旅とメイハネと音楽と

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#100

フィンランド・タンペレ「WOMEX」取材記〈1〉

文と写真・サラーム海上

初めての北欧。フィンランド第二の街、タンペレへ

 2019年10月22日、僕はフィンランドのタンペレへと向かった。
 その一月半前の8月下旬に初訪問したポーランド(詳しくは『美味すぎる!世界グルメ巡礼』連載79回~84回を参照)に続き、今度はフィンランドとは全くサラームらしくないと思う人も多いだろう。確かにそのとおりww。実際、僕はこれまで人生において一度も北欧~スカンジナビアに行こうなどと考えたこともなかった。
 物価は高そうだし、食べ物もあまり美味いものはなさそう。何より寒そうで、日が沈むのも早そうだ。できることなら一年中、海やプールで泳いでいたい僕には北欧は無縁の世界だ。

 しかし、タンペレには未来のワールドミュージックを占う上で重要な仕事が待っていた。というのもワールドミュージックにおける世界最大の見本市「WOMEX」が同年はフィンランドの第二の街タンペレで開催されたからだ。
 WOMEXは「World Music Expo」の略称。ワールドミュージック産業関係者の国際交流の場として1994年にベルリンで始まり、その後、欧州圏各地を開催地としてほぼ毎年、10月に開催されてきた。要は幕張メッセで開催されている食材の国際見本市「FOODEX」のワールドミュージック版と言えばわかりやすいか。
 僕はWOMEXの存在は以前から知っていたが、2018年、スペイン・カナリア諸島州ラス・パルマス・デ・グラン・カナリアで開催された年に初めて参加した。ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア郊外の大型会議場(小型版の幕張メッセのような会場)と市内のオペラハウスを会場にしてヨーロッパ、アフリカ、中東、南北アメリカ、アジア、オセアニアの約90カ国から約60組の音楽アーティスト、フェスティバル主催者、レコード会社やマネージメント会社、僕のような評論家やDJ、そして一般音楽ファンの2500名強が参加した。

 その5日間、僕は毎晩深夜過ぎまで会場をハシゴして周り、世界中から集まった業界の友人たち再会し、新進アーティストたちのライヴを堪能した。業界をしぶとく生き延びてきた古い仲間が集い、お互いの生存を確認し、新しい仲間と祝杯を上げるという一年に一度のワールドミュージック業界のお祭り的な感覚が気に入り、以後は出来る限り毎年通うことにした。

 

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サラームが初参加したWOMEX2018

 

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スペイン・カナリア諸島州ラス・パルマス・デ・グラン・カナリアの中心地。港町だけに大西洋に面している

 

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古い業界の友人たちと乾杯!

 

 2020年は本来ならハンガリーのブダペストで開催される予定だったが、残念ながらコロナ禍により、今年は初めてのオンライン開催となってしまった。僕はこの10月下旬の期間中、ハンガリー時間の21時に始まるライヴを観るため、毎朝午前4時前に起き出し、Macの画面に張り付いて、約35組のライヴと特別上映された8本の音楽ドキュメンタリー映画を観て、関係者とチャットを交わした。Macの画面からでも魅力が存分に伝わってくる音楽アーティストたちも数組はいたが、前年までと比べると本当に寂しいWOMEXだった。来年、2011年はポルトガルのポルトで予定されている。どうかそれまでにコロナ禍が収束し、今度こそは無事に開催してほしい。

 

 さて、本連載では僕にとって二度目のWOMEXとなった2019年度、フィンランド・タンペレ編から書いていこう。
 フィンランドの首都ヘルシンキへは成田空港からフィンエアーとJALが毎日直行便を出していた(11月16日現在、週3便で運行再開)。そして、ヘルシンキからタンペレへは電車やバスでも一時間半ほどだが、フィンエアーの国内線なら40分の近さ。そこで日本からタンペレまでフィンエアーで行くことにした。
 タンペレについて僕はほとんど前知識を持っていなかった。ちょっと調べると、タンペレはフィンランド南部の内陸にあり、人口約23万人、森と湖に囲まれた町。そして日本でもおなじみの児童文学「ムーミン」の里としてムーミン谷博物館が建てられ、さらに近年は「世界のサウナ首都」としても世界中の旅行客を集めているらしい。
 僕はムーミンにはほとんど興味はないが、サウナは行きつけのスポーツジムに併設されているので、週に2~3回は通う中級クラスのサウナーだ。なので「世界のサウナ首都」と言われると、どんなサウナが待っているのかワクワクしてしまう。いかんいかん、サウナの事前調査よりも、WOMEXに初参加する新人アーティストたちの事前調査のほうが、僕の仕事にとってはよっぽど重要なのだ!

 

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WOMEX2019のメイン会場となったタンペレホールにはムーミン谷博物館が入っていた!

 

 フライトは22日の午前10時の出発だが、僕は前夜に成田空港に到着し、空港内のカプセルホテルに一泊した。というのも22日には台風20号の関東接近が予想され、さらに令和天皇即位礼正殿の儀も重なっていたのだ。
 一月前の9月10日には台風15号が上陸し、1万6900人の旅客が足止めされ、成田空港は文字通り「陸の孤島」となっていた。幸い、台風は夜のうちに勢力を落としていた。それでも22日の成田空港第二ターミナルは朝7時前からすでに人が集まっていた。

 

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2019年10月21日は成田空港内のカプセルホテルに宿泊。良く言えば映画『2001年宇宙の旅』の宇宙船内部みたい!

 

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10月22日早朝6時半の成田空港第2ターミナル前。まるで北欧のような雨空

 

 フィンエアーのチェックインカウンターで係員に「プレミアムエコノミーに有料でアップグレード出来ませんか?」と駄目元で聞いてみた。するとプレミアムエコノミーは用意していないが、エコノミーコンフォートというシートがあり、95ユーロ(約11,770円)を支払うと、同じエコノミークラスながらも足元が大幅に広い前方のシートとインターネットの利用が出来、ノイズキャンセリングヘッドフォンの貸し出し、マリメッコのアメニティグッズ、さらに優先搭乗も出来るというので、迷わず申し込んだ。

 これから10時間+国内線の長旅と7時間の強力な時差ボケが待っているのだ。少しでもラクをしないと!

 

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フィンエアーの最新機材エアバスA350

 

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フィンエアーのエコノミーコンフォート。座席は普通のエコノミーと同じだが、前座席との間隔は新幹線の普通席くらいあるので、たっぷりリクライニングも出来てラクチン!

 

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そしてエコノミーコンフォートにはマリメッコのアメニティケースとノイズキャンセリングヘッドフォンも付いてくる

 

  午前10時前に出発。その晩はWOMEX会場近くに良さそうなレストランを予約しておいたので、機内食はあまり食べず、早々にアイマスクとノイズキャンセリングヘッドフォンをして寝ることにした。それでもなぜか3時間くらいしか眠れず、あとは映画を観て過ごしていると、現地時間で13時過ぎ、予定どおり約10時間のフライトでヘルシンキ空港に到着した。


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機内オプション食事のメニューも薄い色合いにプリントされてる。いわゆる北欧デザインの本物を目にするのは初めてかも!

 

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白海からボスニア湾を経てフィンランド湾へ。まさか北欧に来ることになるとは……

 

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10時間のフライトを終え到着したヘルシンキ空港。国際線ターミナル内の360度マルチディスプレイには不思議なオーロラ色が投影されていた。初めて見る色彩!

 

 乗り換え手続きを済ませ、国内線ターミナルに向かい、国内線ゲートの前に陣取っていると、いかにも音楽関係者っぽい身なりの人たちが次々と集まってきた。韓国人、フランス人、スイス人、イラン人、フィンランド人、オランダ人、インド人、イギリス人、アメリカ人……スイス人の一行の中に古い友人を見つけ、情報交換をした。
 残念ながら、ここに日本人は見当たらない。会期中に出会った日本人も5人だけ。残念ながら、世界で最も物価が高い北欧までワールドミュージックの取材に訪れる酔狂な輩は日本では絶滅寸前なのだ。
 16時前に50人乗りの小さなプロペラ機に乗り込み、40分の短いフライトでタンペレ空港到着。荷物を受け取り、空港を出ると、目の前に「WOMEX」と書かれたシャトルバスを発見したので、何も言わずに乗りこむと、15分ほどでタンペレ駅の横にある一泊目だけ予約したビジネスホテルまで運んでくれた。

 

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フィンランドはサンタクロースの国でもあるので、空港の土産物屋には様々なサンタが。これは昼間から飲んだくれるサンタ

 

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そして国内線のプロペラ機に乗ってタンペレへ

 

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機内誌の裏表紙にあった、フィンランドの基礎データによると、16万8千の湖、2百3十万個のサウナがあるらしい! 東京で週に2~3回サウナ行ってるオレですが、今回の滞在中は何回サウナに行けるだろうか?

 

 狭い部屋で一泊分の荷物を広げ、シャワーを浴びてから、目の前にあったスーパーマーケットに水を買いに出ると、外は午後6時ですでに真っ暗、冬の冷たい風がヒューヒューと吹いていた。まるで12月の東京のような暗さで、気分が滅入りそう。
 しかし、この後19時半に「北国の自然の最も美味い料理」を名乗るレストラン『Dabbal(ダバル)』を予約してあるのだ!

 

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初日はタンペレ駅前の中級ビジネスホテルに一泊

 

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宿を出ると、外はもう暗くなっていた。風も冷たい!

 

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ホテルの向かいにスーパーマーケットを発見した。フルーツヨーグルトドリンクの紙パックまでこんなに北欧デザインで、美味そう!

 

スウェーデン料理、ピッティパンナ

 さて、今回のレシピはフィンランドの隣国、スウェーデンの残り物メシこと、ピッティパンナ。要はジャガイモ、玉ねぎ、加工肉など、冷蔵庫に残っているものを炒めて、最後に目玉焼きをのせただけの料理、皆さんもすぐに作れるはず!

■ピッティパンナ
【材料:2人分】
じゃがいもメークイン:3個
玉ねぎ:1/2個
ベーコン:70g
厚切りハム(その他の加工肉でも可):70g
ラード:大さじ1
卵:2個
バター:大さじ1
塩、胡椒:少々
パセリのみじん切り:少々
【作り方】
1.ジャガイモメークインは皮をむき、1cmのサイコロに切る。玉ねぎも皮とヘタを取り、1cmのサイコロ切り。ベーコンと厚切りハムも1cmのサイコロ切り。
2.テフロン加工のフライパンにラードを熱し、ジャガイモを入れ、5分間炒める。火が半分程度通ったら、玉ねぎ、ベーコン、厚切りハムを足し、玉ねぎが透明になり、ジャガイモに完全に火が通るまで混ぜながら炒め、軽く塩、胡椒で調味する。
3.小型のスキレットにバターを熱し、卵を2つ落とし、好みの固さの目玉焼きを作る。
4.お皿に2を盛り付け、真ん中に3の目玉焼きをのせ、パセリのみじん切りで飾り出来上がり。卵の黄身を混ぜながらいただく。

 

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ピッティパンナの完成。じゃがいも、玉ねぎ、加工肉、卵、パセリなんて、貴方の冷蔵庫の残り物でも作れるはず!


 

(フィンランド編、次回に続きます。お楽しみに!)

 

 

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*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜)予定です。〈title portrait by SHOICHIRO MORI™〉

 

 

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サラーム海上(サラーム うながみ)

1967年生まれ、群馬県高崎市出身。音楽評論家、DJ、講師、料理研究家。明治大学政経学部卒業。中東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンや周辺カルチャーのフィールドワークをし続けている。著書に『おいしい中東 オリエントグルメ旅』『イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅』『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』『プラネット・インディア インド・エキゾ音楽紀行』『エキゾ音楽超特急 完全版』『21世紀中東音楽ジャーナル』他。最新刊『MEYHANE TABLE More! 人がつながる中東料理』好評発売中。『Zine『SouQ』発行。WEBサイト「サラームの家」www.chez-salam.com

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