台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#108

「台湾ロス」のみなさんへ〈4〉

文・光瀬憲子

 海外旅行がままならない今、写真を通して旅行気分を味わっていただくために、新刊『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)の取材で撮った写真や動画から何枚かをピックアップ。今回は台湾の東側、花蓮から台東へのルートを振り返ってみたい。

 

 

 東台湾は西側に比べると圧倒的に人口も旅行者も少ないが、新しい発見や人々の優しさに触れる機会が多い。鳳林は客家が多く暮らす町で、彼らの文化の象徴でもある台湾花布が駅構内にあつらえてあるのが印象的だ。 月台(プラットホーム)には小学校にあるような小さな木の椅子が並べられていた。

 

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 日本時代の台湾でもこんな椅子が使われていたのかもしれない。駅前で、日本語を流暢にあやつるおじいさんに出会った。80代だろうか。お土産店の店主らしき彼は、「この駅で降りる日本人は珍しい」と目を細める。数年前、台湾全土で日本語を話す台湾人にインタビューをして、日本人の印象や日本との思い出を聞いたことがある。

 世代によってその体験談はさまざまだが、いまこうして台湾を訪れる私たちもまた、彼らの記憶の一部となって残る。台湾の人たちの温かなおもてなしに恥じない日本人でありたい。気恥ずかしくなりながら、いつもそう思うのだ。

 

赤ん坊と臭豆腐 

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 外食率8割以上とも言われる台湾では、小さい子を連れた一家の外食風景をよく目にする。これは鳳林駅から歩いて10分足らずのところにある臭豆腐の店。朝10時からニラ山盛りの臭豆腐を食べるのが鳳林流だ。

 台湾の子供たちは最初からスパイシーなものを食べられるわけではないが、こうして小さい頃から少しずつ慣らしていく。

 思えば私の娘も4歳までは台湾や上海に暮らしていた。2歳に満たないうちから台湾屋台デビューし、臭豆腐も滷味も好んで食べていた。日本では「おふくろの味」が故郷の味というイメージだが、台湾人にとっては「屋台の味」が故郷を思い出す味なのかもしれない。

 

檳榔の思い出 

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 台東でコンビニに隣接する檳榔(ビンロウ)店を見かけた。

 隣のセブンイレブンとお揃いの鮮やかな緑色の看板の前に時折バイクや大型トラックが停まり、コンビニで軽食や飲み物を買うついでに、1箱50元の檳榔を買っていく。

 台湾東部は檳榔人口が高く、都会では肩身が狭くなった檳榔売りもここでは存在感がある。昔、仕事で台湾に通っていた父から「檳榔を噛む輩とは付き合うな」と言われたことがあるが、檳榔や保力達(パオリータ/台湾版養命酒)のある空間でこそ庶民の息吹が感じられることを知ったのはここ数年のことだ。

 

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 檳榔は1粒口に含むと、苦味とともに不思議な甘みが広がり、喉のあたりがポカポカ暖かくなってくる。目が冴えて仕事がはかどるので、ドライバーだけでなく物書きにも有効だと思う。私も台湾で暮らしていたとき、徹夜仕事をしながら噛んだので懐かしくなる。

 

朝市と果実 

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 旅をすると、かならずその町の朝市に足を運ぶ。庶民の台所であり、美味しい朝ごはんが見つかるからだ。

 台東では朝市の目の前という好立地の宿に泊まることができた。色とりどりの果物や野菜はまだ並べられたばかり。人影もまばらな早朝の朝市は、湿気を帯びた野菜が美味しそうだし、蒸籠から上がる肉まんの蒸気も神々しい。

 旅行中なので野菜を買うわけにもいかないが、まっすぐ伸びた青いネギや熟れたマンゴーを見るとつい手にとってみたくなる。

 台湾はこれからが果物のおいしい季節だ。ライチやマンゴーといった南国の果実が出回り、トラックの荷台で売られる。暑さは厳しくなるが、果肉が放つ力強い香りは一陣の涼風となる。

 

(つづく)

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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