韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#117

「韓国ロス」のみなさんへ〈11〉中秋節の市場で

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それでも季節は巡る 

 感染症におびえながら過ごす日々が半年以上続いているが、今年も秋夕(中秋節)は巡ってきた。

 2020年はコロナ禍で里帰りする人が少なく、自宅で休暇を楽しもうという人が多い。旧正月や秋夕などの名節のときは夫の実家などでの家事負担が増大するキム・ジヨン(女性であるがゆえの苦難を描いた映画『82年生まれ、キム・ジヨン』の主人公)たちは、ほっとしているだろうか。

 秋夕当日の前夜、小雨降る地元の生活市場を歩いてみた。

 旧正月と並ぶ名節の前の日だというのにシャッターが閉まっている店が少なくないが、人出は多い。

 果物が美味しくなるこの時期、リンゴ、梨、栗、柿、葡萄、晩生種の桃などが放つ蜜の匂いが、湿った空気のなかでいっそうかぐわしい。

 

ソウルの東のはずれ、江東区吉洞のポッチョリ市場を行き交う人々

 

 コロナ禍は韓国にとっては、映画『国家が破産する日』(U-NEXTやprime videoで視聴可)にも描かれた1997年のIMF危機以来の国難だ。この半年で人生が大きく変わった人も少なくない。食べていくことへの不安は日に日に増大している。

 猛暑や台風で野菜が高騰している。市場を歩いていると、それが身にしみてわかる。とくに白菜が高く、今年は越冬用キムチを漬けることをあきらめる人も多そうだ。

 外食や旅行を控える代わりに、家で美味しいものを食べたいが、先行きが不安で、どうしても財布のひもは固くなる。

 それでも、いつもよりちょっとぜいたくな食材を買い、カートを引いて帰るお母さんらしき人たちの後ろ姿を見つめ、家族団らんの様子を想像すると胸が熱くなる。

 90年代前半、今の私と同じくらいの齢で亡くなった母を思い出した。ちょっとぽっちゃりしていた母は食べることが大好きだった。名節のときは台所に立ちっぱなしで、故郷・黄海道(今の北朝鮮領)由来の料理を作ってくれた。その厚ぼったい手が懐かしい。

 

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韓国の名節には欠かせない餅

 

(つづく)

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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