・ミョンソプまで出すようになった。

 

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ヘンボッカンチプは釜山の金井山城マッコリ(左上)を常備

 

 前者は伝統麹を使い、手作業にこだわったマッコリ。濃厚で力強い甘味と酸味がある。ボトルに充填されてからどれくらいのタイミングで飲むかによって、味や香りが変わってくる、いわば“一期一会”のマッコリだ。これを釜山から遠く離れたソウルで、ひと瓶4000ウォン(約380円)で出す店を私は知らない。

 後者は甘味料を使っていない野趣のあるマッコリ。甘さ控えめなので、いくらでも飲むことができる大人の酒だ。これがたったの5000ウォン(約470円)とは、おしゃれなマッコリバースタイルの店のオーナーが怒り出すかもしれない。

 他にも、人気のグルメドラマ『食客』で話題になった徳山マッコリ、扶余の名産である栗を使ったアルパムマッコリ、京畿道の名酒ジピョンマッコリなど、個性的なマッコリを常時5、6種類置いてある。

 店は鍾路3街駅の3番出口と4番出口を結ぶ歩道の中間の向かい側にある。外観からはとてもマッコリにこだわっている店とは思えない。韓国でよく見られる、一軒の店が儲かったので隣の店舗も借り、壁をぶち抜いてフロアを広げたタイプ。そのくせ外の看板は二つに分かれたままという大ざっぱさだが、それがいかにも韓国の酒場らしくていい。特に歴史があるわけではないのだが、いつもにぎわっていて、今ではソウルを代表する大衆酒場のひとつと言っていい。

 

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看板の緑色も微妙に不統一なので、2軒のように見える

 

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昼間はおじさん客が多く、夜は若者が押し寄せるヘンボッカンチプ

 

 楽園商街と鍾路3街駅周辺は、地下鉄の出口がある表通りだけでなく、路地裏にもお店が隠れていて、私でもすべてを開拓しきったとは言えない。みなさんもぜひ、このエリアをくまなく歩いて、なじみの店をつくってもらいたい。

 

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「韓国!新発見」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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