石巻/牡鹿半島 絶景・美食・縄文

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#10

写真で語る、奥松島・石巻の魅力<前編>

 

 「石巻・牡鹿半島」連載の第10回目は、韓国人紀行作家のチョン・ウンスクさんによる寄稿ルポの日本語版(前編)をお届けする。当サイト「TABILISTA」では、『韓国の旅と酒場とグルメ横丁』を連載していただいている。ソウル在住のチョンさんは、アシアナ航空の仁川ー仙台直行便を利用して訪日。韓国済州オルレの姉妹道として昨年オープンした宮城オルレ奥松島コースを体験取材。今回は、韓国語バージョンと日本語バージョンの2つに分けてお送りする。

韓国語バージョンはコチラ

 

 
文/チョン・ウンスク

 

 

1月末、宮城県石巻市の観光関係者と双葉社のお招きで、奥松島と石巻市街を旅する機会に恵まれた。東北最大の都市・仙台以外の宮城の魅力を我が国の人たちにもっと知ってもらうために韓国語の旅行記を書くのが目的だが、日本でも宮城=仙台と短絡してしまう人が少なくないようなので、今回はそのとき撮った写真を見ながら、奥松島と石巻の魅力を2回に分けてお伝えしよう。

 

宮城オルレの道

 

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「松島や ああ松島や 松島や」

江戸後期から、こんなふうに唄われた松島の絶景。『日本三景』のひとつだそうだ。韓国人も「三大〇〇」といったフレーズに弱い。韓国発のオルレ(散歩道やトレッキングコースを指す済州方言)の奥松島コースとして整備された点も要注目。IT技術や化粧品、エンタメ以外のメイド・イン・コリアを日本が受け入れたことは韓国人の自尊心をくすぐるので、集客力は十分あるだろう。

 

月浜の波音、釣り人、民宿

 

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オルレ奥松島コースの中間地点にある月浜海水浴場。日曜の昼下がり、釣り人が1人たたずんでいた。写真の奥のほうに写っている2階建てが民宿『新浜荘』。ここに気の置けない仲間たちと泊まって新鮮な刺身と日本酒で宴会をやってもいいし、1人で数日滞在して、波の音を聴きながら、読めずにたまっている日本の文庫本を読みふけるのもいいだろう。

民宿『新浜荘(しんはまそう)』。東松島市宮戸字月浜31 TEL  0225-88-2045 FAX 0225-88-2045

 

 

月浜海水浴場の白い砂の上で、何時間も静かな波を見つめる。そんな時間もたまには必要。こんなときはお酒も要らない。

 

 

『希望という名の光』

 

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2011年3月11日の東日本大震災による津波で、80名以上が犠牲になった大川小学校前のAngel of Hope像。震災の年、日本の知人からプレゼントされた山下達郎のCD『Ray Of Hope』に入っていた『希望という名の光』という歌が思い出され、涙があふれた。

 

05大川小学校の脇を流れる北上川。今回の旅に同行してくれた方の一人(男性、50代後半)は震災時、仙台駅前に出張していて地元石巻に帰れず、自家用車の中で4日間過ごしたという。あれから8年が経ち、走行距離も8万キロを超え、買い替え時期を迎えているが、「なかなか手放す気になれない」と話していたのが印象に残った。

 

石巻⇔ハワイ、小さな舟の数奇な運命

 

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震災時の津波でハワイまで流された第2勝丸が、昨年3月から石巻市雄勝町波板地区に展示されている。この日は中に入れなかったが、この小舟が2015年4月にオアフ島で発見され、2016年11月にこの地に戻ってくるまでの様子が写真パネルなどで展示されている。

 

 

コンテナハウスに泊まる

 

 

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今回宿泊したのは『Sun Fan Village』。地震や津波も及ばなかった岩盤の高台に建てられている。復興のための工事現場でたびたび見かけたコンテナを有効活用しているところが石巻らしい。韓国でもコンテナは簡易事務所や飲食店など、さまざまな場所で活用されているので、おもしろがる韓国人は多そうだ。https://www.sunfun-village.com/hotel

 

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13筆者が泊まった『Sun Fan Village』のF棟は、コンテナをそのまま使った客室だった。コンテナだからけっして広いとは言えないが、この狭さが不思議な落ち着きを与えてくれる。冷蔵庫、ポット、テレビ、Wi-Fi、浴槽のある3点ユニットバス完備。

 

14『Sun Fan Village』のフロントの裏側にある食堂では、バイキング式の朝食が供される。メニューは焼き魚や煮魚、多彩な漬物、卵料理、野菜炒め、キノコ類、キムチ、味噌汁、洋風サラダ、とろろ、納豆など。コーヒーやパンもある。復興工事のために全国各地から集まったさまざまな年齢層の働き手が長期滞在しているので、彼らの栄養バランスを考え、そしてあきがこないように工夫されている。夜は生ビールも飲めるし、フロント脇の売店で売っているアルコール類を持ち込んで飲むこともできる。

 

 

赤いポストと味噌蔵

 

15『Sun Fan Village』のある高台を歩いて下り、万石橋を渡ってしばらく行くと、大好きな日本映画『男はつらいよ』(1969年~1995年)にたびたび登場した赤いポストを見つける。しかも、その脇の建物が味噌蔵であることがわかり、一瞬心が浮き立った。韓国や日本を旅していて、酒蔵はもちろん、味噌蔵、精米所などの古びた建物を見るのが大好きだからだ。だが、この味噌蔵の通常営業があと1カ月であることを告げる張り紙と、その下のプレートに書かれた「東日本大地震 津波浸水深ここまで」の文字が筆者の腰辺りを示していることに気づき、ハッとした。

 

 

渡波駅発、ローカル線の小旅行

 

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列車は来る、きっと来る。

渡波(わたのは)駅のホームで。

 

 

明けない夜はない。トンネルの向こうは光に満ちている。

石巻線は走る。

 

 

石巻駅前散策

 

18石巻駅を出て振り返ると、その駅舎はおとぎ話に出てくるお城のようだった。

 

19駅に向かって右側にある観光案内所兼おみやげ物屋さんもコンテナ製だった。いつもの旅先でするように案内係の女性に訊ねる。

「この辺りに地元の漁師さんたちが気軽に一杯やる酒場はありませんか?」

女性はおだやかに微笑みながら答えてくれた。

「若い人たちはチェーンの居酒屋で飲むことが多いようですが、震災以降、年輩の人たちは外での飲酒を控えるようになり、飲み屋街もさびれてしまいました」

“気軽に一杯” などと聞いてしまった不明を恥じた。

 

20石巻駅前から南方向へのびる大通りを右手に見ながら路地に入ると、『男はつらいよ』の寅さんが泊まりそうな(よりは高級そうだが)旅館と出合った。劇中、宿の隣りの部屋に泊まっていた若い女性(マドンナ)に鮎の塩焼きを差し入れしたことをきっかけに、寅さんがマドンナ(真野響子)と窓越しに話をする場面を思い出した。次回はこんな宿にも泊まってみたい。

 

21町なかにぽつんとたたずんでいた、たばこ屋さん。よくぞ残っていてくれたと思う。韓国は日本ほど自動販売機が多くない。私が好きなクモンカゲ(角打ちのように一杯飲ませる小さな食料雑貨店)をはじめ、まだまだ有人の店が多いのだ。写真のように自販機が前面を覆っているような店を見つけると、韓国人は日本を感じずにいられない。

 

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『わがまま』『素顔のままで』。まるで看板に説教されているようだ。

『吉田類の酒場放浪記』にも登場した居酒屋『六文銭』(左)の脇の路地を入ったところで出合った、さびれたスナック街。

 

 

鯨とりを夢見る町

 

2324本の販売と貸し出しを通して文化の復興を謳う書店『石巻まちの本棚』。外壁には1950年代の映画『鯨と斗う男』のポスターが貼ってあった。この書店ではこの地域の人々に勇気を与える同作品の再上映のために募金活動を行っている。

http://bookishinomaki.com/

韓国人が鯨と聞いて思い出す映画はもちろん『コレサニャン(鯨とり)』。韓国では鯨という言葉は『夢』や『大望』『野望』を表す。

 

 

小さな町の静かな喫茶店

 

2526『石巻まちの本棚』を出たところで一服したくなり、階段の上にある喫茶店『加非館』に入った。サイフォンで煎れたブレンドコーヒー(400円)はとても力強い味で美味しかったが、濃厚な旨味のあるコンビーフが乗ったトースト(520円)も絶品だった。

 

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『加非館』はご夫婦で営む店。石巻に店を構えて45年になる。外国から来た旅人でも話しかけやすい雰囲気だったので、気安く声をかけたのだが、ご主人が静かに話してくれた震災と津波による惨事はすさまじいものだった。その日、津波は写真の階段の上段まで達したという。


28『加非館』は小さな町の喫茶店としてはかなりの大箱で、グループでの利用もじゅうぶん可能だが、最大の魅力は重厚なカウンター。1人か2人で訪れ、静かにコーヒーを味わうのが似つかわしい。

https://coffeekan.info/

 

*4月21日(日)、本コラムの主筆チョン・ウンスクが名古屋の栄中日文化センターで韓国文化講座(2時間×2コマ)を行う予定です。詳細は本連載の次回以降、もしくは筆者twitter(https://twitter.com/Manchuria7)で。

 

*著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

 

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

 

 

1.宮城県観光プロモーション

 

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東京シティエアターミナル2階「毎日が旅行博」Tour Expo 内 [東京都中央区日本橋箱崎町42-1]

 

主催 サンファンヴィレッジ

協力 東京シティ・エアターミナル東京空港交通宮城県経済商工観光部観光課宮城県観光連盟みらいサポート石巻宮城県石巻市大崎市石巻観光連盟峩々温泉東鳴子温泉旅館大沼良葉東部JF宮城県石巻湾支所万石浦鮮かき工場カイタクビヨンド牡鹿の学校

 

 

牡蠣のまち 石巻へ!!

 

 石巻は牡蠣の産地として有名ですが、2018年4月下旬に同じ宮城県の南三陸町戸倉地区に続き、石巻地区、石巻市東部、石巻湾の3支所が国内2例目となるASC*国際認証を取得しました。ASC国際認証というのは、WWFが国際的な海洋保全活動の一環として、天然の水産物ではなく、養殖による水産物を、海の自然や資源を守って獲られた持続可能な水産物(シーフード)として認証する仕組みです。

*「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」

イシノマキマンTwitter 【https://twitter.com/ishinomakiman

*詳しくは石巻観光協会のホームページでご覧いただけます。

 

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