韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#106

「韓国ロス」のみなさんへ〈2〉

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 読者のみなさんの韓国ロスを癒していただくために、過去20余年の取材旅行で撮った写真を見ながら往時を振り返る企画の2回目。まずは西海の離島の写真から。

 

全羅北道の仙遊島 2011年8月撮影 

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 じっとしているのが苦手な私だが、さすがにこの1カ月間は外出機会が減っている。遠出と言えるのは、講師を務めている堤川(忠清北道)の大学に打ち合わせに行ったくらいだ。

 この状況でたびたび夢想するのは地方への逃避行。それも島旅だ。

 思いついた島は群山(クンサン)の旅客船ターミナルから高速艇で1時間弱で行ける仙遊島(ソニュド)。遊歩道などがほどよく整備されているので、自転車で走り回るのが楽しい。マッシモ・トロイージとフィリップ・ノワレ主演の映画『イル・ポスティーノ』の舞台(ナポリ沖の小島という設定)に似ているといえばイメージがわくだろうか。仙人が遊ぶ島とはよくぞ名付けたものだ。あの島に4、5日滞在したい。仕事はネットさえつながればなんとかなる。Zoomも経験済みだ。

 

田舎の市場、小さな飲食店 2011年6月撮影 

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 こぢんまりとした飲食店の店先がカウンターのようになっているのを見つけると、一も二もなく入ってしまう。日本の繁華街ではよく見かけるが、韓国ではちょっと珍しいのだ。

 写真は全羅北道の高敞(コチャン)の市場で見つけた食堂兼飲み屋。陽の高いうちから地元のマッコリを飲んでいると、つられるようにおじさんたちが集まって来て、「お~姉ちゃん、ソウルから来たのか」と、たちまち乾杯が始まる。意気投合すると気のいいおじさんが私の分まで勘定を済ませてしまったりする。申しわけないが、甘んじて受けて入れることにしている。再会時は私がおごる約束をする。酔いの回ったおじさんの一人が「ノレバンに行こう!」と言い出したりするが、丁重におことわりして、その場を去り、二軒目へ。

 

田舎のバスターミナル 2004年1月、2011年4月撮影 

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 韓国の地方の風物のなかでも、時代に取り残された感が強く残っているのがバスターミナルだ。この十年間で建て直しや改装が施されたところも多いが、半島南端の田舎町などに行くと、年季の入った建物が残っている。

 日本の盆暮れに当たる秋夕や旧正月、田舎のバスターミナルは都会から里帰りしてきた人々や里帰りから都会に戻る人々でごった返す。故郷の家族へのおみやげだろうか、大きな荷物を持っている人が多い。そして、帰りは母親から持たされたであろう風呂敷包みを提げていたりする。中身は手作りのキムチやナムルに違いない。写真は上が全羅南道の康津(カンジン)バスターミナル(2004年1月撮影)、下が慶尚南道の晋州(チンジュ)市外バスターミナル。

 

今、無性に食べたいもの 2011年7月撮影 

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 平常時でも飲み食いを意識しがちなのだから、今のように外出機会が少ないときはなおさらだ。食べたいものを食べたいときに食べられないというのは大きなストレスになることを痛感する毎日である。いつも庶民的なものを食べているので、けっしてぜいたくを言っているつもりはないのだが……。

 そして、今もっとも食べたいのが写真のチャジャンミョン・パプ。チャジャンミョンは韓国式ジャージャー麺のこと。米国アカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』に登場したことで注目されたチャパグリの構成要素だ。パプはごはんのこと。チャジャンミョン・パプは文字通り、チャジャンミョンとごはんをいっしょに盛ったものである。

 写真は私の地元の技士食堂(タクシー運転手の利用が多い大衆食堂。上記の映画に登場)で人気のチャジャンミョン・パプ。麺とごはんに黒光りするチャジャンソースがたっぷりかかっている。そのうえに乗っているのは目玉焼きだ。高脂肪・高糖質・高カロリーで、50歳を過ぎた私のような者が食べている場合ではないのだが、一定のストレスがあるときは何を食べても満腹感が薄いので、こういうものに焦がれてしまう。あの店は出前に応じていただろうか? 今から電話して確かめてみることにする。

 

(つづく)  

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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