台湾の人情食堂

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#08

台湾で肉三昧。ビールの友「ガチョウ編」

文・光瀬憲子

   

 

 ガチョウと鴨(アヒル)は台湾ではとても身近な食材だ。台湾の肉料理といえばまずは豚。頭のてっぺんから足の先まで豚肉を食べつくすイメージだが、豚肉のようにガツガツ食べるのではなく、仲間と一杯やるときの粋な酒肴、それがガチョウ・鴨料理である。

 台湾の店ではガチョウは「鵝肉」、鴨は「鴨肉」と表記されているので、看板や品書きを見ればすぐにそれとわかる。専門店が多く、鵝肉店ではガチョウだけ、鴨肉店では鴨だけを扱うことが多い。豚や鶏肉などは扱わない。

 店先にはたいていガチョウか鴨が丸ごと吊るされている。ローストにしたり、スープにしたり、炒めたり…いろいろな食べ方があるが、一番のおすすめはシンプルなスライスだ。肉をじっくり味わうことができ、酒にもよく合う。店によって作り方は多少異なるが、丸ごと一羽のガチョウや鴨に塩や香辛料をまぶして一晩ほど寝かせ、これをじっくり十数時間かけて蒸す(または茹でる)。さらに燻製にすることもある。専門店には通常の塩味とスモークの2種類が置いてあることが多く、スモークのほうが色が濃い。

 では、ガチョウと鴨はどう違うのか? 台湾ではガチョウ肉のほうがやや高級品扱いだ。サイズもガチョウのほうが大きめなのだが、肉質が締まっていて脂身が多過ぎず、肉の繊維が細かい。しっかりと歯ごたえがあるのに柔らかく、ほどよい脂が満足感を与えてくれる。

ガチョウや鴨のスライスを出す店には酒がある

 台北市内のガチョウ肉の人気店に、龍山寺の向かい、艋舺公園脇の『一鑫鵝肉(イシンアーロウ)』がある。清潔感のある店内では、地元の中高年に混じって地方からの観光客が食事をとる姿もある。ガチョウや鴨肉のスライスを出す店にはかなりの高確率で酒がおいてある。酒場不毛地帯の台湾ではこれは非常にありがたいことだ。店の奥にある大きな冷蔵庫にビールが冷えているので自分で好きなものを取り出して飲んでいい。昼時がいちばん混雑しており、営業時間は午後7時まで。つまりここは昼飲みの店である。龍山寺での参拝が済んだらぜひ立ち寄りたい。

 ガチョウ肉はモモ肉のほうが柔らかくジューシーだといわれているが、あえて胸肉(写真)をおすすめしたい。鶏の胸肉は水気が少なくパサパサしたイメージがあるが、ガチョウの胸肉は肉汁がたっぷり。噛むと、ジュワッと香り高い肉汁が口中に広がる。肉の繊維がそろっているのでほぐれやすく、皮の脂には豊かな甘味がある。1皿200元(700円弱)と少し高めだが、2~3人でシェアするとちょうどいい。

 

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寧夏夜市の近くで深夜1時までやっている店

 

 ガチョウの旨い夜飲みの店もある。寧夏夜市に近い『雙連鵝肉荘(スァンリェンアーロウズァン)』。こちらも店先にはガチョウがぶらさがっている。普段着の中高年が赤ら顔で談笑している(写真)。

 

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 ガチョウ肉専門店の特徴はスライス(写真)だけでなくモツのスープがあること。この店にもガチョウのレバースープや血の煮こごりスープなどがある。また、サメのスモークやクラゲの和え物といった小皿のツマミがあるのもうれしい。夕方~深夜1時まで営業しているので、夜市帰りに一杯やれる。

 

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 ガチョウ肉のスライスとビールで気軽に楽しめるのが、龍山寺の東方向にある『阿秀傳統切仔麵店(アーショウチュァントンチエザイミェンデェン)』、通称「ヒデ」。看板にカタカナが書かれているので見つけやすい(写真)。

 

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 閉店が夜9時半と少し早いのが残念だが、この辺りでは一番遅くまでやっているガチョウ肉店だ。ガチョウだけでなく、サメのスモーク(写真上)や黑白切(ヘイバイチエ)と呼ばれる豚モツのスライスも揃っているので、酒飲みにはたまらない。

 

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 店名通り、麺やレバーのスープ(写真)も扱っており、飲んだあともこの店で締められる。ヒデの魅力はなんといってもスライス150元という値段と気取らない雰囲気。近所のおじさんたちがふらっと入ってきてビールとスライス、青菜炒めを注文し、他愛のない話をしながら瓶ビールを空けている。台湾の日常が生きている、地元に愛される店なのだ。

 

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鴨肉はさらに庶民的

 ちょっとだけ贅沢感のあるガチョウ肉に対して、鴨(アヒル)はより庶民的だ。ガチョウより値段が安く、入手もたやすい。スライス以外にも、燒臘(サオラー)と呼ばれるロースト店で扱われたり、鍋料理や炒め物などにも使われたりしている。スライスに醤油膏(甘辛い醤油ダレ)を付け、たっぷりの千切りショウガと一緒に食べる。鴨は甘く濃厚な皮の脂が特に旨い。歯に食い込むジューシーで柔らかな肉質とあふれる肉汁、これにショウガのピリッとくる清涼感が加わり、口の中で幸せな味となる。そこに冷えた台湾ビールを流しこむ。旨い!と叫ぶ。鴨肉のスライスは1皿70~120元程度。

LCC利用者でも安心。24時間営業の鴨肉専門店が桃園に

 帰国間際、いつでも鴨肉を楽しめるのが桃園市内の24時間営業の鴨肉専門店『鴨肉榮(ヤーロウロン)』。台湾には24時間営業の飲食店がありそうで、なかなかない。桃園市内の通称「大廟(ダーミャオ)」と呼ばれる景福宮。この向かいに『鴨肉榮』(写真)がある。大衆的な鴨肉料理店で、タクシーの運転手御用達だ。

 

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 ここでは湯麺や乾麺の上に鴨肉スライスを乗せた鴨肉麺(写真)を昼食や夕食、または夜食にとる人が多い。この店オリジナルの味噌だれが食欲をそそる。ほんのり鴨の香りが漂う麺をすすり、ジューシーな鴨肉スライスを噛みながら、日本でもこんなふうに気楽に鴨肉が食べられたらなあと思う。

 

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 台湾では豚肉に目が向きがちだが、お得感のあるガチョウや鴨の肉にもぜひ注目してもらいたい

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『ビジネス指さし会話帳 台湾華語』『スピリチュアル紀行 台湾』他。auポータルサイトの朝日新聞ニュースEXでコラム「翻訳女」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/

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