究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本

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#11

安宿をネット予約しつつ旅をする

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 もう飛び込みで宿を探す、かつてのバックパッカー・スタイルは古いのかもしれない。ネットを駆使して宿を確保していく人がいまや主流となっている感がある。いろいろな方法があるが、今回はgoogleを使って旅する手を試してみた。

 

 

安宿でも予約していないと驚かれる

 カンボジアのビーチリゾート、シアヌークビルを訪れたときのことだ。
 首都プノンペンからおよそ3時間と少し。セダンを使った乗り合いタクシーの運ちゃんは、シアヌークビルが近づいてくると後部座席を振り向いて言う。
「どこのホテルだ、どこで降りるんだ」
 会社にもよるが、宿泊先まで直接、運んでくれる乗り合いタクシーも多いのだ。
 とはいえ、あらかじめどこか宿を予約する旅はしていなかった。だからほかの旅行者やカンボジア人は、どこそこのゲストハウス、あの市場、そのホテルで、と降りていったが、決まった投宿先がないので目的のビーチの入口あたりで停めてもらった。
 さあて、宿を探すか。
  シアヌークビルでも、ここオーチュティルビーチは、中心部ほど騒々しくはなく、落ち着いたたたずまいのゲストハウスが並んでいると聞いていた。
 とぼとぼと歩きつつ、宿のたたずまいからなんとなく値段を想像し、どこがいいかと探し回る。こうして宿を求めてうろうろしているときは(夜中などは別だが)けっこう楽しいものだ。
 やがて、気になる宿を見つけた。庭にバナナやタマリンドの木々が茂り、素朴な木造のたたずまいも風情がある。子供たちが遊んでいる姿も見える。家族経営なのだろう。行ってみるか。
「すみませーん……」
 呼びかけに応じてすぐに出てきた宿の娘さんは、笑顔でまず言うのだった。
「予約してますよね、お名前は?」
「すみませんウォークインで。予約ないんです」
「えっ……そうなんですか、ちょっと待ってくださいね」
 慌てて家族を呼びに行く。どうも、予約が入っているぶんの部屋しかベッドメイクなどをしていないようだった。
「少し時間かかるけどいいですか?」
 申し訳なさそうに言われるが、こちらこそ恐縮してしまう。宿泊料を聞けば10ドルなのである。そのくらいの安宿でも、いまや予約してから訪れることが当たり前になっているのだ。混み合うシーズンでなくても同様だ。ホテルのホームページから直接、予約を入れる場合もあるだろうし、ホテル予約サイトを通すこともあるだろう。各宿はそれらの情報を集約して部屋の管理をしている。当たり前だがカンボジアの田舎だってモニター見ながら仕事をしているんである。
 そこにいきなり、ウォークインのイレギュラーが現れたら、確かに戸惑うと思うのだ。もちろん客商売である以上、いやな顔なんてされないし歓迎してくれるのだが、「行き当たりバッタリで宿を求める」というスタイルは、時代にそぐわないのかも……なんて思ってしまうのだった。
「安宿は予約しないのが当たり前。むしろ予約する旅行者なんていない。宿のほうも来た客から順に泊めるので予約なんて受けつけていない」そんなバックパッカー理論はもう崩れ去っている。

 

01
シアヌークビル沖合いのロン島やロン・サムレン島はバックパッカーに人気となっている

 

02
シアヌークビルではイカ焼き&カンボジアビールが至福

 

 

カンボジア辺境の安宿までも網羅されている

 で、あるなら。
 ひとつ試してみよう。例えば……次なる目的地、タイ国境ココンはどうだ。
 スマホを宿のwifiにつないで、Koh kong cheap guesthouse なんてググッてみる。そして検索結果のタブから「地図」を選ぶ。
 すると、ココンの地図と合わせて安宿がダーッと表示されるのだ。泊まる日づけから、予算の上限まで選ぶことができる。えーと、3日後から、2日ほど滞在したいし、1泊そうだな、できれば10ドル以下で……諸条件を加えるたびに、地図の表記に反映されていく。
 さらに市内の中心部で便利なところがいいな、なんて考えつつ選択肢を狭めていくと、5軒ほどの安宿に絞られた。それらを順番に見ていくと、その設備やら、泊まった人のレビューやらが出てくる。ご丁寧にグーグルさんは日本語に翻訳してくれている。機械的な訳だが、なんとなく意味はつかめる。さらに宿のホームページを持っていればそれも表示されるのでチェックしてみる。
 ここでいいかな、と思ったら「予約」に飛べば、提携しているホテル予約サイトに移行する。あとは必要事項を入力して、クレジットカードで決済する。確認要綱がメールで送られてきて、予約完了だ。街を徘徊して探し回るより、確かに楽なのである。

 

03
グーグルの回し者のようだが、宿探しには重宝したのだ

 

 

ネット予約と飛び込みを使い分けていく

 こうして2、3日先に泊まる宿を予約しつつ、旅していく。次に行く街と日取りをおおまかに決めたら、宿を当たってみる。すると数日前の「直前予約」となるから、かなりディスカウントされているのだ。booking.com、agoda、hostel worldなど、グーグルから複数の予約サイトに飛んで比較検討して、お得なプランを選べば、ウォークインよりだいぶ安い。
 そして決済はすべてカードだから、余計な現金を持たなくてもいいという利点もけっこう大きいと思うのだ。旅の資金の大半を日本の口座に置いておき、現地ATMから引き出したり、宿や交通はカード払いにして旅を進めていく。そのほうがリスクは確かに少ない。
 そして現地の宿では、これも当然ではあるのだが、しっかり予約は通っている。どんな小さな怪しげなボロ宿でも、ドミトリーだけの激安宿でも、予約サイトと提携しているなら問題なく宿泊できたし料金で揉めることも(これまでのところ)なかった。
 ただ、予約時に「なにかリクエストはあるか」という項目に、「禁煙部屋を」「ダブルでなくツイン」「アーリーチェックインしたい」などと入力したが、現地に伝わっていなかった……なんてことはあるようだ。
 こうして予約した宿のほとんどが、既存のガイドブックには載っていないことも驚きだった。さまざまな条件をかけて、厳選して検索した「安くて」「快適そうで」「評価も高い」「アクセスの良い」宿だ。実際に訪れてみると、確かにどこもいい宿なのだ。だがガイドブックには掲載されていない。
 旅行メディアの枠を離れて、個人と宿とがネットサービスを介して直接やりとりしていく時代だ。宿のほうは、ガイドブック以上に影響力を持つようになったネットでの評価がそのまま集客に影響する。一方で旅行者は、紙媒体しかチェックしていないと、いまリアルタイムで人気の宿を見落とすことになる。どうも現代のバックパッカーは、ネット世界も合わせて旅することが求められているようだ。
 とはいえ。
 あらかじめ日程が決められた中で旅することに、なにか縛られているものを感じてしまう人だっている。「明日どこに行くかわからない」「今夜の宿が決まっていない」それこそ旅の醍醐味だというバックパッカーもたくさんいる。
 だからネット予約と飛び込み、両方をうまいこと使い分けることが大事なのだろうと思う。混み合う週末とか、その国に入ったばかりの初日などは、あらかじめ宿を確保する。あるいは「ここが泊まりたい!」というお目当ての宿があるときも予約しておく。
 そうでなければ、バックパッカーは自由に旅をして、街に着いたらまず宿を探し歩くのだ。アナログなのだが、この行為は旅の原点でもあると思うのだ。

 

04
安宿のドミトリーのベッド一台からネット予約で確保できる

 

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

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