韓国の旅と酒場とグルメ横丁

 韓国の旅と酒場とグルメ横丁

#10

二日酔いの妙薬、豆モヤシに愛を込めて

korea00_writer.gif

 

 

 

 後悔はしても反省はしないのが酒飲みというもの。

 実は今も昨夜の酒が残っている。今回は、激しい頭痛や胃のむかつきから解放されたい一心で、二日酔いを治すといわれる食べものについて書くことにする。

目立たないが、韓国の食卓にいつもある

 韓国の食堂で、ご飯ものや定食を頼むと、つきだしとしてよく添えられる豆モヤシ(コンナムル)。我が国では白菜とともに“国民野菜”と呼ばれたりするが、どこか控えめな存在。日本語の「名脇役」とか「縁の下の力持ち」という表現がぴったり。

 

kankoku#10_01

 

 豆モヤシはビタミンCやAを多く含み、繊維質やアミノ酸も豊かなので、腸をきれいにし、美肌効果もあるといわれる。冬場はビタミンCが不足しがちなので、風邪予防にもなるという。

 もっとも一般的な食べ方は、茹でた豆モヤシを塩とゴマ油でサッと和えたナムル。辛いものを食べるとき、口の中をさっぱりさせる“箸休め”にいい。

 韓国人は焼肉を食べるときに肉にキムチやニンニクを添え、サンチュで巻いて食べるが、そこに豆モヤシを加える人も多い。

 また、激辛料理として有名なアグチム(アンコウの蒸し煮)にも豆モヤシがたっぷり入る。私はアンコウの身よりも、アンコウのダシがしみ出た辛いソースをかぶった豆モヤシのほうが旨いと思うくらいだ。下の写真のように、身を食べ終わったあと、麺やご飯を入れて食べてもいける。

 

kankoku#10_02

 

全羅北道では豆モヤシが主役を張る料理も

 豆モヤシの名産地である半島南西部の全羅北道(チョルラプッド)に行くと、コンナムルキムチ(豆モヤシのキムチ、写真)やコンナムル・チャプチェ(春雨の代わりに豆モヤシを使う)、コンナムルビビンパ(豆モヤシの混ぜご飯)、コンナムルクッパ(豆モヤシの汁かけ飯、写真)、ムルカルビ(コチュジャン系のスープで豆モヤシと豚肉を煮る、すき焼き風鍋。別名ナムノカルビ、写真)、コンナムルトルソッパ(豆モヤシと牛肉の炊き込みご飯)などが見られ、他の都市より豆モヤシに存在感がある。

 

kankoku#10_03

コンナムルキムチ

 

kankoku#10_04

コンナムルクッパ

 

kankoku#10_05

ムルカルビ

豆モヤシだけのビビンパも

 日本の人たちはビビンパと聞くと、お惣菜を何種類も使うものを想像するかもしれないが、実は韓国では冷蔵庫の中のあり合わせのものをご飯にのせ、ゴマ油や味噌を加えて、かき混ぜて食べるほうが一般的。その究極が豆モヤシがメインのコンナムルビビンパ(写真)だ。私はこれがもっとも簡単でもっともおいしい韓国の丼物だと思う。飲んだ後の〆のメニューとして出している店もある。

 

kankoku#10_06

コンナムルビビンパ

全州には二日酔い対策の人気店が

 豆モヤシはアルコールを分解するアミノ酸の一種であるアスパラギン酸を多く含むため、韓国ではシジミ汁、干しタラ汁、ソンジ(牛血煮こごり)、干し柿、ホッケナム(ケンポナシという高木)などと並ぶ二日酔いの妙薬として知られている。

 全羅北道の中心都市、全州(チョンジュ)には、朝から行列ができるコンナムルクッパの専門店がいくつもある。「ヒョンデオク」「ウェンイチプ」「サムベクチプ」などが人気店。ヒョンデオクはかつて全州の南部市場で毒舌ハルモニが切り盛りするカウンターだけの小さな店に過ぎなかったが、今では代替わりして全国でチェーン展開され、ソウルでも食べることができる。

 豆モヤシのスープなんてあっさりし過ぎて物足りないのでは?

 と思われるかもしれないが、イリコや牛肉でダシをとっているので、上品な旨味がある。あっさりしたスープとシャキシャキの豆モヤシ、少し固めに炊いたご飯は相性抜群だ。

 豆モヤシのスープは、家庭で奥さんが二日酔いや風邪気味のダンナさんに作ってあげることもよくある。日本ではモヤシのひげ(根)は取ってしまうことが多いと聞くが、アスパラギン酸はひげの部分に一番多く含まれているので、二日酔いのときは取らずに調理したほうがよい。

 地味な存在だが、なにかと頼りになる豆モヤシ。みなさんも訪韓時にはもっと愛情のまなざしを向けてほしい。

 

kankoku#10_07

家庭料理の豆モヤシスープ

 

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

*来る5月14日(土)と15日(日)、名古屋の栄中日文化センターで、筆者の旅行講座があります。14日は13時~15時(ソウル編)、15日は10時~12時(ソウル+地方編)と13時半~15時(講師と雑談会)。お申し込みは3月1日(火)から、下記の栄中日文化センターのサイトか、お電話(0120-53-8164)で。

●栄中日文化センター http://www.chunichi-culture.com/programs/program_166125.html

 

korea00_writer

korea00_writer.gif

紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「韓国!新発見」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

紀行エッセイガイド好評発売中!!

korea00_book01

うまい、安い、あったかい 

韓国の人情食堂

korea00_book02

港町、ほろ酔い散歩

釜山の人情食堂

   

 韓国の旅と酒場とグルメ横丁
バックナンバー

その他のTRAVEL

ページトップへ戻る

ページトップへ戻る