究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#12

イラン旅行術〈1〉治安、航空券、ビザ、ネットについて

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 意外かもしれないが、日本人にとってイランは旅がしやすい。とっても親日的で、そこそこ発展しており、一部地域をのぞいて治安も良好だからだ。そしてペルシャの偉大なる歴史と、果てのない砂漠は旅人の心を打つ。中世そのままのようなバザールにも圧倒される。食事もいける。
 だが、情報はあまり多くないし、ときどき流れるイランのニュースはネガティブなものばかり。気後れしてしまうかもしれないが、旅している日本人バックパッカーはいるのだ。そのほとんどは安全に、そして満足して旅を終える。そんなイランの旅行情報を紹介していこう。

 

 

旅をしていて不自由や危険は感じない

 

 多くの日本人にとって、イランは遠い上に、印象の良くない国かもしれない。「国際社会に背を向けたテロ支援国家」「アメリカとガチで敵対しているヤバイ国」……メディアの報道もそんなところが中心だから、危険でとても旅行なんてできないだろう、と思っている日本人ばかりだ。
 しかし多くのイラン人にとって、日本の印象はとても良く、実際に旅行してみると行く先々で歓迎されるのだ。「アメリカとガチで敵対したヤバイ国の先達」「廃墟からの経済発展」と、ひと昔前のイメージではあるがリスペクトしてくれるのである。
 またバブル期の人手不足の折には、たくさんのイラン人が日本の製造業の現場で働いた。そんな人々から日本語で声をかけられ、親切を受けることもあるだろう。
 そして治安は良好だ。
 イランはイラクやアフガニスタンと隣接しているので、このあたりごっちゃにされて紛争の絶えない危険地帯とカン違いされているフシもあるのだが、まったくそんなことはない。戦闘が起きているわけでもないし、荒廃した街並みが続く世界でもない。夜間の外出も危険は感じない。ぼったくりやサギといった旅行犯罪もめったにない。
(ただしイラク、アフガン、パキスタンとの国境地帯は別で、外務省から退避勧告が発出されている)
 首都テヘランをはじめ高層ビルの立ち並ぶ大都市も多く、その足元では伝統的なバザールが広がる。またヨーロッパ調の建築物もたくさんある。そして道行く人々の顔立ちはアーリア系なわけで、ヨーロッパのどこかの国にいるような錯覚を感じることもある。とくにトルコやアゼルバイジャンに近づくほど、そんな印象が強くなる。
 バザールに密集する小店舗に代表されるように、イランでは家族経営、小規模経営が中心だ。そのため大型モールは少ないしコンビニもないが、旅に必要なものは身のまわりの品からスマホ、PC関連までバザールなどで買えるだろう。いくつかの都市では地下鉄が走るなどインフラも整い、体感的にいうとタイやマレーシアあたりとさほど変わらない発展度だろうか、と思った。

 

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イランを歩いているとやたらに声をかけられるだろう。「写真を撮ってくれ!」と言われることも多い

 

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バザールはどの街でもある。中世からそのまま残っている遺跡のようなバザールも

 

 

航空券とビザはどうするか?

 さて、そんなイランまでの直行便は2018年末の時点では存在しない。乗り継ぎとなる。ドバイ経由のエミレーツ航空、ドーハ経由のカタール航空、モスクワ経由のアエロフロート、イスタンブール経由のトルコ航空あたりで首都テヘランに入ることになるだろう。成田から安いチケットで往復10万円ほど。
 フライト&経由の時間を合わせて15時間から便によっては30時間もかかる距離。こうなるとLCCで刻んでいくとむしろ高くつく。それにLCCの狭い座席で長距離を飛ぶのもけっこう疲れるものだ。日本からクアラルンプール、ムンバイ、ドバイなどを経由してLCCでつなぐ手もあるが、フツウにレガシーキャリアで行ったほうが安くて快適だ。LCCはやはり短距離でその威力を発揮する。
 イラン入国に際して日本人はビザが必要だ。が、到着した国際空港でアライバルビザが取得できる。飛行機を降りたら空港内のVISAカウンターに向かい、まずはイラン国内用の旅行保険に加入する必要がある。これが14米ドル。保険代金の支払い証明書と、さらにビザの申請用紙に記入して、パスポートとともに窓口に提出。レシートを渡されるので、すぐ隣にある銀行のカウンターにてビザ代金を払い込み。82米ドル、痛い。高い。この領収書を、ビザのシールが貼られたパスポートと引き換える。これで30日間の観光滞在が許可されるのだ。
 手続き自体はスムーズだし、係官も親切だが、アライバルビザ取得の外国人が多いフライトが集中すると大行列となり、長時間かかることもある。
 日本であらかじめ取得するという手もある。在日イラン大使館のウェブサイトでeビザの申請をした後に、送られてきたメールをもとに手続きをする。東京・麻布の大使館に直接出向いてもいいし、郵送でもOKだ。申請料金2700円と、アライバルビザに比べて格段に安い。通常1週間ほどで発給されるが、4100円を支払うと1~2日で発給してくれるサービスもある。

 

 

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チキンのスパイス煮込みとピクルス、ザクロを散らしたさわやかライスと野菜スープ。これで7米ドルくらいだった

 

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アケメネス朝ペルシャの首都だったペルセポリスは紀元前331年、マケドニアのアレクサンダー大王に破壊され、そのまま現在に至っている

 

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テヘラン、シーラーズ、イスファハンなどには地下鉄もあり旅行者には便利

 

 

ネットの規制をかいくぐるには?

 いざ入国!
 と、同時にタクシーの客引きが登場するのは他国と同様だが、それほどしつこくはないしボッタクリというわけでもない(断言はできないが)。心配なら空港までやっと接続した地下鉄もある。ただし本数は少ない。
 その前にネット環境だろうか。外国人が泊まるようなホテルやレストラン、カフェではWifiが飛んでいる。空港や街角ではSIMカードが売っているので買っておこう。ナゼかタクシーの客引きが売りつけてくることもあるが、使える日数とか容量などはよくわからなかったりするので注意。空港内のSIMカードブースで購入して、そこで店員にアクティベートまでぜんぶ任せてしまうのが安心だ。
 ……で、ここでひとつ問題がある。「イランは国際社会に背を向けている」わけでは決してないのだが、大ペルシャの栄華の歴史もあってか、独自路線を歩む国である。アメリカとは険悪だ。とくにトランプ大統領が就任してからは、お互い噛みつかんばかりの剣幕で罵りあっている。テヘラン市内にはトランプ大統領をディスるポスターやらスローガンやらがあふれ、国民を鼓舞している。けっこう過激なのである。
 というわけで、アメリカをはじめ西側のネットサービスが一部、使用できない。facebook、youtube、twitterなどだ。google、Instagram、LINEあたりは使える(イランでも女子にはインスタ栄えが流行している)が、これも国際情勢次第ではどうなることやら、である。
 そんなイランでネット難民にならない方法がVPN(Virtual Private Network)だ。ネットワーク内に安全性の高い専用回線をつくる技術のことである。これを利用し、イランからまず他国にアクセスすることで、規制を回避できるのだ。
 イラン→facebook ではハジかれてしまうが、イラン→VPNサーバー→日本→facebook ならアクセスできるというわけ。
 なのでイラン旅行の前には、まずVPNサーバーに接続できるソフト、アプリを、手持ちのPC、スマホに入れておこう(イランに入ってからだとVPNサーバーのサイト自体につながらずダウンロードできない可能性がある)。
 で、現地ではこのアプリやソフトを使ってVPNサーバーに接続。サーバーは日本や欧米、アジアなどさまざまだが、速度が速いところを選ぼう。接続完了後はいつもと同じネット環境が得られる。
 ただVPNサーバーとの接続はよく切れる。そのたびにつなぎなおす必要がある。やたらに重たいこともある。動画を見たり大容量のデータを送受信するのは難しいかもしれない。それでもSNSくらいならなんとかなるだろう。
 VPNサーバー接続のサービスは有料、無料といろいろだが、代表的なものは以下。

セカイVPN
https://www.interlink.or.jp/service/sekaivpn/

筑波大学VPN Gate 学術実験サービス
https://www.vpngate.net/ja/

vpnネコ
iOs androidのストアより

 やっかいなこともあるが、イランはそれを乗り越えて旅をする価値のある国だ。次回からはさらにイランの魅力をお伝えしよう。


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トランプ氏やイスラエルを叩くポスターはあちこちで見かける

 

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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