韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#107

「韓国ロス」のみなさんへ〈3〉

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 読者のみなさんの韓国ロスを癒していただくために、過去20余年の取材旅行で撮った写真を見ながら往時を振り返る企画の3回目。今回は済州道の写真から。

 

済州道の風景 2006年9月撮影 

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 まだまだ油断はできないが、日本より1カ月以上早く自粛ムードになった我が国では、気候がよくなったことも手伝って4月半ば頃からハイキングや旅行に出かける人が増えている。本土から距離のある済州道は特に人気があるようだ。

 この写真は済州の南部、西帰浦市の町なかで撮ったもの。9月の済州は暑さのピークを過ぎ、心地よい風が吹き、散歩日和だった。日焼けしたおばあちゃんたち(多くが海女さん)が孫といっしょにひなたぼっこをしていた。

 自分が年齢を重ねたせいもあるのかもしれないが、コロナ禍以来、人々の平凡な営みを目の当たりにすることに、ありがたみを感じようになった。

 14年前の写真だから、この赤ちゃんは今、中学生か高校生くらいだろうか。

 

京畿道城南市の五日市 2007年3月撮影 

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 京畿道といっても、城南市は私の住むソウル江東区から地下鉄で40分くらいで行ける。事実上のソウル郊外である。ここ牡丹民俗市場は常設市場ではなく、毎月4と9の付く日に開かれる五日市だ。朝鮮戦争を避けて南下してきた平壌の人たちが始めたといわれている。

 上の写真は3月末に撮ったものなので、寒さがゆるんだ頃だ。外で飲み食いするのが好きな韓国人がたまらずに市場に集まってきたという風情である。ちょっと今の状況に似ている。

 牡丹民俗市場はソウルに居ながらにして、地方の市場のような熱気が感じられる場所なので、日本から来た韓国リピーターを案内すると、とても喜ばれる。ヨッチャンス(歌や踊りで客寄せして、アメなどの商品を売る)と呼ばれる大道芸(写真下)が見られるのもこの市場の魅力だ。彼らは言わば韓国の寅さんである。

 

カメラが警戒されなかった時代 2003年8月撮影 

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 これは江原道旌善郡の旧・炭鉱街、古汗(コハン)駅前の市場で撮った写真だ。中央には当時30代の筆者が写っている。左側はカメラに気づき、Vサインをしながら近寄ってきた子どもたちだ。

 この頃はまだ市井の人々にカメラを向けてもイヤな顔をされなかった。インターネットやSNSが普及し、写真が即座にアップされるようになると、市場や飲食店の人々はむやみに写真を撮られることを嫌うようになった。昨年、取材した地方都市の市場では、「この市場では写真撮影はできません」と書かれた横断幕を見た。撮る側のマナーの問題なのだが、残念としか言いようがない。

 なお、上の写真の古汗は、2005年の映画『親切なクムジャさん』でデビュー以来、端役・汚れ役で経験を積み、2019年の初主演作『ガール・コップス』で大輪の花を咲かせた女優ラ・ミランの生まれ故郷である。

 

『大長今』テーマパーク 2004年12月撮影 

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『冬のソナタ』の日本での人気は大変なものだったが、当時は突発的なブームとしか思えなかった。ところが、そのすぐあとにイ・ヨンエの主演ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』が日本でも大ヒットすると、「これは大きな波が来るのでは……」と思うようになった。その後の韓流熱風の多様化は周知のとおりである。

 写真は韓国での放送が終わったあと、京畿道楊州市のMBCスタジオにできた『大長今テーパーク』を訪れたとき撮ったもの。オープンから数日しか経っていなかったと記憶している。

 最終回の感動の余韻を引きずったまま入場すると、そこには劇中、チャングムとミン・ジョンホ(チ・ジニ)に王様の命を伝えた監察内侍が、ドラマそのままの姿で来場者の案内(写真左)をしていた。

 監察内侍を演じたのは、当時、ドラマや映画の脇役やCMのモデルを行っていた李京源(イ・キョンウォン)さんだった。脇役とはいえ、人気ドラマに出た俳優が役柄そのままの姿でガイド役を演じるというのは、大変新鮮だった。同行していた日本の事務所の代表は早速、李さんにドラマ撮影秘話を書いてほしいと打診し、その1年後には『宮廷女官チャングムの誓いのすべて』(幻冬舎)という本が日本で発売された。

 韓流の黎明期。すべてがおおらかだった当時が懐かしい。

 

(つづく) 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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