台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#105

「台湾ロス」のみなさんへ〈1〉

文・光瀬憲子

 新刊『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)の読者さんから、「今は台湾に行けないが、行った気持ちになれる」という声をいただいている。台湾訪問がままならない状態なので、前回の続き「台湾一周の宿 後編」は延期させていただき、台湾ロス状態のみなさんに、さらに「行った気持ち」になっていただくため、本書の取材写真からお気に入りの数枚を時系列でピックアップしてみたい。

 

台南の路地裏、濃厚魯肉飯(台南) 

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 台湾人のソウルフードといってもいい魯肉飯。写真は台南の小さな路地にある無名の食堂のもの。飾り気のない店だが、地元客がひっきりなしに訪れていた。豚バラを細かく切って醤油や香辛料でじっくり煮こんだ濃厚な魯肉の香りが旅人の足を止める。

 一緒に添えられているのは肉鬆(ローソン。コンビニと同じ名前で覚えやすい)という台湾では定番のふりかけ。肉でんぶだ。甘味が強いため子供に人気があり、ご飯嫌いの子もこれをかければ食が進む。

 かつて、中国本土に逃げた台湾の犯罪者が、魯肉飯を食べたくてたまらなくなって台湾に戻り、お縄頂戴というエピソードもある。台湾を訪れるとかならず食べたくなる鉄板グルメのひとつだ。

 

見た目は「?」、味は「!」な牛肉湯(台南) 

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 台南には國華街や保安路といったB級グルメストリートがあり、人気店が軒を連ねている。そして、台南では店ごとに扱うメニューが絞り込まれているという特徴がある。写真は牛肉湯(牛肉スープ)に特化した店だ。

 台南の食堂は営業時間が短く、朝食店は早朝から昼前まで、夕食店は夕方から深夜まで、など営業時間が細かく区切られていることが多い。何を、いつ食べたいのか? よく考えてお店選びをしなければならないので、台南で食べ歩きを楽しむには案外気を使う。

 写真は保安路の『阿村牛肉湯』。小さな店だが、座って食べている客、メニューを見て悩む客、テイクアウトを待つ客などで、人だかりがしている店先というのは美味しい証拠。

 

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『阿村牛肉湯』の牛雑湯(牛モツスープ)。見た目にひるんではいけない。新鮮な牛肉を使っているので臭みはいっさいなく、それぞれの食感が楽しい。ぷるんとしたレバー、歯ざわりが独特のセンマイ、弾力のあるハチノスなど、「これ何だろう?」と考えながら食べるのも楽しみのひとつだ。

 牛、豚、鶏を問わず、モツは台湾人にとって貧しい時代を支えた大事な食材。そのため台湾人はモツの処理が実に上手で、臭みが抑えられている。日本でモツを敬遠している人も台湾ではぜひチャレンジしてほしい。

 

台湾おでんの変わり種(台南) 

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 クランチチョコレート? いえいえ、これは台湾おでんの定番の豬血糕(ズーシエガオ。もち米と豚の血を煮固めたもの)。台湾ではコンビニにもおでんが常備されているほど普及しているが、やはり路面店のおでんには勝てない。

 写真は台南の萬昌街という小さな路地にある臭豆腐とおでんの専門屋台の豬血糕。もっちりとした歯ごたえとコクがある。豚肉を愛するあまり、その血まで味わおうという台湾人の豚食熱が伝わってくる独特のグルメだ。おでんの定番でありながら、一方でピーナツ粉とパクチーをトッピングしてスナック風に食べられることも多い。

 

駅のホーム、上りと下りの表示(新営) 

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 台北、台南、のように街単位で楽しむのもいいが、台湾をぐるりと一周する台鉄(在来線)を利用して移動すると、ひと味もふた味も違った旅ができる。台湾のレトロ可愛い列車や駅のホームは女子旅にもぴったり。

 写真は南部の新営(シンイン)という駅のホーム。こんなふうに「南下」「北上」と漢字で書いてあるのでとてもわかりやすい。

 台鉄は台湾の「旅」と「日常」の両方を味わえる。車窓を眺めたり、駅の改札をくぐることで、街から街への移動をリアルに感じることができるし、乗り合わせる地元の人々の姿からその土地の暮らしぶりが伝わってくる。日本ではもう使わなくなった硬い紙の切符(硬券)も懐かしい。

 

家族が働く姿が美しい食堂(新営) 06

 台湾の食堂は家族経営が多い。新営で見つけたこの店も、朝から家族総出で仕込みに忙しい。日本では食堂で子供が走り回っていたりすると「お客様に迷惑……」と取られがちだが、台湾では店の子供が空いているテーブルで宿題をやったり、遊んだりしていることは珍しくない。

 家庭経営の場合、そうして間近で親や親戚が働く姿を見て育った子供は、おのずと店に愛着を持ち、自分が後を継ぐことを意識し始めるようだ。小学校に上がると配膳を手伝ったり、ゴミ捨てをしたり。飲食店経営は重労働だが、食べることと家族を大切にする台湾ならではの子育てを垣間見れる。

 

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 家族経営の店でいただいたこだわりの意麺。意麺は卵が練り込んである平たい麺で、この店は麦芽が含まれているのが特徴。シンプルなトッピングだが、麺の下には汁がたまっているので、食べるときによく混ぜる。あっさりしているので朝からぺろりと完食。

 

(つづく)

 

 

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著:光瀬憲子 定価:本体700円+税

 

*本連載は月2回(第2週&第4週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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