台湾の人情食堂

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#113

台湾のことば〈2〉

文・光瀬憲子

 台湾を旅しているとき、現地の人たちの言葉の違いに気づくことがあるかもしれない。台湾で話されている言葉は1つではない。台湾ではどんな言葉が、どう使い分けられているのかを説いていく連載第2弾は、台湾の「国語」について語りたい。

 

台湾の国語とは? 

 台湾人の多くが母国語とするのが「台湾語」だということは前回書いた。これに対して、台湾の「国語」というのはいわゆる「北京語」である。

 私たちが「中国語」と呼ぶものには、実は多くの種類があり、 北京語も、広東語も、台湾語もすべて「中国語」に含まれる。そのなかでも標準とされているのが北京語であり、世界でもっとも多く話されている中国語である。

 代表的なのはニーハオ(こんにちは)、シェシェ(ありがとう)、ザイジェン(さよなら)など。英語では「マンダリン」と呼ばれている。

 台湾における「国語」はまさに「国が定めた言語」だ。もともと人々が台湾語を話していたところに、大陸から台湾に渡ってきた蒋介石の国民党政府が、「今日から北京語を国語にします、みなさん国語を話しましょう」と定めたのである。台湾で国語(北京語)が広められるようになったのは、1946年に「国語推行委員会」が設立された頃からだ。

 

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中国大陸から200万人を率いて台湾に渡った蒋介石を顕彰する台北の中正記念堂

 

 それまで、つまり台湾を支配していた日本が戦争に負けるまでは、台湾語と日本語が使われていた。50年間の日本時代を経験した人たちは、家庭では台湾語、学校や職場では日本語、というふうに使い分けをしていた。だが、当時就学していなかったり、日本人と縁がなかったりして、日本語をあまり使わなかった人も多い。

 終戦とともに日本人が去り、中国国民党の支配下に置かれた台湾では、中国本土の言語である北京語が使われるようになった。日本語を排除し、台湾語も極力使わず、「国語」(北京語)を推進することになったのである。

 

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田舎の食堂に行くと、日本語を使う高齢者を見かける。写真は台南の友愛市場のちまきの店。カウンターに座った高齢の客が日本語で「ふたつ」と告げ、主人もあたりまえのように「はいよ」と答えていた

 

 当時のことを台湾の高齢者から聞いたことがある。慣れ親しんだ日本語は使うことが禁じられ、母国語である台湾語も学校では禁止された。台湾語を話すと罰を受けるので、子供たちは必死で北京語を勉強したという。学校では、クラスの優等生が「国語推行委員」に任命され、台湾語を使っている生徒がいないかどうかパトロールする、といった具合だ。

 以降、台湾では北京語が「国語」と定められ、教育現場や職場、メディアなどで使われてきた。都会であればあるほど、国語率は高くなり、台北での共通語はほとんどが国語だ。学校や職場はもちろん、街中でも若者はみな国語を使う。だが、地方都市へ行くほど台湾語率が高くなり、市場やコンビニなどで台湾語が聞こえてくるようになる。

 

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首都台北でも、年配の客が多い下町の酒場などでは、台湾語をよく耳にする。写真は上が艋舺の廟脇の大衆酒場、下が大稻埕の慈聖宮の近くにある路上酒場

 

 イメージとしては、北京語=標準語、台湾語=ローカル語、といえばわかりやすいだろうか。ちょっとかしこまった場や、初対面では北京語でも、仲良くなったり、酒を飲んで打ち解けたりすると台湾語が出てくる、という人も多くいる。

 次回は台湾語と国語が台湾でどんなふうに扱われ、時代とともにどう変化しているかを見ていきたい。

 

(つづく)

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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