韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#116

「韓国ロス」のみなさんへ〈11〉

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 東京よりだいぶ北に位置するソウルにはすでに秋らしい風が吹いている。日本もここ数日暑さがやわらいだと聞いた。季節の変わり目は体調を崩しやすいので、日本のみなさんもご油断なく。

 今回も前回に続き、20年前のソウルの写真を見ながら、変わったこと、変わらないことについて書きたいと思う。

 

明洞の日本語看板「物価」 

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2000年2月に撮影した明洞のイタリアンレストラン「ソレント」の看板

 

 上の写真は2000年に明洞で撮影したもの。2年後に日韓ワールドカップを控え、訪韓日本人が目に見えて増えていたころだ。

 韓国で見かけるとんちんかんな日本語はよく話題になるが、これは極め付きだ。上から読んでみよう。

 エビクリームはОK。カルボナラもオンビキが抜けているが読解可能。スハケーノとかスハナーノとあるのは、おそらくスパゲティのことだろう。ツースドはトーストの誤記。ではコソヒネツョソは? かなり悩んだが、コンビネーションの誤りと推察した。ソとン、ツとシは日本語を学んだ韓国人なら判別の苦労がよくわかる。ミートソースはОK。キムチも合っているが、イタリアンと思われる店でなぜキムチを入れたのだろうか。最後の「いらっしゃいませ」は促音も拗音も完璧だ。

 2000年だからネットの翻訳機能も使えたと思うが、どうしてこうなったのだろう? 自称日本語通に訳をさせたらこうなった? いや、「ウチは日本語も対応します」というアクリル看板業者にまかせた結果という可能性も否定できない。今ならSNSにアップされて笑いを提供しているだろう。

 当時の韓国人から見た日本は、かなり先を走るランナーのような存在だった。それをくやしいと思う韓国人もいたし、今に見ていろと思った韓国人も多かっただろう。しかし、常に先頭を走るというのは大変なことである。コロナによって経済や文化活動か停滞している今、なおさらそう思う。

 あれから20年。今でこそ韓国が日本に追いついたといわれる分野もあるが、私は日本の背中を見ていた時代が嫌いではなかった。いや、むしろ懐かしい。

 

フルーツの盛り合わせ 

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今なら「90年代風フルーツの盛り合わせ」のようなレトロ商品として売り出せそう

 

 これも2000年の写真だ。明洞の東隣、忠武路駅前の居酒屋っぽいバーで撮った。ステンレスのトレーの上にフルーツが盛り付けられている。左から皮を残して切ったリンゴ、不揃いにカットしたパイナップル、梨、幾何学模様にカットしたのに盛り方が雑で台無しになっているスイカ、右端は再び梨だ。その上には韓国ではフルーツ扱いされているプチトマトが散りばめられている。

 80~90年代に韓国にハマった日本人には、「日本にはないアジアっぽさが魅力」とか「喜怒哀楽の激しい韓国人がいとおしい」などと言う人が多かった。それは日本の整然とした街並みに憧れ、日本人のように静かに話したいと思っていた韓国人にはまったくピンとこない話だったが、私はそうした日本人の視点に影響を受けたため、韓国らしさ、韓国人らしさというものにこだわるようになった。当時まだ注目されていなかった韓国の田舎町を歩いたり、時代遅れの酒だったマッコリを追いかけたりしたのもそのせいだ。今も、あか抜けないもの、野暮ったいもののなかに「美」や「粋」を見出そうとしている。

 あれから20年。韓流ドラマやK-POPブームなどを経て、今や日本人が韓国に“おしゃれ”や“洗練”を求めてやってくるようになった。時代は変わったのだ。とくにカフェやスイーツ文化は垂涎の的らしい。

 しかし、本当にそれが韓国文化なのだろうか? 野暮ったいフルーツの盛り合わせの写真を見ながらそう思った。

 

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あか抜けない韓国、野暮ったい韓国で思い出したのがこの写真。ビル改修用だろうか。トラックの荷台から店舗の前にブロックを直接降ろし、歩行者をおびやかしている。2000年の明洞ではこんな光景も珍しくなかった

 

(つづく)

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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