台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#106

「台湾ロス」のみなさんへ〈2〉

文・光瀬憲子

 前回に続き、新刊『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)の取材写真を通して台湾の雰囲気を味わい、自粛生活の中で少しでも台湾に「行った気持ち」になっていただけたらうれしい。今回は台中から台北までのルートだ。

 

台中の朝市 

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 排気ガスで空気が澱んでいない朝。台中の街なかで存在感を示す市場がある。100年以上の歴史を誇る台中第二市場だ。活気のある朝市、美味しいものが多い朝市は各都市に見かけるが、これほど立派な門構えの市場はそうそうない。

 生鮮野菜、肉や魚はもちろん、美味しい朝ごはんが多いことでも知られる。都市化が進み、モダンなビルが立ち並ぶ台中で、この一角だけは昔ながらの風景を残している。

 

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 大鍋から立ち上る湯気の中でしゃもじを握る屋台の主人をこれまでどれほど取材し、写真に収めただろう。特に朝市の澄んだ空気の中で立ち上る湯気には神々しささえ感じる。

 一杯20元、30元というスープや粥が、地元民や旅行者の胃袋を満たす。外食業は苦労が多いけれど、それでも美味しいものを作り続けて生計を立てていることに誇りを持ち、食べた人を笑顔にすることに喜びを感じる職人がたくさんいる。

 

台中市豊原区、昼から夜市 

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 台中から台鉄で北上した豊原という駅から10分ほど歩いたところにある「廟東夜市」。ここは「昼から始まる夜市」として有名だ。昼休みに訪れる近所のサラリーマン、台中からちょっと足を伸ばしたカップル、遠方からのツアー客などで、ランチタイムには狭い通りがごった返す。だが、外国人観光客はほとんど見かけない。

 この市場には、老舗の排骨麺、肉圓、蚵仔煎などの台湾グルメがぎゅっと詰まっている。地元客が、食べ終わった肉圓の碗にスープを注いで飲む様子は、いかにも通いなれているという感じで惚れ惚れする。

 

過ごしやすい台中、開放的な食堂 

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 台中は一年を通して気候が温暖だが、南部のように暑過ぎたり、台風の通り道になったりすることは少ないので、過ごしやすい。写真のような開放的な店でくつろぐのが楽しい街だ。

 台湾には日本のように酒を飲みながら美味しいものをつまめる店が案外少ないが、海鮮やガチョウ肉を扱う店なら、たいてい酒が置いてある。歩道に並べられた背の低いテーブルに腰掛け、店の外に置かれた生簀(いけす)で好きな海鮮を選んだり、店先に吊るされたガチョウ肉から好きな部位を選んでスライスしてもらい、緑色のボトルの台湾ビールを乾す。

 居酒屋風でありながら、普通に夕飯をとる家族連れがいたり、デート風のカップルがいたり。飾らない雰囲気がいかにも地方都市らしい。

 

ハイテクの町からローカル線で内陸へ 

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 ハイテク企業が集まっている新竹の街から内陸へ延びる内湾線は、2両編成のレトロかわいい列車だ。駅のホームも小さくて、奥地へ進むにつれて緑が濃く、山が深くなり、田舎らしさが増す。

 週末はこの沿線上の竹東(大きな客家市場がある)や終点の内湾という観光地を目指して多くの旅行者が利用するが、平日は通勤や用足しに利用する地元の乗客が多い。旅の平日に切符を買ってふらっと内湾線に乗り込み、景色を見ながら好きな駅で降りてみるのもいいだろう。

 

東台北の路地裏、深夜食堂 

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 深夜の台北東部。ひと気が少なくなった裏路地に、そこだけ灯りがともる屋台がある。立ち上る湯気は夜の闇に吸い込まれてすぐに見えなくなるが、屋台の前には数人の人だかりが。『東引小吃店』という麺と滷味の店だ。

 黒に近い茶色の汁に浸かった肉や卵を選ぶと、店の人がスライスして少し離れた席まで持ってきてくれる。ビールはセルフで冷蔵庫から取り出すスタイル。日本だったら、終電を逃したとき半ばヤケで深酒態勢に入る店だろう。滷味の味と同じくらい深い、台北の穴場居酒屋だ。

 

(つづく)

 

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 7月18日(土)13時30分~15時、本コラムの筆者が朝日カルチャーセンター新宿教室で、「台湾一周  途中下車の旅」講座を行います。女性でも気軽に楽しめる鉄道の旅の入門編です。お申し込みは電話(03-3344-1941)か下記のサイトで。

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著:光瀬憲子 定価:本体700円+税

 

*本連載は月2回(第2週&第4週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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